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夢戻リダイアル  作者: やまは
バック・トゥ・ザ・ドリーム
1/63

プロローグ 夢と現実

 夢は二つある。


「わたし、おとうさんのおよめさんになるー!」


「――ああ、でもやっぱり、おひめさまがいいー!」


「――でもでも、けーきやさんもいいなー」


 夢とは変化するものである。


「将来の夢は、美容師です」


 夢とは現実を連れてくる。


「夢? 夢なんてないよ。今更、夢見たって何になんの? もう遅いって」


 彼女はとうに諦めていた。

 彼女にとって夢とは所詮、その程度の夢でしかない。だが、夢とはそういう一面を持ち合わせたものでもある。

 夢があるから頑張れる、などとほざくのは、夢を叶えた一握りの選ばれし者だけだ。普通は砕け散って爆散する、爆弾のようなもの。

 時限爆弾。いつかは悟る。

 

 夢は見れば見るほど辛いだけの代物でしかない。そして悟る。残されたのは現実ただ一つ。いくら着手しても、その先が見えないという途方もない黒の絶望。そんな世界を抗って生きていく。この先、彼女は何十年と。

 それでも、一筋の光はある。それもまた夢だ。

 とても小さな夢。小さな喜び。小さな楽しみ。小さな感動。些細な夢へと変化して、それを叶えて、叶えて、死んで行くのだ。


 だが、誰しもが思うだろう。本音ではもっと大きな夢を見たい。ずっと夢を見ていたい。

 もしも、夢が叶うのだとしたら――。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――続く。


「……は? なにこの小説。夢、夢って、うざっ! ポエムか! 死ね!」


 自分で選んだ小説にふてくされながら、彼女はそのウィンドウを閉じた。そのままベッドへとダイブ。仰向けになり、バタバタと足を動かす。


 彼女もまた、夢を見ていた少女の一人だ。ただ、有り余る時間をどう潰すか、今の彼女にはそれしかない。

 当然、夢などあるはずがない。あるとすれば、彼女の名がそれを冠している。


 ――『ひいらぎ夢美ゆみ


 自分が見た夢は一体何だったのか、それを彼女は自分自身へと自問するが、答えは訪れない。それはもう、忘れてしまったものだから。

 それから夢美にはもう一つの夢が訪れた。それは、暗闇と共にやって来る、空想の色を持った自分だけの世界である。


 ――夢とはあまりにも残酷なものである。

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