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恋愛記録ファイル(学生時代編)

運命の人!?

作者: 涼

私が専門学校に入学して数ヶ月経った冬のこと。私の家に後輩である吉井裕彦とその友達である藤原武信が訪れた。二人は「ナンパにいかないか?」と私を誘ってきた。この二人は根っからの女好きで、時間さえあればナンパにいっていた。私はナンパに興味はなかったが、この二人がどうやってナンパするのか、どんな女の子が付いてくるのか気になっていた。ちょうど恋愛心理学を学んでいた最中だったので見物しようと思って一緒について行くことにした。


ナンパの場所となったのは私の家から車で10分ほど走った市街地で、私を含まない二人組の女の子を探していた。最初の数組は失敗していたようだが、2時間ほど過ぎた頃、見た目が幼い感じの二人組の女の子を発見した。裕彦はすかさずその二人に話しかけていった。聞くところによると二人とも16歳で、一人は茶髪でクセのあるセミロング、すこしぽっちゃり系で垂れ気味の目、遊び人風の雰囲気をした和実という女の子。もう一人は黒髪でロングヘアー、小柄で目が大きく可愛らしい感じだがどこか淋し気の表情をした智美という女の子であった。二人の女の子と会話をしながらファーストフード店に入った。裕彦と武信は適当な話をして笑いをとったりしていたが、私はひとまず黙っておくことにした。何度か智美と目が合っていたのだが、その日は一言も話すことはなかった。最後に連絡先の交換をすることになったのだが、私も二人の女の子から名刺を渡された。当時、ゲームセンターなどで個人名刺を作るのが流行っていたのだ。


年が明けた正月のこと・・・


私は智美の存在が気になっていた。何度か目が合っていたからかもしれないが、智美の目は何かしら私と共通するものがあるように感じていたからだ。私がいただいた智美の名刺には当時流行っていた携帯電話の番号が書いてあった。私は突然、智美と話してみたいという衝動にかられた。そして、名刺に書いてある携帯電話の番号にかけてみた。ところが何度コールしても電話にでない。突然、知らない番号から電話がかかってきているわけなので仕方のないことだと思っていた。


