鬼門
ユラさんの普段とは違う様子に背筋が冷たくなるのを感じる
緊張であまり思考も回らずに頭の中を緊張に支配される
「サ… 様…! サタ…! サタナ様!」
はっと気が付くとナルディが心配そうな顔をして顔を覗き込んでいた
「ご… ごめん…!」
「大丈夫ですか? 体調が優れないのですか…?」
「ううん… 大丈夫! 頑張ろう!」
地国の内は2の試験とほとんど変わらなかった
しかし、水国に入るとその状況は一変した
水国側には地国側にいなかった地上の攻撃者3名と空中の攻撃者1名がいた
そこまでは良かったのだが…
それらは地国側にいた攻撃者とは文字通りレベルが違った
「ミンラで見てみたら攻撃者達のレベル… 20辺りなんだけど!?」
「これはユラ様たちとの練習が生きてきますね!」
「ナルディ来るよ! 衝撃に備えて! トルケ!」
『サタナの全水魔法!
ナルディの周りのバリアは水を帯びた』
『攻撃者Aの初地魔法!
抵抗!ナルディに4のダメージ!』
『攻撃者Bの初炎魔法!
抵抗!ナルディに6のダメージ!』
「ぜ、全部初級魔法以上! はっ! 中級魔法所持者もいる!」
「サタナ様! 大丈夫ですよ!」
「あれは… 水の中級魔法トルケーム! ルフト!」
『サタナの全風魔法!
ナルディの周りのバリアは風を帯びた』
「攻撃者Cの中水魔法!
弱点!抵抗!ナルディに20のダメージ!』
「さ、流石に重い… イミル!」
『サタナの全癒魔法!
ナルディの体力が15回復!』
「次が来ます!」
「あれは… 風の魔弾! ガメル!」
『サタナの全鉄魔法!
ナルディの周りのバリアは鉄を帯びた』
『攻撃者Dの中風魔弾!
抵抗!ナルディに17のダメージ!』
「サタナ様! そろそろ地国に入ります!」
「こういうのって最後の最後にやばいのが飛んでくるやつでしょ?」
「私もそう思います…!」
その言葉待ってましたと言わんばかりに後ろから4色の魔法と弓が追いかけてきた
しかし、私に焦りはなかった
「ナルディと特訓の成果舐めないでよね! ルフト!」
『サタナの全風魔法!
ナルディの周りのバリアは風を帯びた』
「ナルディ! 衝撃に備えて!」
「はい!」
『攻撃者Aの初地魔法!
ナルディに7のダメージ!』
『攻撃者Bの初炎魔法!
抵抗!ナルディに5のダメージ!』
『攻撃者Cの中水魔法!
弱点!抵抗!ナルディに18のダメージ!』
『攻撃者Dの中風魔弾!
ナルディに23のダメージ!』
「の、乗り切った! お疲れ様ナルディ!」
「はい! でもまだ油断してはいけません…!」
「そうだけど… 何をそんなに怯える必要が…?」
危険すぎた水国を乗り切った私は完全に油断していた
「サタナ様!」
ナルディが叫ぶのを聞きようやく前を見たのは
目の前の青竜族が魔法を放った後だった
「え…?」
『ユラのルフトロラ!
抵抗!ナルディに11のダメージ!』
「ナルディ! 大丈夫!?」
「はい…! なんとか大丈夫です!」
最後の最後に大ダメージを喰らってしまったが何とか最後の玉を触り終え
ユラさんたちの元へと戻った
「両者突破!」
私たちが降り立ったころにはカツキとリアンは既に戻っていた
「流石カツキたちだね、全部避けたの?」
「あぁ、速150は伊達じゃないな」
「150もあるのですか貴方!?」
「ふふん、崇め奉ってもいいんだよ?」
「私は75だというのに…」
「ま、まぁまぁナルディにはナルディの良いところがいっぱいあるよ!」
「まぁ、この速がなかったらこいつの同行を許してないしな」
「ちょっとぉ!?」
カツキの辛辣な発言にリアンが涙目になっていたが
カツキは完全にスルーして私の方を向いた
「そうだ、サタナに質問があるんだが良いか?」
「無視!?」
「うん、いいよ?」
「最後のユラの攻撃をナルディが喰らった時
直撃したにしてはダメージが少なかったように見えたんだが…?」
「うーん… ガメドイってガメルとケドイの複合魔法でしょ?」
「あぁそうだな」
「それのガメルに使うマナを増やしてみた!」
「レムル様が仰っていた
ルフデガを更に暖かくする方法の応用ということですか!?」
「うん!」
「す… すごいな…!」
もはや定番となったこの凸凹4人組でしばらく雑談をしていると
「結果を発表する」
ユラさんがそう言いながら歩いてきた
口調こそまだきついままだが雰囲気は既にいつものユラさんだった
「カツキ・クハラ、リアン・クハラ… 合格だ」
「よし!」
「やった!」
「サタナ・クライ、ナルディ・ロフ… 合格だ」
「やった! やったよナルディ!」
「はい! お疲れさまでしたサタナ様!」
「ただ… サタナさん…」
口調もいつもの様に戻ったユラさんは顔をしかめてこう言った
「前は見ましょう?」
「はい…」
「ただ、あの機転の良さを鑑みて合格ってところです」
「うんうん、あれは良い判断だったね!」
「レムルさん!」
「ルフデガの今までの生徒達全員に教えてきたけど…
こんな応用の仕方をしたのはサタナが初じゃないかな?
