第五話 今近くにある大切なもの
「俺はさっきの場所で待っている。
もし何か考えが変わるならこい」
男はそう言い部屋から出ていった。
「変わるか。ナナに向かって怒ったの初めてだったな。あの時俺はあんな簡単なことに気づかなかったってことか」
俺は頭をがっくりと下げる。
「大切な物は近くにある。それはナナ、
大切な妹で俺は兄だから守らないといけない一心だった。俺が強くならないといけない。
そう思っていた」
俺はそう呟く。
ギー
すると扉が開く。
入ってきたのはナナだった。
「お兄ちゃん」
ナナは少しくらい顔を見せる。
怖いんだろうな。俺が初めて怒ったから。
「どうした、ナナ」
俺は静かにナナに向かって言う。
「お兄ちゃん、どうして強くなろうって思うの?私を守るため?」
ナナはそう聞いてきた。
「そうだ。大事な妹に怪我とかしてほしくなくて」
俺は思ったことを口にする。
「お兄ちゃんは優しいね。
でも、私もお兄ちゃんを守りたいの。いっつも私は守られてばかり、お兄ちゃんは前を行く。
私はこのまま、守られているだけでいいのかなって思って。だからさ、改めて言うね。
一緒に強くなろうお兄ちゃん」
ナナは俺に手を伸ばす。
「ふっ、ほんとナナはすごい子だよ。
わかった。これからは二人で強くなろう。
俺はさっき戦った人が待っているから行くわ。
ナナは見ていてくれ、あの対決は俺とあいつの一対一でやるから」
俺はナナの目を見て言った。
「・・・、いいよ。でも、負けちゃダメだよ。絶対だからね」
ナナは笑顔で俺の顔を見る。
俺はナナの手をつかみ立ち上がる。
そして、男が言っていた場所に来た。
男は待っていた。
「来ると思った。変わったのか?それとも変わってないのか?」
男はそう聞いてきた。
「俺は変わった。だから次は負けない、
ナナも見ているんだ、カッコ悪いお兄ちゃんだとダメだろ」
俺は清々しい顔で男を見る。
俺はナナと一緒に強くなる。だから、そのために。
「じゃあ、かかってこい」
男はそう言った。
ひゅー、ひゅー
静かな風が吹く。
「やるぞ」
俺は剣を抜き、構える。
「やああ!!!」
俺は剣をもち男に向かって走る。
ブン!
剣を振るが避けられる。
まぁ、そうだろうな。
「当たらん。さっきと変わらんのか?つまらん、いや、話にならないな。
弱い、弱い!弱い!弱い!」
男は俺に向かって言う。
落ち着かせ、俺の気持ち!あれでキレたら俺は前の俺のままなんだ。
だから、もう!怒りのままに動かん!
「すー」
俺は大きく息をすう。
「ふん!なんの真似だ。勝てないから敗けを認めるのか?」
男は俺に向かって言う。
もう、そんな言葉は俺には聞かない!
「あんたのお陰で俺は色々を知れた。
前の俺はただ強くなる。それだけを思って生きてきた。
だけど、あんたに出会って大切な物を知れた。
近くにある。大切なものだ。そのために俺は強くなる、けど、俺だけが強くなる訳じゃねぇ、ナナと一緒に強くなる、だから、今考えた技見せるよ」
俺は剣を構え、心を落ち着かせる。
「そうか、なら全力でこい!俺が受け止めてやる!」
男はそう言った。
「乱・一閃!」
俺はそう言うと男の後ろに一瞬で移動し、
斬りつける!
当たった場所は右肩当たり。
相手より早く動ける。
「ふぅ」
俺は息を整えて相手の方を見る。
「ふ、ふふ。お前の強さはよく分かったよ。
ほら」
男は瓶を投げてきた。
「お、お、おっと」
なんとかキャッチする。
「それがアレス王国の魔法瓶だ。ミオからあずかっていた。
じゃあな、俺は仕事に戻る」
男はそう言い、町に帰っていった。
俺は頭を下げる。
あの人には感謝しかない。
「お兄ちゃん」
ナナが駆け寄ってきた。
俺はナナを抱きしめる。
「ナナ、俺と一緒に強くなるぞ」
俺は静かな、そして落ち着いた声でナナに向かって言う。
「うん、私もお兄ちゃんと一緒に強くなる」
ナナも笑顔で俺に向かって言った。
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あと見てくれている人はありがとうございます。
頑張るぜ。