しかし、その日の午後のことだった・・・


智美から電話がかかってきたのだ。私は本当に電話がかかってきたので少し動揺していた。


「もしもし、着信があったのですが誰ですか?」

「えっと、前に裕彦と一緒にいてぜんぜん話さなかったんだけど、覚えてるかな?」

「あー!もしかして全く話さなかった人だよね?覚えてるよ」

「その、あの時からなんとなく気になってたというか・・・だから話してみたいと思って電話したんだけど大丈夫だったかな?」

「それは大丈夫だよ。ワタシもね、あなたのことがちょっと気になってたの」

「俺のことが気になってたって?」

「うん。だってあの時全然話さなかったし、それに裕彦君があなたが何を考えてるかわからない不思議な人って言ってたから興味があったの」

「あいつ、そんなことを話したのか。あの時話さなかったのは、俺はナンパをただ見たかっただけの見物人だったからだよ」

「そういうことだったんだ。でも、どうしてワタシのことが気になってたの?」

「うーん、目かな。どことなく俺に似てる部分を感じたから。ところであれから裕彦とは会ったの?」

「年末に二人で会ったけど、もうそれ以来、連絡はこないね」


そこから智美との会話が盛り上がってきた。


「俺はクリスマスイベントとかあまり好きじゃないんだよね。みんな雰囲気に流されてるみたいな感じじゃない?」

「それわかる!ワタシもクリスマスとかどうでもいいって思う。街とか歩いてると自分は違うって思っちゃう」

「もしかして智美さんって流されないタイプなんじゃない?俺もそうだけど、みんな同じ意見でも自分は違うって思ったら反発するタイプなんだよね」

「そうそう。ワタシもそんなことに流されないタイプだよ。あと智美って呼んでくれていいよ」

「じゃあそう呼ばせてもらうよ。そういえば裕彦だけど、あいつは物事を深く感がない軽いタイプだよ」

「ワタシもそれ思ってた。裕彦君って何も考えてないんだなあって思ってた」


こういう会話をして気づいた時には4時間が経っていた。


「あなたと話しててわかったけど、裕彦君が不思議な人って言ってたのわかる気がする。たぶんあの人はあなたのこと理解できないと思う」

「智美は理解できてるみたいだったよね?」

「だってワタシの考え方とすごく似てるんだもん。同じと言ってもいいよ」

「そこは俺も話しててびっくりしたよ。智美のその年で俺の話がわかるなんてすごいよ!」

「そうかな?でもありがとう」

「あっ!もうこんな時間になった。今日は話せて楽しかったよ。また電話してもいいかな?」

「すっごい話したね。ワタシも楽しかったし、また電話してきてほしいな」


智美との初めての電話はこれで終わった。


その後、何度か智美と電話で話をすることが増えた。話していくうちに感性が私と似ていること、意見や考え方も非常に近いことがわかった。自分と同じような異性が世の中にいたことで、智美と私はお互いに冷静さを失っていった。まさに運命の人なのか!?と思えるくらい。最初に「二人は運命の出会いだ」と言いはじめたのは、私が通っていた学校のクラスメイトであった阿部康宏だった。


「気持ちの悪いくらい似ている人なんて一生のうち出会えるかわからないくらい貴重だよ」

「康宏は貴重な人って思うんだ。俺、今後どうすればいいと思う?」

「電話じゃなくて一度二人で会って話してみるのはどう?」

「二人で会って話すか・・・誘ってみようかな」


たしかに電話でなく実際に会って話をするのが次の段階だと私は思った。


1月下旬、ついに私は智美と二人で会うことになった。ぶらぶらと少し遠いところをドライブして観光地に行くことにした。今まで電話でかなり話をしていたからなのか、初めて二人で会ったにもかかわらず何の違和感もない。それにお互いに遠慮すらしない。二人はずいぶん前からの知り合いだったかのように感じる。実際に会って話をしていても意見は一致するし、なによりも一緒にいて楽しい。その日の夜、智美は私の部屋に来た。


「もうかなり遅くなったけど、家の近くまで送って行こうか?」

「今夜は一緒に過ごしてもいい?」

「え?それは・・・別に構わないよ」


二人は一夜を過ごすことになった。当然、肉体関係にまで発展した。結局、次の日の昼間まで智美と一緒にいることになった。智美の家近くまで車で送る途中、私は話しかけた。


「智美と付き合ってないけど、昨夜のことは後悔はしていないよ」

「ワタシも後悔なんてしていないよ。また二人で会いたいな」


ところで、智美には海外留学している賢二という彼氏がいた。ところが智美に何の相談もなく勝手に留学して、すでに3ヶ月も音信不通の状態だった。智美にとって勝手に留学した賢二との関係をハッキリさせたいが、連絡先もわからず音信不通で「別れるにも別れられない状態」だった。私は智美と賢二の関係はすでに終わっていると思っていた。そして智美は「私を捨てた賢二とはもう会わないし別れる」と私に断言したのだ。そして私と智美は付き合うことになった。


私は智美を年下扱いせず、いつも対等の立場で話をしていた。私とほぼ同じ考え方だったということもあったのか難しい話をしても「わからない」とは言わない。また、智美は私のクラスメイトである康宏の恋愛相談にも乗っていた。


「康宏君、恋愛で楽したいと思ったらそこで終わりだと思うよ」

「智美さん、結構バシッと言うんだね」

「だって、素直な気持ちにならないと自分の首を絞めることにならない?」

「それはそうだけど、厳しいなあ」


とても16歳とは思えない厳しい発言だった。そんな智美に私の心は強烈に染まっていった。しかし、だんだん私は智美との関係に疑問を抱いていくことになる。そして、私は二つのことを思い始めたのである。一つは智美と違う部分が見えてきたが、そのことに対して否定的になっている自分がいること。もう一つはお互いの意見が一致して共感しているのはいいが、言葉にしなくてもわかってしまうので意見のぶつかり合いがないということ。つまり何か物足りなさを感じていた。そもそも智美との関係はどこに向かっているのかわからない。このまま付き合い続けることに意味はあるのだろうか?


