120話 漆黒の騎士
見渡すは草原。
いや、草原だった場所。
今となっては、草花は枯れ果てている。
永遠の癒しを与える大地は、地割れを起こし所々隆起している。
そんな荒れ果てた大地の中心には1本の樹と少女がいる。
その少女はすやすやと眠っている。
「大丈夫かい?」
僕はその少女に声を掛ける。
パチリと目を開き、ゆっくりと起き上がる。
「えぇ……」
そう言う少女の声はあまりにも弱々しい。
「じゃあ、言い換えよう。君をお父様の所まで送るよ」
少し間を開けて返事が返ってくる。
「ありがとう」
「いえ、そうしないと……ネロ様や貴方のお父様から叱られるので……」
「そ、そうね……。お父様は怒ったら怖いものね……」
少女は自分の父が怒った姿を想像したのか、少し語尾が弱くなる。
「では、送りますよ。貴方の並列存在の回復はネロ様にお任せしますが、宜しいですか?」
「えぇ、良いわ。ありがとう」
「いえいえ、当然の事ですので。では───ッ!?」
突如として、背後に気配を感じた。
振り返ると……そこには漆黒の鎧を全身に纏う騎士が居た。
「君は……何者だい?」
「我は、主の命によりフィリア王女を迎えに来た者……」
重低音の様な重々しい声が聞こえる。
その態度と声は……一国の王に仕える者などでは無く、一国の王の様な雰囲気を纏っている。
な……なんだ!?
瞳は赤く光って……。
それに、この魔力は……もしかして───
「貴方は……ジーク!?」
横にいた少女───フィリアはそう驚きを露わにする。
「は、お迎えに上がりました。お嬢様」
「もしかして……宝物を守護するファフニールと戦った英雄かい?」
「英雄などではないですよ。まぁ、決死の覚悟で戦ったファフニールも……今は、主に懐いていますがね」
「そうなのかい?」
「あぁ、だが……少し後で良いか? お嬢様をお迎えに来た故、我が先に成し遂げねばならぬ事は───」
あぁ……そう言う事か。
「皆まで言わないでくれ。またね、ジーク……いや、ジークフリート」
「フッ、その名で呼ばなくても良いものを。では、御前失礼する。オルトゥス殿……」
「あぁ」
鎧越しで分からなかったけど……笑っていたのかな?
そして、僕とすれ違う。
「お嬢様、立てますか?」
「えぇ、ありがとう。ジーク」
少女は、ゆっくりと立ち上がって笑う。
「いえ、では……参りましょうか。あの御方の城へ───」
「そうね。でも、大丈夫かしら? 何か嫌な予感が……」
「それは、お嬢様も一緒なのじゃろう?」
「な、何のことかしら……?」
少女は意味がわからない、とでも言うように恍ける。
「まぁ、仕方のない事ではあるのじゃが……。ロキに神呪を飲まされ、肉体が一時的に……並列存在の元へ強制移動させられた。これをどう主に説明しろ、と言うのじゃ?」
「うっ……そ、それは……あっ! そうよ!」
(暫く考え、解決方法を導き出したのじゃろう。じゃが───)
「お嬢様が思いついた案は絶対に実行せぬぞ」
「え〜! ジークのバカ〜!」
「……では、また何処かでお会いしましょう。オルトゥス殿」
ジークフリートは自分を貶すフィリアを横目に僕に話し掛ける。
そして、彼はお辞儀をする。
「あ、あぁ……」
僕がそう返事をすると、地面へ沈む様に消えていった。
あれが、ジークフリートの魔力……か。
魔力……いや、魔力の性質は精錬されると他者にまで影響を与える事が出来る様になる。
“竜殺しの英雄”の異名は伊達では無い、と言う事か……流石だね。
だとしても……ロキには勝てない。
勝てるとすれば……七大魔神と七大天神、全員で共闘すれば……いや、正確な情報ではない為、これ以上考えるのはやめよう。
あれが、全力の2割も出していないのであれば……勝てるのは、帝王神様くらいだろうね。
「……本当に、ロキは……我々の“脅威”と言えるだろうね」
荒れ果てた楽園に、僕の独り言だけが木霊する───
神からも認められるロキの狂気───!!
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