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第75話 魔王様たち、水着に着替える

☆★☆★ 第2巻 好評発売中 ☆★☆★


「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」第2巻

ブレイブ文庫より発売されます。

ゲーマーズ、メロンブックスでは、書き下ろしSSリーフレットが付いてきますので、

ぜひよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 ソフトクリームのような白い雲。

 強い夏の日差し。

 広がる砂浜。

 香る潮風……。


 そしてなんといっても、青い海……!


 そう。我々はついに海にやってきた。


「「「わぁあ!」」」


 ケルに乗ること1時間。

 我々はセレブリヤ王国東端の砂浜にやって来ていた。普段とは見慣れぬ光景に、ハーちゃんも、ネレムも思わず歓声を上げて喜んでいた。


 我は訓練がてら、よく海を目にするものの、興奮を禁じ得ない。いつもなら1人だが、今日は友達がいる。しかも夏季休暇だ。この上ない自由の時間に、友達と明日の学校であることも気にせず遊べることを考えると、これ以上の至福の時間はないだろう。


『ぜー。はー。ぜー。はー。ぜー。はー』


 我らがホッコリする横で、ケルは横に横倒しになって、激しく息をしている。

 ケル、大義であった。しかし、相変わらず体力がないなあ。最近、我の特訓も休んでおったし、そろそろ特訓を再開せねばならぬだろう。


「もっと海に近づいてみよう」


 砂浜を囲うように広がる岸壁の上から眺めていた我らに、ハーちゃんが声をかける。珍しくハーちゃんも興奮している様子だ。眼鏡を曇らせ、今にも砂浜に向かって走り出しそうだった。


「待ってください、ハーちゃん」


「そうッスよ。ハートリーの姐貴。あたいたちには海に入る前にやることがあるッス」


「さすがネレム。よくわかっていますね」


「当たり前じゃないっスか。何年、ルブルの姐貴の舎弟やってると思うんスか?」


 いや、まだ半年も経っていないのだが……。


「まずは――――」


「準備運動だな。まずは軽めに砂浜を100周した後、柔軟体操を3時間ほど」


「違いますよ、姐貴! ……てか、100周って! 3時間も柔軟していたら、日没になっちゃいますよ」


「え? では……」


「水着ッスよ。まずは水着を用意しないと……。どうやって海に入ろうとしていたんですか?」


「むっ? …………裸?」


「そんなことをしたら、逆にこっちが衛兵に捕まってしまいますよ!」


 なんでだ? 命の源たる海で過ごすのだ。ならば裸一貫。生まれたままの姿で過ごすのが作法というものであろう。


「水着ッスよ! み・ず・ぎ!」


「そんなことですか。心配しなくて、学校指定の水着を持ってきましたよ」


「ダメッスよ。あんな芋っぽい水着! うちら16歳ッスよ」


「私は5歳ですけど」


「いや、見た目がッスよ! 見た目! あー。もうややこしいな! とりあえず水着を探しに行きましょう。あっちでかわいい水着を吊るしている海の家がありました」


 ネレムは強引に我らを浜辺の端っこにある海の家へと誘うのだった。




 海の家にやってきた我らは、早速貸し水着を選び始める。確かにかわいい水着がいっぱいだ。人間の女子(おなご)であれば、必ずや飛びつくであろう。しっかり清潔にしておるようだし、使用するぶんには問題ない。


 むぅ……。しかしネレムの奴は何を怒っているのだ。我らは学生。水着はやはり学校指定のものに限るような気がする。そもそもここにある水着はすべて防御力が低い物ばかりだ。我なら岸壁にぶつけられようが、クラーケンの触手にぶたれようが、無傷でいる自信がある。しかし、ハーちゃんやネレムは別だ。


 もっと防御力の高いものがいいと思うのだが……。


「ルーちゃん、これなんてどう?」


 ハーちゃんが合わせたのはワンピースの水着だった。暖かみのある暖色系に胸の辺りにはフリルがついているかわいい奴だ。他のものと比べて露出が高く、確かに防御性能が高そうに見える。


 だが、しかし……。


「ダメですね」


「え? ダメ? かわいいと思うんだけどなあ。でも、ルーちゃんが言うなら」


「いえ。とてもかわいいと思います。ですが、防御力がまだまだ足りませんね」


「防御力??」


「そうですね。この中ではこれなんか高そうですね」


 我は1枚の水着をハーちゃんの前で掲げる。それはビキニであった。ただのビキニではない。ほとんど紐みたいな形状で、かろうじて秘部を隠すほどの表面積しかなかった。


「ルーちゃん?」


「驚くのも無理はありません。しかし、この見た目で防御力が〝3〟もあるのです。何より軽い。これならクラーケンの触手攻撃からも逃れることができるでしょう」


「…………」


「ん? ハーちゃん?」


 ……気絶してる?

