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魔女

―――――――――――――――――――――

〈名前〉影亀

〈種族〉亀族

〈属性〉闇

〈レベル〉52

〈ミンラ〉闇属性の上級魔法を操る

〈職業〉――

〈能力値〉体427・力53・守319

     速41・知372・運52

―――――――――――――――――――――


目の前に降り立った影亀は体こそそこまで大きくないものの

圧倒的な存在感と威圧感に押しつぶされそうになる


「体力400以上!?」

「ほらの、儂が勝てない理由がよく分かるじゃろ?」

「うん…!」

「サタナ様、属性は何でしたか?」

「予想通り闇属性だね」

「やはり… 闇地と言うだけあって闇属性と関わっていることは

 ほぼ確信して良さそうですね…」

「考えるのもよいが、気を付けるのじゃ!

 あやつの魔法は相当強力じゃぞ!」


サリさんの言葉に続いて私たちは影亀の攻撃に備えて防御態勢を取る

しかし影亀は一向に攻撃してくる様子を見せなかった


「ど、どういうことじゃ…?

 過去に戦った時は全く訳の分からん呪文で攻撃してきたのじゃが…」

「もしかして…」


リコラと同じなのではと思った私は影亀に向かって歩を進める


「サタナ様! 危険です! 戻ってきてください!」

「大丈夫だよ、多分…」


影亀の前に立ってみるが特に攻撃してくる様子はなかった


「なっ… 何が起こっておるのじゃ!?」


試しに頭を撫でてみると特に攻撃されずに大人しくしてくれていた


「2人とも! やっぱり大丈夫だよ!」

「本当に何が起こっているのじゃ…?」

「リコラと同じように手懐けてしまいました…!」


正直私自身何が起こっているのかは分からないが

何故か大丈夫だという確信を持っていた


「よしよし、貴方も私に付いてくる?」


そう問うと撫でていた手にぐりぐりと頭を摺り寄せる


「どんな反応をすればいいんでしょうか…?」

「わからんのじゃ…」

「とりあえずネラルに帰ってカイさんに報告に行こう!」

「そうですね、もうそろそろ陽が沈みますよ」

「少し移動に時間をかけすぎちゃったね」

「どおりで眠いわけじゃ…」


〈常闇の川〉

 ↓

〈ネラル〉

 ↓

〈ネラル領主邸〉


ネラル領主邸に着くとサリさんは私たちを部屋の外に待たせて

一人でカイさんの部屋に入っていった


「帰ったのじゃ、カイ」

「サリ… どうせ今回も駄目だったんだろう? どうしたものか…」


ドアの隙間からのぞくとカイさんが顔を青くし頭を抱えていた

その様子から前の威厳を感じることは微塵もなかった


「ふっ… あっはっはは!」


そんなカイさんの様子を見てサリさんは高らかに笑った


「な… 何が可笑しい!」

「ふっ… お主何か勘違いしておるじゃろ? サタナ入ってくるがよい」

「うん!」


サリさんに呼ばれて影亀を抱えて部屋に入る

私が部屋に入ると困惑していたカイさんの顔は困惑から驚愕へと変化する


「討伐はしてないけど、懐かせてきました!」

「これでいいじゃろ?」

「なっ…!?」


小さく驚き、少しの間下を向いていたカイさんだったが

椅子から立ち上がると私の元まで歩いてきて頭を下げながらこう言った


「これまでの失礼な態度の数々詫びよう、本当にすまなかった」

「え? え!?」

「はぁ… 儂からもこやつを許してやってほしい」


さっきまでカイさんを見下すように嘲笑していたサリさんが

突然打って変わってそんなことを言い始めた


「サリさん…?」

「こやつはこの領主と言う立場になりたくしてなったわけじゃなくての

 先代領主が戦争で亡くなった後そのまま継いだんじゃ

 その直後に影亀の力が増し始めての」

「もともと争いが得意ではなかった我は、情けないことながら

 影亀の被害をただ見ていることしかできなかったのだ」

「それで、あんな冒険者に丸投げなどと言う暴挙に出ていたのじゃよ

 これが言い訳になるわけではないんじゃが…」

「なるほど、そんな事情が…」

「私は許すよ、だってカイさんのこの都市、水国を守りたい!