そんな疑問を持ち続けながらも智美と付き合ってから2ヶ月半がたったある日、突然、智美の元彼氏である賢二が1週間後に帰国するということを知った。智美は前々から知っていたようだが、私に気を遣って言わなかったのである。私は智美と賢二の中途半端な関係をハッキリさせたいと思った。私は智美にバシッと言った。


「賢二君とちゃんと話をして二人の関係をハッキリさせてきてほしい」

「わかった。賢二君と会って話をつけてくる」

「俺達の関係をこれから続けていくためにも、曖昧な形にしないようにしてね」

「うん。ハッキリさせてくる。だから信用して待っていてね」


それから1週間後、智美は話をつけるため賢二に会いに行った。私は智美の言葉を信じていたし、話がついたら連絡してくるようにとも言っておいた。ところが、その日の深夜になっても智美から連絡がこない。電話をかけても出ない。次の日も、そのまた次の日も。そして音信不通になって4日目になった夜、ついに智美から電話がかかってきた。電話の向こう側であきらかに泣いているようだった。


「もう・・・あなたとは会いたくないし、話もしたくない・・・だからさようなら」


そう言って智美は一方的に電話を切った。それ以来、智美との連絡は途絶えた。賢二と会って気持ちが整理できず悩んだ末の結果だったのは明白だった。私より賢二のほうが魅力があったんだろうと思い込むより仕方がなかった。まして私と同じ考え方の持ち主が選んだ道なのだ。裏切られた気分でもあったが、諦めるしかなかった。


それから2週間後、私はもう智美のことが心から消えそうになっていた。そんな日の夜、突然、智美から電話がかかってきた。


「智美だけど、この前はあんなこと言ってごめんなさい。怒ってる?」

「怒ってはいないよ」

「賢二君と会ってね『もう一度やり直してほしい』と言われたの。それでワタシ、すごく悩んだ」

「そうか、悩んでいたのか・・・」

「さんざん悩んで、やっぱり賢二君とよりを戻そうって思ったの」

「智美は俺を選ばなかったってことだね?」

「そうなんだけど、でも賢二君との関係はうまくいかなかった。だからもう完全に別れちゃったの」

「そういうことか・・・でも、なんで今更そんな報告を俺にするの?」

「またあなたと会って話がしたいの。もう賢二君とはちゃんと別れたから大丈夫」


私はここで一瞬戸惑ったが、もう智美とよりを戻そうとは思わなかった。


「智美、俺はもう嫌なんだ。だから二度と連絡してこないでほしい」


それを聞いた智美は悲しそうな声で「わかった」と答えて電話を切った。これで本当によかったのかはわからないが、智美との関係に終止符を打った。


今考えるとこの時の私はまだまだプライドが高かったのかもしれない。私の本当の気持ちは智美が好きだったが、こうするしかなかった。ここで智美とよりを戻したりすると、また同じようなことが起こる可能性はある。私は心のどこかでそんな疑いを持ってしまうだろう。私は裏切られたことが許せなかったわけではない。もし、ここで私とよりを戻した場合、智美は一度裏切ってしまった罪悪感を抱き続けることになるだろう。そんな関係を続けていくのはお互いに辛いと思う。


智美は賢二が留学してからというもの、淋しさゆえに遊び人の和実と街中をフラフラしていた。ナンパされた数人の男性に話を聴いてもらったり、癒されようとしていた。しかし、智美の話を真剣に聞くような男性はおらず、体だけの関係で終わっていた。そんなことを繰り返しているうちに智美も自分自身を見失っていたようだ。そんな中、裕彦達にナンパされて私と出会うことになったのだ。


その後、私は心理学や恋愛テクニックなどを勉強して自分らしい恋愛テクニックを確立させていくことになる。

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