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第69話 各々の決着

☆★☆★ 第2巻 8月25日発売 ☆★☆★


「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」第2巻

ブレイブ文庫より発売されます。

ゲーマーズ、メロンブックスでは、書き下ろしSSリーフレットが付いてきますので、

ぜひよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 ◆◇◆◇◆ 学院中庭 ◆◇◆◇◆



 講堂で激戦が繰り広げられる中、学院の中庭で勃発したシルヴィvsバーミリアとカタギリの戦いは、未だに決着がつかず続いていた。『八剣(エイバー)』第三席、仲間の間では裏の副官などと呼ばれる彼女は、2人の元聖騎士候補相手に善戦している。


 元々シルヴィが持つレプリカ【天使の水刺し(アクアリンネ)】は聖剣でありながら、自己回復ができ、結果的に保有者に高い継戦能力を与える。こういった時間稼ぎはシルヴィと【天使の水刺し(アクアリンネ)】のコンビにとって、1番力を発揮できるシチュエーションなのだ。


 しかし、相手は男の元聖騎士候補2人。1人は『八剣(エイバー)』にも選ばれた。しかも2人の手には聖剣のレプリカが握られている。いくらシルヴィと、彼女が持つ聖剣のレプリカにとって有利な戦場であっても、初撃を加えた頃に比べれば明らかに身体の動きが鈍っていた。


 少し離れた位置から先輩の奮戦を見ていたテオドールは、側にいたイザベラに話しかける。


「イザベラ、俺のわがままを聞いてくれ」


 切り出した時、イザベラにはテオドールが何をしようとしているかわかったらしい。「ダメ」というように剣を握る手を包み込むと、頭を振った。


「ダメです、王子。傷はふさがりましたが、体力が戻ってません。それにまた傷が開く可能性もあります」


「1回……。一振りだけでいい。俺に剣を振る力……」


「王子……」


「もう1度、君を守らせてくれ」


 イザベラとテオドールとの付き合いは幼少期にまで遡る。

 長い付き合いの中、イザベラはテオドールに何度も我が儘を言って困らせてきた。

 でも、テオドールからイザベラに何かを求められたことはない。いつも笑って許してくれる。そんな優しいテオドールが初めて口にした我が儘を聞いて、イザベラは深く頷く。


 自分の魔力が許す限りの回復魔術をテオドールにかけるのだった。





「ぐっ!!」


 シルヴィは胸ぐらを掴まれると、近くの噴水に叩き込まれた。

 吹き出した噴水の水を頭から浴びながら、入ってくる水を吐き出す。

 その前にカタギリは力を込めると、いよいよシルヴィの首を絞めにかかった。

 力が緩み、シルヴィの手から【天使の水刺し(アクアリンネ)】のレプリカがこぼれ落ちる。


「随分粘ったが、所詮は女だな。オレの敵じゃない。おそらくエリアナか聖騎士の応援を待っていたんだろうが、当てが外れたな。悪いが、オレのパトロンはそんじょそこらの聖騎士なんかじゃ相手にならねぇんだよ」


「か、カタギ……リ……」


「まだそんな目をする力があんのか? 末恐ろしいが嫌いじゃないぜ。どうだ、オレの恋人にでもなるか? お前みたいな童顔女は好みじゃねぇけどな。一生オレのベッドの横で鎖に繋いで飼ってやるのも悪くねぇ」


「変わりましたね。昔はもっと……」


「うるせぇよ。オレを切り捨てたお前らが、オレの昔を語るんじゃねぇよ!」


 カタギリが激昂すると、細い首を折らんばかりの力で絞め上げる。

 シルヴィの白い顔が一気に青くなっていき、強い意志が宿る瞳から光が消えていく。

 絶望と死に向かう昔の仲間の姿を見て、カタギリは愉快げに笑った。


 悪魔的に顔を歪ませるカタギリを見て、バーミリアは肩を竦める。


「サドだな、ありゃ。まあ、俺様も人のことは言えないが……ん?」


 足音に気づいて、バーミリアは振り返る。

 立っていたのはテオドールだった。

 手には剣が握られている。


「おいおい。王子様、まだやるのか? 病み上がりも病み上がりなんだろ? 足だって、プルプル震えてるじゃねぇか」


 バーミリアはテオドールの足を払うと、あっさり転んでしまった。

 それを見て、バーミリアは腹を抱えて笑う。


「全然ダメじゃねぇか。生まれたばかりの子牛の方がまだうまく立てるぜ」


 もう諦めただろうと思ったが、テオドールはまた立ち上がる。

 再び剣を構えると、切っ先をバーミリアに向けた。


「来い。バーミリア……。決着を着けよう」


「何が決着だ!! てめぇはもう死んだも同然なんだよ!!」


 バーミリアは聖剣のレプリカを上段に構える。

 薪でも割るようにテオドールの頭上に落とそうとした。

 対するテオドールは受けるわけでも、懐に飛び込むわけでもない。

 持っていた剣を地面に突き立てた。(から)の手となった腕を、まるで親戚の子どもでも撫でるかのように緩やかに動かす。手はバーミリアの持つ剣の柄に添えると、そのままくるりと回転させる。聖剣の軌道が変わり、その切っ先はバーミリアの足先を貫いた。


「いったぁぁぁああああああああああ!!」


 バーミリアは慮外の痛みに悶え苦しむ。

 すぐに【天使の水刺し(アクアリンネ)】のレプリカを使って回復させようとしたが、遅かった。顔を上げた時、野獣のような目をしたテオドールと目が合う。その手には剣が握られていた。


 シュッ!!


 バーミリアの首が胴体から落ちる。

 本人は「へっ」と間抜けな声を上げたが、それが今際の際の言葉となった。

 亡骸となったバーミリアを見ながら、テオドールは剣を握りしめる。


「ルブル師匠、技を使わせていただきました」


 最後に頭を下げるのだった。


9月12日発売!!

『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』コミックス4巻も、

ご予約よろしくお願いします。

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