 って気持ちは伝わったもん!」

「ありがとう、本当にありがとう…!」


私の言葉を聞くとカイさんは私の手を力強く握りながらそう言った

その様子からは威厳を感じることはやはりなかったが

カイさんの優しさを感じることができた


「とりあえず一件落着じゃな」

「ですね!」


その後最初に提示された額よりも1000ケルも多い3000ケルを受け取り

ネラル領主邸を後にした


【76ケル→3076ケル】


「こんなに貰っちゃってよかったのかな…?」

「良いんじゃよ、何なら足りないくらいじゃ!」

「そっか… そうだ、この後はどうしようか?」

「そうですね、結局冒険者協会に行けていないので行きましょう」

「忘れてた… ってサリさんどうしたの?」


私たちの後をついてきていたサリさんが急に足を止めたかと思えば

頭を深々と下げこう話し始めた


「儂をお主らの旅に連れてはくれぬじゃろうか?」

「え… えぇ!?」

「言っていなかったが、儂は元々炎国に住む魔女の一族での

 儂ら一族はオドロ火山と言う火山にある村に住んでいたのじゃ

 じゃがな数百年前にその火山がガラべドロ率いる魔物達に襲われての…」

「オドロ火山…! 今の常闇の火山だよね…?」

「はい…!」

「儂ら一族は良く戦ったのじゃがすぐに全滅寸前まで追いやられてしまっての」

「…」

「その当時儂はまだ小さくての、逃がす対象に選ばれたんじゃよ

 儂は逃げた先で魔法を覚え1度だけ常闇の火山(オドロ火山)まで戻ったんじゃが

 村は壊滅おり、生き延びた仲間は誰一人としておらんかった」

「そんな…」

「儂はあれからガラべドロに一矢報いようといろいろ策を練っておったんじゃが

 結局どれも上手くいかずじまいでの…」


そこまで言うとサリさんは両ひざをついて頭を地面に打ち付けるように嘆願する


「頼む! 儂の私怨に協力してはくれぬか!」


そういって顔を上げたサリさんの眼は前に図書館で見たような

赤黒く濁った眼だったがほんの、ほんの少しだけ光が差し込んでいるようだった


「うん、わかった! よろしくね、サリさん!」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉サリ・ドラン

〈種族〉魔女族

〈属性〉炎

〈レベル〉52

〈ミンラ〉炎の上級魔法を操る

〈職業〉――

〈能力値〉体261・力47・守31

速33・知389・運91

―――――――――――――――――――――


「よろしくなのじゃ!」


そう言ってサリさんの顔はいつもの明るさを取り戻した


「一緒に行くのはもちろん大賛成なのですが…

 スムスドン国立図書館はどうされるおつもりなのですか?」

「ふーむ、久方ぶりに使い魔でも呼ぶかの」

「使い魔ですか… 流石は魔女様というべきなのでしょうか…」

「そうだ! サリさんに相談なんだけど…

 リコラやカルエ(影亀)を図書館に預けておけないかな?」

「いつの間に名前を付けたのですね…」

「ふむ、これまたどうしてじゃ?」

「ほら、この子達ってこの地域を脅かしていた魔物なんでしょ?

 だから、他国に行ったときにさらに周りに影響が出ちゃうんじゃないかって…

 実際リコラが前に水国の魔物をぼこぼこにしちゃってさ…」

「あぁ… そんなこともありましたね」

「確かに一理あるの… それなら儂の図書館の中庭を使うが良い!

