モノローグーいつかの空ー
拙作、中学時代に若気の至りで書いたモノのリメイク版となります。
原型は留めておりませんが、コレが書きたくて物書きになったまであります。
正義と悪、コインの裏表のようでありながら、見る立場によって様変わりする、そんな群像劇を描ければと思っております。
ーーーいつだっただろう。
たしか、戦争が始まる前に父さんに連れられて来た軍のパレード。
銃を持った屈強な軍人たちや、大地を震わせて走る戦車が行進する。
大通りを列をなして征くその光景は、私の心に恐怖心を植え付けていく。
群衆の中には『戦争反対』と書かれたプラカードを掲げる人たちも居た。
遠くでは警官隊と衝突して小競り合いになっている集団も見えたし、私たちの近くでパレードを見ていたおばあさんが、複雑な表情で静かに涙していたのも記憶に残っている。
物々しい空気の中、父さんが上を指差して「来たぞ」とだけ言う。
指差した先、澄み渡った大空を見上げた私の耳を爆音がつんざいた。
思わず耳を塞いでうずくまった私の頭を、父さんは優しく撫でてくれた。
見上げると、薄く雲を引く鋼鉄の鳥たちが空高く舞い上がっていく。
綺麗な菱形を保ったまま真上に登っていく4機の戦闘機。
丁度、太陽と重なる位置で四方に分かれ、噴水の水が落ちてくるように降りてくる。
自分でも気づかないうちに立ち上がって空を眺めていた私は、彼らがビルの陰に隠れるまで見入っていた。
轟音を上げて頭上を飛び去った戦闘機たちに、子供ながらに『憧れた』。
いつか。
いつか自分の手で、自分の身体であの空を飛べたなら。
空に向かって伸ばした手は、頭上を飛ぶ彼らには遥か遠くて。
当方、別に更新しております「白羽翠華の魔科学研究所」のストックがそろそろ無くなってきたので散発的更新としてこちらも上げて行きます。
もともと書きたかったモノであり、理想が高い故に投稿を躊躇っていた本作ですが、翠華共々愛していただければと思います。