38話 ニーズヘッグ
(な……何なのじゃ、この圧は……!! もしや、ワシは怒らせてはならぬ者を、怒らせてしまったのか!?)
「我が名はニーズヘッグ……いや、名はラス。我が怒り、その身に刻め!」
ニーズヘッグと言う名は“怒りに燃えて蹲る者”と言う意味を持つ。
彼は普段、“怒り”を抑制し体内に溜めている。
故に、彼は限界を越えて“激怒”した場合にのみ真の力を解放するーーー
「テオス様、危険ですのでお下がりください」
「なんで? ニーズヘッグがーーー」
「テオス様!」
「ッ!?」
「お願い致します……テオス様。お下がりください」
ジョーカーが苦しそうな顔をする。
「あ……あぁ」
どうしんだ?
ジョーカーが焦ってる?
いつの間にか、ネクロとフィリアも後ろに居た。
そして、俺達はさっきの巨大な扉の所ら辺まで下がっていた。
「な……なぁ、なんでここまで下がる必要が………あるんだ?」
「今、ニーズヘッグが怒りました」
「まぁ、それぐらいわかるよ。でもーーー」
「ニーズヘッグは怒ると真の力が覚醒します」
「そうなのか」
真の力……?
それって、大丈夫……って事だよな?
『き……貴様、何者じゃ!? これほどの力を何故!?』
「黙れ、塵。貴様はテオス様に手を出そうとした。その行為、万死に値すると知れ!」
『あ? 貴様……このワシを塵……じゃとぉ?! 貴様こそ万死に値する!!』
「黙れと言っている。一度、神々に刃向かった者である貴様が我に勝てるとでも?」
『貴様こそ、ワシを舐め過ぎじゃなぁ! アンブロシア!!』
タンタロスはとても心地よいと感じる煙を辺り一帯に拡散させた。
その効果は煙による自らの姿の隠蔽、そして、匂いによる周囲の者の隷属化である。
だが、ラスには効かない。
竜の黒鱗は基本的に自分より格下・同格の敵の攻撃を無効化するという能力がある。
それ故、ラスには効かない。
「それは、我には効かぬ」
そう呟くとラスはタンタロスの背後に回り込む。
「貴様では我には勝てぬと知れ」
静かにそう言い放った。
『なッーーー! これほどの力を……持つものがあと3人……か。凄まじいのぉ……』
(ワシは絶対に怒らせてはならぬ者を怒らせてはしまったのじゃな……)
「ーーーレア、魔法使用不可の妨害の解除を」
「あー……バレてしもたか。ええんやな?」
「はい。問題ありません」
「そか、ほな解除するで〜」
そうレアが言った瞬間、鎖のジャラジャラという音と共に、辺りが光に包まれた。
その刹那、ラスがある魔法を発動する。
『なッ! それはッ! なんなのじゃ!? この熱さはーーー』
その熱さの正体は……神代級、火属性魔法のーーー『太陽』
そして、ラスの指から少しずつ蒼色と白色が混じった様な“球体”が出現する。
その大きさはオセロぐらいだが、その熱量は想像を絶するだろう。
そして、ラスがその“球体”をタンタロスに向かって投げつける。
その球体ーーーいや、太陽の炎がタンタロスを焼き尽くしていくーーー
「……まぁ、ワシはあの御方の……捨て駒だったのじゃろうなーーーーーー……」
そう言い残し、タンタロスは塵も残さず消滅した。
タンタロスの言葉は虚しくもラス以外の誰にも聞こえていない。
そして、“怒り”から解放されて冷静になり、タンタロスの言葉について考える。
「………」
(捨て駒……? どう言う事だ? それにあの御方? 指図した者がいるのか……? わからないな……後で、水神達に聞いてみるか……?)
ラスの圧倒的な力ーーー
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