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第65.5話 波乱のパーティー(後編)

☆★☆★ 8月25日 第2巻発売 ☆★☆★


ブレイブ文庫で書籍の続刊が発売されます。

イラストレーターは、Vturberなどのデザインをされているふつー先生です。

よろしくお願いします。

「ルーちゃん! あと10分!!」


 ハーちゃんの声を聞いて、我に返った。

 しまった。少々昔を懐かしむあまり、勝負に集中できてなかった。

 残り時間はわかったが、今エリアナとの差はどれぐらいだ?

 ちょうどその時、イザベラの実況が入る。


「さあ、泣いても笑ってもあと10分。ルブルさんが30枚。エリアナさんは31枚。ここでエリアナさんが1歩リード」


 なんと! 我が遅れをとっているだと。

 くくく……。なんとマヌケなのだ、我は。

 敵に塩を送って、負けていれば世話ないではないか。


 ここから挽回したいところだが、すでに胃に来てる。

 魔族の身体ならいくらでも食べられるが、今我が魂の器となっているのは人間の身体だ。自ずと限界がある。

 しかし、それは向こうも一緒。体格差が出ぬように、我の回復魔術によって胃腸内環境を整えておいてやったが、ただお互いのコンディションを同等(イコール)にしたに過ぎない。


 言い訳などできない。いや、そもそもするつもりもない。


「おおおおおおおおおおおお!!」


「なんと! ルブルさんが吠えたぁぁぁああああ!!」


「やあああああああああああ!!」


「おおっと! 負けじとエリアナさんもペースを上げる。どうですか、解説のグリフィルさん」


「精神と精神のぶつかり合いね」


「精神と精神?」


「意地と意地のぶつかり合い。負けたくないって気持ちで食べてるわ、あの2人!!」


 そうだ。大事なのは気持ち。最後にものいうのは、相手を打ち負かしたい、上回りたいと思う気持ちだ。肉体が精神を超えれば、たとえ腹がはち切れようとも食べることができる!



 それまで!!



 ゴーン、と銅鑼が鳴り、大食い対決が終わる。

 瞬間、エリアナは椅子と一緒に後ろに倒れた。

 大きく腹を膨らませ、口を押さえてモゴモゴとまだ何か咀嚼している。

 一方、我は前に倒れた。常に前のめりであることが、我の信条である。負けようが、勝とうが我の気持ちは切れていない証拠だ。


「る、ルーちゃん大丈夫。胃薬だけど飲める?」


 ハーちゃんが我を介抱してくれる。

 相変わらず我が1番の友は優しい。

 なんだか無性に泣きたくなってきた。

 まだ勝負はついていないというのに。


「エリアナちゃん、大丈夫?」


「だい……むぅ……」


 エリアナはシルフィに開放されながら、青い顔をしている。

 1人はテーブルに突っ伏し、1人はダンスホールの床で大の字。

 2人の少女があられもない姿を晒していたが、誰も咎めることはなかった。


「すげぇ戦いだったな」

「俺、なんか感動した」

「エリアナさんの印象が変わった」

「それならジャアクだって」

「余興で、あんなに一生懸命になれるか?」


 一応、少しは我の印象が良くなったらしい。

 しかし、問題は勝敗だ。


 皆の興味はすでに我らが食べた皿に向かっていた。

 そしてついにイザベラから枚数が告げられる。


「それでは枚数を発表しますわ。ルブルさん46枚」


 どよめきが起こる。

 30分の時点で我の皿の枚数は30枚。

 残り10分で、16枚食べたことになる。

 まさに限界を超えた大食いといえよう。


 結果を聞いて、妙な期待感が高まる。

 すると続けて、エリアナの枚数が告げられた。


「エリアナさん――――」



 ◆◇◆◇◆ テオドール ◆◇◆◇◆



 テオドールは講堂へ急いでいた。


「こんな時に限って、公務で遅れてしまった。イザベラ、怒ってるかもな」


 ようやく学院の門の前にたどり着く。

 守衛に生徒証を見せようとした時、テオドールは異変に気づいた。

 校門前の守衛室を覗き込むと、いつも在中している聖騎士の姿が見えない。

 何か嫌な予感がした。


「マサカズ……」


『ここに……』


 忽然とテオドールの肩にとまったのは、1尾のフクロウだった。

 少々変わったフクロウで、頭の上にサイズに合った兜を被っている。

 その背中には、テオドールの剣が納まった鞘を帯びていた。


 テオドールはマサカズと呼ぶ使い魔の背から自分の剣を抜く。


「マサカズ、上空から索敵を……」


『わかりました』


 主人の言うことを素直に聞くと、マサカズは闇夜に飛び立つ。

 一方、テオドールは鼻腔を突く血の匂いを辿った。

 ほとんどの生徒はどうやら講堂にいるらしい。その方向からはわずかに歓声にも似た騒がしさを感じる。それを除けば、静かな夜だ。静かすぎるほどに。


『主人よ』


 しばらくしてマサカズから報告がくる。

 それを聞き、現場に急行した。


「あ?」


 声を上げたのは、テオドールではない。

 撫で斬りにされた聖騎士の頭を掴んだ大男だった。


 テオドールは慌てて構えを取る。

 大男は意識のない聖騎士を放り投げた。


「なんだ? まだ雑魚が残ってたのかよ?」


「お前は?」


「あ? お前、どっかで見たことがあるぞ?」


 大男はテオドールのことを忘れていたようだが、テオドールは大男のことを覚えていた。忘れようにも忘れられない。その顔はイザベラの顔の隣に、いつも自分をほくそ笑んでいたからだ。


「まさかこんなところで出くわすとはな、バーミリア・ザム・フロルティア」


 テオドールの闘志は、その瞬間炎となって燃え上がった。


☆★☆★ 直近、更新 ☆★☆★


シーモアにて先行配信中の『宮廷鍵師、【時間停止ロック】と【分子分解リリース】の能力を隠していたら追放される』の最新話(8、9話)が更新されました。

未読の方はぜひよろしくお願いします。

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