 そこなら儂が結界を張っておるから逃げ出す心配もないし大丈夫じゃろ!」

「ありがとう!」


〈ネラル領主邸〉

 ↓

〈スムスドン国立図書館〉


図書館に着くや否やサリさんは床に魔方陣を書き始める


「聞け悪魔どもよ! 我の力となれ! 褒美として我の力を分けてやろう!」


そう高らかに叫ぶと同時に魔方陣が光りだし私たちの目の前に10人の悪魔が現れた

全員黒い羽根を生やし腰からは尻尾が見えている絵本の悪魔そのままだった


「久方ぶりじゃなコワグ!」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉コワグ・キョウラ

〈種族〉悪魔族

〈属性〉水

〈レベル〉13

〈ミンラ〉小さな空間を操る

〈職業〉図書館司書代理

〈能力値〉――

―――――――――――――――――――――


「お久しぶりです、サリ様が私たちを召喚するなど何十… 何百年ぶりでしょう」

「わっはっは! 呼んだ理由なんじゃが儂はしばらく旅に出ようと思っていての

 図書館の管理を頼もうと思ったのじゃ!」

「分かりましたサリ様、ご無事に帰還なさることを我ら一同お待ちしております」


コワグさんを真ん中に10人が揃って頭を下げる

寸分のずれもないその光景は圧巻だった


「よろしくお願いします!」

「サタナ様、ご心配なさらないでください

 我ら一同彼らの無事を保証いたします」

「そうじゃ、帰ったついでに物を1つ取ってきてもいいかの?」

「うん? いいよ?」

「すぐ戻るのじゃ!」


そう言いながらサリさんは階段をトタトタと上っていく


「何を取りに行ったんだろね?」

「さぁ…? お気に入りの魔導書とかでしょうか?」

「待つ間にこの子から何か質問してみよ!」


そう言ってカルエを連れてくる


「そういえば忘れていました、ではガラべドロや天国について聞いてみます」

「お願い!」


ナルディは真剣な話で目の前の影亀に話しかける


「ふむふむ… なるほど…?」

「どうだった…?」

「『ガラべドロは5神に挑む前に他の竜との戦いを勝った

  その力は天国を破壊する力となった』だそうです」

「やっぱり今の天国の悲惨な状況はガラべドロのせいなんだね…」

「他には… 『天の力が潰えた日が新暦の始まり』と言ってます」

「天国落下の話かな…? うーん…

 なんというかこんな言い方は良くないけど…

 目新しい情報はなかったね」

「ですね…」


余り状況に進展がなく落ち込んでいると

サリさんが手に本を1冊持って階段を下ってきた


「2人とも戻ったのじゃ!」

「それは何の本?」

「これは便利魔法の本じゃ」

「便利魔法? 例えばどんなものがあるの?」

「例えば、調理ができるイデメル、回復魔法を飲み薬として残して置けるトルミル…」

「やっぱり複合魔法なんだね」

「そりゃそうじゃ! ミンラ以外の魔法は普通使えないんじゃからの…

 おっ! これなんてどうじゃ? 訪れた街に飛べるルフドイ!」

「おぉ! それは便利そう!」

「流石魔女様ですね…」

「世の者たちはそう言うがの、やってることは複合魔法の応用じゃから

 普通の者でもできるんじゃぞ?」

「そうは言ってもやっぱり難しいと思うよ?」

「そういうものなのかの…?」

「うん! まぁとりあえずお試しがてらルフドイ使ってネラルに飛んでみて良い?」

「良いんじゃが、失敗しておかしな場所に飛ばすんじゃないぞ?」

「分かった! ルフドイ!」


『サタナのルフドイ!

 スムスドン国立図書館→ネラル』


〈スムスドン国立図書館〉

 ↓

〈ネラル?〉


「サタナ様…」

「何?」

「ここって…」

「ちゃんと水国北だよ?」

「まぁ高度5000mはあるじゃろうがな!」

「あはは、失敗しちゃった!」

「笑っとる場合か!」


転移した先は座標こそネラルだが、高さを間違えてしまっていた

私たちの体は当然のように落下を始めていた


「ナルディ… 助けて…?」

「はい、任されました!」


そういうとナルディは龍族の姿になり、私たちを背に乗せた


「おぉ! まさか生きているうちに龍族の背に乗る日が来るとはの!」

「やっぱり珍しい体験なの?」

「もちろんじゃ! まず龍族自体あまり見かけないからの

 儂が過去に見た龍族は地国の冒険者協会にいた娘だけじゃ」

「ユラさんのことかな?」


ナルディやユラさん、リアンと立て続けに龍族に会っているせいで

龍族はあまり珍しくないという自分の感覚が壊れていたことを始めて知った


「サタナ様、冒険者協会の前で大丈夫ですか?」

「うん!」

「分かりました!」


そうナルディにお願いするとナルディは

ちょうどよく冒険者協会近くの空き地に降り立ってくれた


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/109937280

次回は7月16日です


・・・・・・


地図の文字を信じられないくらい小さく書いてしまったので拡大するか

Pixivさんのほうで見てみてください!

次回からは気を付けます!

…と言いたいところなのですがまとめて作っているので

しばらく文字が小さいままです… 本当にごめんなさい!

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