表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

実家へ帰省?

「おい、まだかよ?」


俺は、女房の背中に向かって言った。


どうして女という奴は支度に時間が掛かるのだろう。


「もうすぐ済むわ。そんなに急ぐことないでしょ。…ほら翔ちゃん、バタバタしないの!」


確かに女房の言うとおりだが、せっかちは俺の性分だから仕方がない。


今年もあとわずか。


世間は慌しさに包まれていた。


俺は背広のポケットからタバコを取り出し、火をつけた。


「いきなりでお義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」


「なあに、孫の顔を見た途端ニコニコ顔になるさ」


俺は傍らで横になっている息子を眺めて言った。


「お待たせ。いいわよ。…あら?」


「ん、どうした?」


「あなた、ここ、ここ」


女房が俺の首元を指差すので、触ってみた。


「あっ、忘れてた」


「あなたったら、せっかちな上にそそっかしいんだから。こっち向いて」


「あなた…愛してるわ」


女房は俺の首周りを整えながら、独り言のように言った。


「何だよ、いきなり」


「いいじゃない、夫婦なんだから」


女房は下を向いたままだったが、照れているようだ。


「そうか…、俺も愛してるよ」


こんなにはっきり言ったのは何年ぶりだろう。


少し気恥ずかしかったが、気分は悪くない。


俺は、女房の手を握った。


「じゃ、行くか」


「ええ」
































【解説】

ある家族が一家心中する話。


「いきなりでお義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」→既にあの世へ行ってしまった義父と義母が、自分たちもあの世へ来たらビックリしないだろうか。


「俺は傍らで横になっている息子を眺めて言った。→息子(翔ちゃん)は、さっきまでバタバタしていたが、母親の手で殺されたため、静かに横になっている。

バタバタしていたのは、殺されたくなかったから。


女房が俺の首元を指差すので、触ってみた。「あっ、忘れてた」→首を吊るための縄を首にかけるのを忘れていた。


「じゃ、いくか」「ええ」→こうして家族は心中。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