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112話 世界を隔てる壁


 空に赤き光が現れた。

 その数、およそ数千───


 刹那、我の体が宙に浮く感覚と共に。

 我はなす術なく吹き飛ばされる。

 腕や足が地面に当たり、皮が剥け血が吹き出る。

 そして、骨が軋んでいる様な音が聞こえる。

 ───刹那、轟音が鳴り響く。

 我の体は初撃の衝撃で思うように動かない。


 僅かに開く目を開き衝撃の正体を探る。

 我が瞳に映った物は───


 火球……!?

 まさかっ……あの赤い光は───


 刹那、我は爆風で後方へ飛び、バランスを崩してしまった。

 岩肌にぶつかり肌が切り裂かれ、地面に叩きつけられる事で擦り傷が出来る。

 そして、追い討ちで火球で体が焼かれる。

 その火球が当たり、その衝撃で岩肌に肌をぶつけて、肌が切り裂かれる。

 擦り傷も出来る。

 また、火球が迫ってくる。

 一弾ずつ的確に我、目掛けて迫ってくる。


 ───それが絶え間なく、永遠の様に続く。


 熱い、熱い、熱い。

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。

 熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い。

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。

 熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い。


 意識が朦朧とする中、痛みと熱さに襲われる。

 全身傷だらけ、目も碌に開けられん。


 やっと、終わった……か?


 我はゆっくりと起き上がる。 

 何とか、肉体が原型を留めている……。


 「ハァ……ハァ…………!」


 息切れが……!

 それに全身が痛い。

 幾ら”超速再生“があろうとも傷が深ければ意味がない。

 それに炎のせいで爛れていた傷が焼かれて、ある種の瘡蓋のような物の代わりになっている。


 「───解錠せよ。世界を隔てし扉」


 魔帝が何か呟く。

 刹那、地面が……いや、(ゲヘナ)が揺れた。


 な、なんだ……?

 何故……揺れる!?

 まさか……!

 魔帝の奴が……何か…………。


 我が座す、この山頂が虹色の淡い光を放ち始める。

 

 何が起こっているのだ!!

 それに……何故、体が動かない!?

 魔帝が目の先に居るというのに───ッ!?


 その光は、一瞬、閃光のような輝きを放つ。

 我は眩し過ぎて目を瞑る。


 「もう、逃げられぬ」


 魔帝の声が微かに聞こえた。

 その刹那、浮遊感が我を襲った───



 *   *   *



 俺は『移界門(ゲート)』を使って“界隔虹煌神壁(ビフレスト)”の鍵を開けた。

 そして、ザックームを“真の地獄”とも呼ばれる死獄界(ニヴルヘル)へ転移させた。

 一瞬、視界が白に染まる。

 そして、何かに触れた。

 

 あの感じ、雲だな。

 若干、水滴がついている。

 やはり、雲で当たりのようだ。

 ん?


 俺とザックームは死獄界(二ヴルヘル)の地面へ向かって落下している。


 おっと、これは……ヤバそうだな。

 『飛行(フライ)


 俺は周囲の風を操作し、体の重心を安定させる。


 この魔法はバランスをとるのが面倒くさいから使いたくはないんだがな……。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。


 俺は地面へ向かって落ちているザックームへと視線を移す。

 すると、数百mも下にある地面から、太い樹木が勢いよく伸びて来る。


 ほぅ、恐怖と混乱で脳が支配されていても使えるのか……。

 面白い。

 これは、滅し甲斐があるな……。


 ザックームはその樹木に乗り、こちらへ気味の悪い笑みを向けて来る。

  

 これは、攻撃してくるな。

 ふむ、受けるのも悪くはないが……得策でもないな。


 「どうしたものか……」


 宙に立つ俺のその声は、誰もいない天空(くうかん)に響く。

 俺が悩んでいるうちに、ザックームが魔法の詠唱を開始している。


 「我は地の覇者であり、樹を司る者───」

 

 不意打ちで攻撃しても良いが、目的が果たせなければ意味が無い。


 「我が命じる。我が眼前の敵……“魔帝”アーテルを討ち滅ぼし賜え───」


 あまり魔力は使用したくないが……今は、ザックームに全力を出させ捕らえる事が目的だ。

 そこをはき違えてはならない。


 ザックームは目を瞑る。


 「結晶よ! 今こそ、1つと成りて墜ちよ……!! 『メテオ』!!」


 ザックームは目を見開き、大声で言い放つ。


 な……!

 樹木の魔法だと思った故、地面にからの攻撃だと読んでいたが……。

 『隕石落下(メテオ)』とは、読みが大きく外れてしまった……!

 クソッ! これではギリギリまで避けれない!

 タイミングを間違えれば……即、死亡(しゅうりょう)だ。

 仕方ない、賭けてみるか……あの魔法に!


 俺は目を凝らし、ザックームの背後の空間を見る。

 そして、20秒程待つとザックームの居る場所から遥か上空に橙色の魔法陣が現れる。

 その魔法陣の内側は無色。

 すると……黒、紫、青紫、と次々に色が変化する。

 次第に夜空の様な景色が映り、そこから隕石が出でる。

 これは……石などでは無く、星だ。


 地球程ではなくとも小惑星程の大きさの物質(もの)が俺へ向かって落ちて来る。


 「フハハ、フハハハハハハッ!! 我が異名、死齎邪樹(ザックーム)を冠する原因の1つにもなった技を食らうが良い!!!」


 ザックームは大声で自慢げにそう告げる。

 

 逆に、土壇場でここまでの力を発揮できるとは……!

 ある意味、尊敬できるぞ!

 あ、そろそろ1分経つな。

 

 俺の手が届く程の距離までゆっくりと(いんせき)が落ちてきている。

 俺は魔力を600消費して、上級・時空属性魔法-『瞬間移動(テレポート)』を使用する。

 刹那、ザックームの背後へ移動した。


 

回避成功───!!

最後まで読んで頂き有難う御座います!


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― 新着の感想 ―
[良い点] アーテルさんが一人称俺になった瞬間、色んな事象に対して生き生きしてきた感じがします。 これが解放ってやつですね!!!
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