 え? なんで? 我、なんかやっちゃった。


「ルブルの姐さん、それ以上はセクハラッスよ。やめときましょう」


 ネレムは首を振りながら、我の肩をポンポンと叩く。


 なんでだ? 防御力がこの中で1番高くて、動きやすく、かつ魅力が300も上がるのだぞ。


 なんでハーちゃんが気絶するのだ!




 すったもんだの末、我らの水着は決まった。


 ハーちゃんは結局、我に感想を聞いてきたワンピースに決めたらしい。こうやって着た姿を見てみると、よく似合っていた。他と比べて露出が少ないのは、ハーちゃんの奥ゆかしさが詰まってるし、何より暖色系の色はハーちゃんが持つ暖かみを感じられる。素晴らしいチョイスだ。


「似合ってますよ、ハーちゃん」


「……る、ルーちゃんのエッチ」


 え? なんで??

 なんで、そんな赤くなりながら、我の方を見ているのだ。さっきの件をまだ引きずっているのか、ハーちゃん!


「次はあたいッスね! じゃ、じゃーん!」


 ネレムが選んだのは、ワンショルダー型の水着だ。如何にも大人の色香が漂う黒の水着だが、よく似合っている。ネレムは背が高く、モデル並みのプロポーションを持つからな。


「よく似合ってるよ、ネレムちゃん」


「そ、そうッスか?」


「ええ。とっても」


「なんかきちんと褒められると照れるッス」


 ネレムは顔を赤くしていた。


「でも、やっぱりルーちゃんが一番だよ」


「そうッスね。さすが姐さんっす!」


「むっ!」


 我が選んだのは、白のビキニだ。胸元がクロスしているデザインで、こっちもかわいいというよりは、大人っぽいのだが、ショルダーにリボンがついていて、まったくデザインとして可愛げがないわけではない。むしろ我もこのリボンが気に入って、このデザインを選んだ。防御力も〝2〟あるしな。


「用意は整ったわね。早いとこ、泳ぎに行きましょう」


 と言ったのは、ここまで出番がなかったエイリナだ。


 すでに水着に着替えていたのだが、学校指定のものを着ていた。


「エイリナ先輩は学校指定の水着でいいんですか?」


「夏季休暇でもエイリナたちが学生であることに変わりはないでしょ? むしろあんたたち浮かれすぎなのよ」


 おお。休暇であっても学生であることを忘れない。確かに見習うべきところはある。さすが先輩だ。やっとエイリナが先輩に見えたぞ。


「あれ? でも、エイリナさん。さっき水着を探してたよね」


「ハートリーの姐貴。察してあげてください。探そうにも、子ども向けしかなかったんスよ」


「う、うるさいわね。エイリナに似合う水着がなかっただけよ!」


 エイリナは必死に弁護する。

 だが、どうも我の目にはエイリナの水着がおかしいように見える。


「エイリナさん、もしかして水着を2枚重ねて着てませんか?」


「ホントだ。ショルダーのところ別の生地が見えてる」


「おい。舎弟。お前、何をしてるんだ?」


「ちょ! ちょ! ちょっと待って。な、何をするのよ~」


 結果だけを言うと、エイリナが着ている学校指定の水着の下から、かわいい熊が刺繍された水着が現れる。子ども向けの水着を借りたのだが、やはりデザインが幼稚すぎて、直前で変更したらしい。


「べ、別にいいでしょ。熊ちゃん、かわいいし。ぐすっ……」


「いや、私はいいと思いますよ。ねー、ハーちゃん」


「うん。とってもかわいいと思う」


「舎弟……。悪かったな」


「そ、そんな顔でエイリナを見ないで~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 エイリナが絶叫するのだった。



 ◆◇◆◇◆



 色々とあったが、海で遊ぶことには変えられぬ。さて、やっと海に入れそうだ。


 我は波打ち際に向かって歩き出したところ、そいつらはやってきた。


「ねぇねぇ。君、君! お兄さんと遊ばない?」


 そこに3人の男たちが立っていた。


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