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111話 悲痛


 俺は死んだ。

 これで何回目だろう。

 俺は“俺”に作られた分身体。

 “俺”の為に俺は動く。

 俺達の意識は共有されており、()という存在は俺の知識や(しっぱい)した経験を生かして“俺”の役に立てる様に頑張っていた。

 だが、俺は死んでしまった。

 “俺”からの最後の命令(オーダー)、ザックームの討伐という任務を果たしきれなかった。

 ()が“俺”の最後の分身体だ。

 これから“俺”はどうするのだろうか?

 どう動くのだろうか?


 そんな疑問が俺の頭の中を駆け巡る。


 『(あなた)は最後まで、任務を果たしてくれましたよ。本当に、最後まで……有難う御座います』


 茫然とした思考の渦にふと、その声が聞こえた。


 いえ、こちらこそ……。

 今まで、見捨てずにいてくれて有難う御座います……!!

 

 『そうだな。俺は、使えない存在(もの)は直ぐに捨てていたな。だが、今は違うから安心しろ。ではな、俺よ』


 あぁ……。

 “俺”よ、アイツは強い。

 ビスリンという技は、絶対に生身で受けるな。

 肉体が腐敗し壊れる。

 アイツと()るなら、死獄界(ニヴルヘル)の方が良いだろう。


 『わかりました。助言、有難う御座います』


 ははっ……。

 変わったな“俺”も……俺も。

 

 『そうですか? そんな風には感じませんが……』


 では、そろそろだな。

 アイツの元で少し雑談でもしてこよう。

 まぁ、次会った時に“俺”が怒られるかもしれないがな……。


 『そうかもしれませんね。では、さようなら───……』


 あぁ……じゃあな“俺”よ───……

 俺達は“偽りの魔帝”だったが、“俺”は本物だ。

 そこだけは履き違えるな。

 そろそろ、時間の様だな。

 では、逝くとしよう。

 頑張れよ、俺───……


 『あぁ……』


 俺のその声は、いつもとは違っていた。

 それは小さくも堂々とした声。

 だが───それと同時に……悲しさも伴っている気がした。

 数年間、“俺”の影武者として生きてきた中で、初めて耳にした声だった。



 *   *   *



 俺はテオス様の家から自らの城の王座へ転移した。


 「さて……情報も得られた事ですし、ザックームの所へ向かうとしますか……」


 俺は誰も居ない玉座に座り、そう呟く。


 悲しみなど、今の今まで感じた事などなかった。

 俺という分身体(そんざい)が消えて、今日で100回目だ。

 99回、涙など出なかった。

 この様な心境にもならなかった。

 なのに、何故だ?

 何故、100回目───いや、分身体が作れなくなった瞬間に涙が出たのか……。

 もう2度と、作れないからか……?

 違う気がするな。

 

 俺は思考を巡らせる。

 だが、一向に答えなど見つかりそうも無い。


 「はぁ……」


 俺は考えても答えの出ない疑問に蓋をし、溜息を吐く。

 そして、気持ちを切り替える。


 仕方ない……。

 この感情も全てザックームへぶつけるとしよう。

 完全な八つ当たりだが、まぁ……良いだろう。

 先程の件で、完全に“世界の敵”と認識されたのだから……。


 「ここからは反撃だ。俺は“傲慢”だが、時には虚言を使い皆を欺く“虚飾”でもある……」


 暫くは様子見で、アイツの舞台で踊ってやろう。

 それはもう、トリックスターのように。



 *   *   *



 そして、界遮聖泉(フヴェルゲルミル) にて───


「フハハハハハハ! 遂に……遂に! あの忌々しい魔帝(あくま)も消えた……!! これで我が、この世界を壊す為に邪魔な者は消えた!!! さて、セラ───!?」


 セラに現実を突きつけようと泉に視線を移す。


 な……何故だ!?

 何故、居ない!!

 まさか! ユグドラシルが転移を使った時に……!?


 「やっと、動揺したな。ザックーム───いや、アーダ」


 聞き覚えのある、憎たらしい人物(やつ)の声が聞こえる。

 我はその声の方へ振り向き、視線を移す。

 すると、そこに居たのは───


 「魔帝……」


 「ハハッ! そう、不思議そうな顔をするな」


 遥か上空に悠然と立ち我を見下し嗤う人物。

 先程まで戦った“魔帝”とは気配が違う。


 「貴様は、何者だ? 本当に……あの魔帝か?」


 「あぁ、そうだ。貴様が殺した“俺”の本体だ」


 本体……?

 という事は、先程殺した魔帝は……分身体だった?

 いや、嘘だな。

 そんな事はあり得ない。

 だとしても、どうやってここに来た?

 魔力の反応は無かった筈───


 「……失せよ。目障りだ」


 アーテルがそう告げた瞬間、アーテルの背後の空に───

 赤い光が星々が煌めく様に輝いた。



悪魔の皇帝(本体)の力とは───!?

最後まで読んで頂き有難う御座います!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 分身体が作れなくなった瞬間に涙が出るって、意味深… 悲壮感がこちらにも伝わってきます… [気になる点] 多めに行間を取るなどして、視点主の変更を明確にしないと、読んでいるこちらが混乱すると…
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