110話 不浄なる水
黄白色の水球が飛んでくる。
だが、それだけでは終わらない───。
その水球は俺へ向かって飛んできながら、分散している。
それは……ギリギリ目を凝らして見えるかどうか、という程にまで小さく成っている。
俺は『金剛盾』を使用した。
地面に橙色の魔法陣が現れ、そこから宝石の結晶が出てくる。
それは、根を張り巡らせる樹の如く、その姿を盾に変えていく。
すると、1番早い水球の粒が『金剛盾』に衝突したのか、音が鳴る。
その音は、轟音。
リルの本気の遠吠えにも匹敵する程の……いや、これは互角だな。
これは……亀裂だとっ!?
この盾の厚さは60cm程あるのにも関わらず、内部が砕けている。
先程まで煌めいていた宝石とは思えないな。
この耐久力なら、あと1粒も防げるかどうか……。
いや、俺だけならば大丈夫なのだ、だが……アイツ等が居るから───
「アーテル! 私達の事は良いから、全力を出して! 私は、早くおにーちゃんの所に行きたいの!!」
ふっ……。
とんだブラコンですね。
仕方ない、早くテオス様にお会いしたいのはこちらも同じ。
さっさと潰しますか。
「ネロ! 俺とザックームを除く者達をエーリューズニルへ!!」
「ですが……! それでは、アーテル……貴方が……!」
「早くしなさい! 俺は万全だが、お前等が居ては全力が出せない! それにお前も限界が近い筈だ! それを分かっていてお前に転移をしろ、と言っている! もしかして、転移が使えないのか!?」
「使えますよ!! では、また……」
ネロがそう言うと、少しずつ皆の体が薄くなっていく。
「あぁ。あとバエルに連絡をとる事くらい出来るだろ……って、行くの早すぎだろ」
ネロ達は、俺がその言葉を言い終わる前に転移した。
「待っててくれて、有難う」
まぁ……俺が待たせた、のだが良いだろう。
そんな些細な事……。
刹那、俺を衝撃が襲う。
な……なんだ!?
ま、まさか……!
ギスリン……?
何で動いて……!?
俺の体はギスリンに貫かれていた。
俺の横腹に穴が空いている。
クソッ!
この技は危険だ。
一応、【超速再生】で回復はするが……俺の体の一部が抉られる程の威力とは……!
これは……殲滅対象に登録しなくては……!!
「不思議か? 悪魔の帝王───」
「えぇ、ですが……これくらい───……」
じんわりと痛みが感じる。
それは甘い毒を飲まされ、体が麻痺し重くなった様な感覚だ。
すると視界もぼやけてくる。
な、何だ……?
急に……まさか……ザックームのギスリンの───
頭に衝撃を感じる。
……?
鈍器で殴られたか……?
ん?
黒い……!?
ぼやけた視界にうっすらと映る物は……とても見覚えがある物だ。
それは、俺が履いている靴だ。
……ありえない。
もし、認めてしまったら……俺の体が破壊されている、という事を認める事と同義なのだから……。
俺の頭に黒い何かがゆっくりと近づいてきている感覚がある。
「フハハハハハハ!! 死ぬが良い。悪魔の帝王───アーテル」
人を嘲笑うその声が聞こえた瞬間、俺の意識はプツリと消えた。
肉体と意識の乖離───。
それは悪魔にとってどの様な意味を持つか、ザックームは知らなかった。
肉体と意識の乖離……それは悪魔にとって“解放”を意味する。
“解放”の意味とは───!?
最後まで読んで頂き有難う御座います!
「面白い」 「次の話が気になる」と思って頂けましたら下の☆☆☆☆☆から応援宜しくお願いします!
感想やいいね、ブクマ登録などして頂けたら嬉しいです!




