96話 聖なる泉
朝───
今日も、いつも通り───まぁ、ここ数日───の平和な生活。
そう、思っていた。
ネロに声を掛けられるまでは───
現在、家の裏にある巨大な樹───ユグドラシル、その根本に俺とネロ、ラスがいる。
まぁ、何故ここに来ているのか、という理由は知らないんだけど……。
俺……必要?
要らなくない?
───って、思うの俺だけ……?
「なぁ、ネロ。何しに来たんだ?」
「待って、おにーちゃん! 静かにしてて」
そう言って、ネロはユグドラシルに触れる。
その瞬間、ネロの触れた部分から蒼色の光が漏れ出す。
「ネロ様! お待ち下さい!」
上空からそんな声が聞こえる。
なんか、聞いた事がある声だな……
気のせいか?
上空から以前にも見た事がある青年が飛び降りてくる。
は?
今、飛び降りて来たよな!?
あそこから……?
俺はそう思い、遥か上空のユグドラシルを見上げる。
樹だから枝はあると思うが……
見えない!
何処にあるんだ?
ん? 枝……?
「───我等が王、どうかされましたか?」
「え? あ、あぁ、何でも無いよ」
てか、この人……イケメンでは?
気のせいか?
そういえば、この世界……美形な人しか居ないのでは……?
そんなことを考えていると……
「そうですか。では、詳細の説明を……」
鷹の翼を生やした青年の言葉をネロが遮る。
「クーペ、侵入者は?」
「! それがですね……」
「何処にいるんですか?」
ネロが強い口調で訊く。
「おそらく、界隔聖泉にいるかと……」
「ラス、戸締まりをしっかりして来なかったのですか?」
ネロがラスをジト目で睨む。
「い、いや〜……した筈なんですが……」
そう言ってラスはネロから目を逸らす。
戸締まり……?
どういう事だ?
「わかりました。では、今から向かいましょう! 界遮聖泉へ!!」
「なぁ、ネロ。どうやって行くんだ? そこに……」
「えっと……橋を渡って下に降りるの!」
ネロは俺に対して、簡潔にそう説明(?)した。
橋、橋……橋ねぇ……。
北欧神話の世界で橋ってビフレストしか思い浮かばないんだよなぁ……
まぁ、ネロについて行けばいっか。
そう考えていると、ネロが「移動───界遮聖泉」と呟いた。
刹那、浮遊感と共に視界が白一色に染まる。
最近、移動系の魔法……使い過ぎじゃない?
魔力……大丈夫なのかな?
てか、移動している方法は魔法なんだろうか?
そんな事を考えていると……視界が開け、薄暗い洞窟の様な所に移動していた。
「ここは……?」
余りにも見慣れぬ光景だったからか俺のそんな言葉が漏れる。
そう言った事に気づいたのか、ラスが声を掛けてくれた。
「此処は界遮聖泉と呼ばれる泉が存在する“世界”……」
世界……?
それにフヴェルゲルミルって……何処かで訊いた気が……?
別世界……?
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