これは純粋に凄いと思う!」
「ありがとうございます!」
ユラさんは私たちに合否の報告を済ませた後
離れたところに居た協会の人と話した後に再び私たちの元に戻ってきてこう言った
「お二人とも冒険者カードをご確認ください!
問題が無ければ職業欄が更新されているはずです!」
――――――――――――――――――――
〈名前〉サタナ・クライ
〈種族〉人族
〈属性〉天
〈レベル〉2
〈ミンラ〉ステータスを閲覧できる
〈職業〉ドラゴンライダー
〈能力値〉体10・力8+8・守5+8・速9
知30・運15
――――――――――――――――――――
「本当だ! これで…」
「はい! クスロ平原外でナルディさんに乗っていただいても問題ないです!」
「やった!」
「カツキは?」
「あぁ問題ない」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉カツキ・クハラ
〈種族〉人族
〈属性〉水
〈レベル〉5
〈ミンラ〉速く長い時間歩くことが出来る
〈職業〉ドラゴンライダー
〈能力値〉――
―――――――――――――――――――――
「そういえば、カツキたちはこの後どうするの?」
「そうだな、次は本題の配達業者の方の試験だな」
「そっか、それになるために来たんだもんね?」
「あぁ、前に行ったらこれを取ってない奴は来るなと門前払いを貰ったからな」
「あはは… 頑張って!」
「あぁ、サタナたちはどうするんだ?」
「どうしようかなぁ… とりあえず地国内でやることはやったから…
レベル上げしてその後に水国に行こうかな」
「そういえば、今各関所ではレベルチェックがあるらしいな」
「レベルチェック?」
「あぁ、弱い奴が入ってきて勝手に野垂れ死なれても困るから
ある程度のレベルが無いと通れないんだと」
「そ… それって何レベル?」
聞きたくないという気持ちを抑え恐る恐る聞くと
「俺たちは下りだったから特にチェックがなかったから
あまりはっきりとは覚えていないがそれくらいが…
パーティの平均レべルが25以上だったか?」
「うん、それくらいだったね」
「にじゅ… にじゅう… ご…?」
パーティの平均ということは2人合わせて50レベル必要である
今ナルディが38だから、私への要求レベルは12以上となる
「もうだめだぁ…」
「サタナ様しっかりしてください!」
「レベル上げならおすすめの方法がありますよ!」
遠くから私たちの様子を見守っていたユラさんが話に割って入ってきた
「ぜひ教えてください!」
「こちらの金・銀スライムの討伐です!」
そう言って2枚の写真を見せてくれた
「わぁ… 綺麗なスライム…!」
「金スライムは1匹辺り通常のスライム族の50倍
銀スライムは25倍の経験値を落とします!」
「そんなに!?」
「ただ… 問題点がありまして…」
「湧く場所が常闇の森の中になっちゃってるんだよね~」
「常闇の森…!?」
「そうなんです… なのでとても大きなリスクを背負うことになります」
「ど、どうしましょう…」
ナルディと顔を合わせてしばらく考え込む
少したってから結論を出した
「いや…! やる! 水国に行くためだもん!」
「おぉ~ やる気満々だね~」
「ナルディ行くよ! まずは地国北まで!」
「分かりました!」
「皆さん! 行ってきます!」
「いってらっしゃ~い」
「くれぐれもお気をつけて!」
〈クスロ平原〉
↓
〈地国北〉
「ここが常闇の森… 近くで見ると余計禍々しく見えるね…」
常闇の森はその名の通り森の中を影が覆っている森だ
しかし最近は魔物の力が強くなっており影が森の外まで溢れ出ているのである
「本音を言うなら怖いね…」
「そうですね… サタナ様…」
「大丈夫…! 気合い入れていこう!」
「はい!」
〈地国北〉
↓
〈常闇の森〉
地図→https://www.pixiv.net/artworks/109511956
次回は7月2日です