第77話 魔王様、依頼される
☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★
本日、「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」のコミカライズが更新です。
作画は『神眼の勇者』の白瀬岬に描いていただいております。
ふつー先生の原作によって作画になっていますので、どうぞお楽しみください。
コミックノヴァおよびピッコマにて掲載中。
しばらく毎週更新とのことですので、よろしくお願いします。
「うめぇ! 夏はやっぱりかき氷だよな!」
小一時間ほど浜辺で遊んだ我らは、水着を借りた海の家へとやってくる。昼時を過ぎた辺りだが、海の家の中にある食堂は盛況だ。ソースや粉ものが焼ける香りに、つい鼻の穴を広げてしまう。おかげで、食棒というものを買うだけで随分と並んでしまった。
我らがチョイスしたのは、かき氷だ。
冷たく、サラサラした氷に甘いシロップ、蜂蜜、果物の果汁、大人であれば酒などをかけて食べている。
今、ネレムが食べているのは、オレンジ味。その横で粛々と食べながら、時折幸せそうな笑みを浮かべるハーちゃんは、ストロベリーだ。
そして、我のチョイスしたのは、当然――――。
「プリン味だ!」
サラサラの氷の上から、通常よりもやわらかくなったプリン、さらに定番のカラメルソースがたっぷりとかかっている。
みんな、きわものと敬遠していたようだが、出来上がったプリン味のかき氷を見て、目の色を変えた。
「ルーちゃん、かき氷おいしそう」
「ホントっスね。さすが姐貴っす!」
「ふふん。私はプリンがこの世で1番好きですからね」
詳しく言うと、マリルの作るプリンが1番なのだが、このプリン味のかき氷もなかなかおいしそうだ。
「いただきます」
我は氷にドロッとしたプリンを絡め、口の中に入れた。
キィンと氷の剣で歯を叩いたような冷たさの後、定番となっているカスタードのまろやかな食感が舌に絡む。カスタードの甘みと、カラメルソースのコクと香ばしさのハーモニーは抜群で、プリン愛好家たる我を唸らせた。
「うまい!」
思わず膝を叩いてしまう。
なんと美味か。
マリルのプリンを食べた時は、こんなものが世の中にあるのかと驚いたが、世界とは広いものよ。たかが氷を刻んだものに、プリンをかけただけでおいしくなるとは……。
いや、やはりプリンが偉大なのだろう。
このような食べ物を、こうして人間に転生するまで知らなかったのは、失態であった。
あらゆる術理を備えたといっても、我は料理に関しては門外漢だからな。家で手伝おうというと、ターザムが危険だといって、包丁を握らせてくれぬ。過保護なのか、単に我を商品として見ておらぬのか、あの父上はよくわからぬ。
「お嬢ちゃんたち、いい食べっぷりだね」
我がパクパクと食べていると、店員に声をかけられた。禿頭にねじり鉢巻きをつけた男の店員は、どうやら店主らしい。
「この辺では見ない顔だな。どこから来たんだい?」
「王都です」
「王都? 随分遠くから来たんだね。もしかして学生さん?」
「はい。聖クランソニア学院の生徒なんです」
「え? もしかして聖女の卵かい、あんたたち」
店主が声のトーンを落とす。
それまで明るく振る舞っていたのに、急に周りを気にし始めると、説明した。
「実はな。最近、海辺の洞窟にゴーストが住み着いてな」
「ゴースト?」
ゴーストとは魔物の一種だ。
通常の魔物と違って、実体を持たず、物理攻撃はほとんど通じない。属性魔術もあまり効果がないが、聖女が操る浄化魔術にてき面に効く。つまり、我ら聖女こそがゴーストの天敵なのだ。
「お嬢ちゃんたちで、どうにか払ってくれないか?」
なんでも近くこの浜辺では花火大会が催されるらしい。それまでゴーストを浄化したいところなのだが、エリニューム教会に属する聖女に頼むと、多額の寄付をしなければならず、比較的安くすむギルドの聖女も、あちこち引っ張りだこで、最短で3週間後ぐらいにしか来られないそうだ。
「ゴーストといっても、そんなに危険なもんじゃねぇと思うんだ。なんだったらギルドの正規料金を出すからよ。お嬢ちゃんたちで、ゴーストを払ってくれないか?」
さて、どうしたものか?
前にもあったが、聖クランソニア学院は特例以外でのバイトを禁止している。バレれば、我らに何らかのペナルティが課されるであろう。
しかし、これは人助けだ。困っている店主を見過ごすことはできぬ。
「いい考えがあるッスよ。この活動を奉仕活動の一環にすればいいんス」
ネレムがニヤリと笑って提案する。
夏期休暇の課題の1つに、地域の奉仕活動の参加というものがある。たいていの場合、清掃活動や子どもの世話、お年寄りのお悩みを聞くといったものなのだが、その活動内容は自由である。
「お、怒られないかな?」
「少しお小言ぐらいは言われるかもしれないッスけど、立派な地域貢献ですよ。ただ奉仕活動ってことになると、タダ働きってことになりますけどね」
「なら、こういうのはどうだい? うちの食べ物なら、何でも飲み食い放題ってのは?」
「え? それって、プリンもですか??」
「あたぼうよ。それも1年分だ」
「1年分……!」
「いや、1年分っていっても、海の家って夏しか空いてないでしょ。精々今から来年ぐらいしか使えない権利っスよ」
「いいんじゃないかな。お金をもらったなら奉仕活動にならないけど、ご飯を食べさせてもらったぐらいなら。……あとは、ルーちゃん次第だけど、どう?」
普通の娘3人でゴースト退治は危ういと思うが、我らは聖女候補生だ。たとえ聖女の卵であろうと、困っている人を見捨ててはおけない。
万が一があっても、我がいるしな。
「わかりました。その件受けます」
こうして我ら3人は、ゴースト退治を請け負うことに決めたのだった。
海の家から出て、我ははたと気づく。
「そう言えば、エリアナの姿を見かけませんね」
「浮き輪に乗って、寝てるところまでは見たけど……」
「もしかして沖まで流されてたりして……」
…………。
…………。
…………。
「「「あはははははははは……」」」
まあ、エリアナのことだから大丈夫だろ。
◆◇◆◇◆
「ちょっと! ここどこ?? シルヴィ! グリフィル! ……ルブルぅぅぅううううううう!!」
海のど真ん中で、大きな浮き輪に乗っかりながら、叫ぶエリアナでした。
※ この後、なんとか自力で沖に戻った。







