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エピソードⅡ 私の道、あなたの道(後編)

『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻、

好評発売中です!


挿絵(By みてみん)

 ◆◇◆◇◆



 聖クランソニア学院襲撃事件は怪我人こそ出したが、死傷者は出なかった。

 一方で心の傷は深く、学院を後にした生徒も少なくないが、癒し回復させたのも我らが先輩聖女たちだった。なんと頼もしいことだ。我も卒業する頃には、人を肉体と心を癒やす立派な聖女になっているだろうか。


 学院が再開されたのは、襲撃事件から10日後のことだ。

 暗い空気が漂っているかと思ったが、久しぶりの登校で10日ぶりに会う友人も多く、通学路はいつも以上に華やいでいた。


「おい。あれ、ジャアクだ」

「お咎めなしってのは本当のことかよ」

「学院の上層部はジャアクの言いなりって話だ」

「自分の顔をした襲撃者を、容赦なくぶっ叩いていたらしい」


 どうやら通学路がいつも以上に賑やかなのは、我の噂にも理由の一端がありそうだ。真実を話す分にはいいのだが、噂に尾ひれがついてて、あることないことまで広まっている。我は自分に対する風聞を払拭するため、努力を惜しまず行動しているつもりだが、日を追う毎に悪くなっているのは気のせいなのだろうか。


「つまらない噂……。ルブルいなかったら、今頃死んでいたっておかしくないのに。あなたたち、よくそんなことが言えるわね」


 一瞬強い風が巻き起こる。

 通学路の真ん中に、小さな少女が腰に手を当て立っていた。

 黒髪を揺らし、周囲に視線を放っている。鋭い目つきを見て、生徒たちは顔を青くすると、そそくさと校舎の中に入っていった。


「まったく……。喉元を過ぎたら忘れるんだから。貴族って、どうしてこう噂が好きなのかしら。あと、あなたもあなたよ。少し言い返したらどうなの」


「え、エリアナ……先輩…………?」


 思わず語尾にクエスチョンを着けてしまったのには理由がある。

 まず髪だ。長く腰まで届いていた艶やかな髪をバッサリと肩口まで切っていた。

 それでも、その愛らしさは微塵も揺らいでいないのだが、むしろさらに増しているような気がする。先輩と言ったものの、その言葉に自信が持てぬぐらい、童のような顔をしていた。


 しかし、我がもっとも気になったのは髪型などではない。


「何? エリアナに文句でもあるの? 折角かばってあげたのに」


「それはいいんですけど……。その恰好は一体?」


 エリアナは聖騎士候補だ。

 だから学院にいる時は、聖騎士候補の学生風を着ている。

 ところが今日、エリアナの服装はいつもと違っていた。

 我ら聖女候補生の制服を着ていたのだ。


「転科したんだって」


「一からやり直すそうですよ、ルブルの姐さん」


 ハーちゃんとネレムが、悶着を起こしていた我らの方にやってくる。


「て、転科?」


「元々聖騎士ではなく、聖女になりたかったそうです」


「周りの推す声が多くて、仕方なく聖騎士候補になったんだって」


「ええええええええ!」


 なんと! さすがの我も驚きだ。


「聖剣使いは? 『八剣(エイバー)』はどうするのですか?」


「聖剣使いは降りなきゃダメだと思うけど、『八剣(エイバー)』は続けるつもり。そもそもレオハルトが作った組織で、学校とは関係ないし。特に聖騎士とか、聖女とか関係ないの。だから、ルブルも気が向いたら入るといいわ」


「は、入りません! でも、突然どうして?」


「あなたのせいでしょ?」


「私の??」


「ズルい! エリアナも自分のやりたいことをやりたい! って思ったら、転科願いを書いてたの。だからあなたのせい」


 なんと我が儘な……。

 我も相当我が儘な方だと自覚はあるが、エイリアなかなり()の強い娘らしい。


「そういうわけだから、同じ聖女候補生で1年生同士、仲良くしましょ。お姐さま(ヽヽヽヽ)


「お、お姐さまって……」


「ダメなの? あなた、そこの部下に姐さんって呼ばせてるじゃない」


 ネレムの奴、また余計なことを吹き込んだな。


「一応あなたは私の先輩なわけだし。――って、ネレムは私の部下ではなくて、お友達ですよ!」


「身体はそうでも、魂はエリアナなんかよりずっと年上なんだから別にいいじゃない。……ねっ! お・姐・さ・ま」


 ボブの黒髪を揺らし、悪戯好きの子どもみたいに笑う。

 我を慕うものが現れたことは喜ばしいことだ。

 だが、こんな小悪魔みたいな妹を望んだわけじゃないのだがな。


 やれやれ……。


まだもう少し続くんじゃぞ!



9月12日発売の「おっさん勇者は鍛冶屋スローライフはじめました」単行本4巻と、「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」のコミカライズもよろしくね。


挿絵(By みてみん)

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