同窓会
先日、中学の時の同級生Bから同窓会の案内状が送られてきた。こう書かれてあった。
「8月○日、K温泉のN旅館の大広間で
S中学校平成×年卒×回生の同窓会を開催いたします。この機会に里帰りして旧友たちと酒を酌み交わし昔話で盛り上がりましょう。担任のA先生もご出席頂く事になっていますので、お誘い合わせの上是非お越し下さいませ。当日は日本では手に入らない酒やソフトドリンク、豪華フグ料理のコース、そして皆様が大変驚くような演出を用意してお待ちしています」
僕は忙しいので参加するかどうか悩んだが、Bから「返事来てないんだけど参加してくれるか?」と電話でしつこく言われたのとフグ料理が食べられるという事で参加することにした。
幹事のBは中学時代ひどいいじめにあっていた。女子生徒の前でパンツ脱がされたり、無視されたり、暴力を受けたり、パシリにされたり…等、あの時Bは先生に報告したけど何も取り合ってくれなかったらしい。
でも友人から聞いた話だけどその後Bはそれをバネに中学卒業後難関の高校・大学の理学部に進学して化学薬品の取扱免許を取得したらしい。更に調理師の免許も手に入れたらしい。そして大手の化学薬品を扱う会社に入社してトップクラスの営業成績を誇っているという。彼はいじめにあっていたけど今や同窓会を開くまでになった。立派になったもんだよ。今や同級生の鑑だよ。僕の同級生もBをいじめた事は十分反省しているし、一緒に行こうと電話で言ってきた。Bとの20年ぶりの再会を心待ちにし故郷に里帰りした。
そして同窓会当日。Bの熱心な誘いもあってかほぼ全ての同級生がやってきた。昔話に花を咲かせ、酒も進み盛り上がった。でも案内とは違うところもあった。
同級生D「何だよ、普通のビールやジュースじゃないか。フグ料理は出たけど刺身やフグチリだけだし」
同級生F「事情があって急に手に入らなかったんじゃないかな。仕方ないよ」
同級生Y「驚くような演出もないよね」
同級生U「外でポンとかすかに音がしたけど…花火じゃないの?花火だったらこの季節どこの家でもやってるし」
僕「先生、それよりもBが来てないですね」
A先生「急な仕事が入ったらしくて来られなくなったらしい」
同級生R「そっか残念だな…せっかく楽しみにしてたのに。そういやBの家って旅館の近くだったっけ」
こうして、同窓会は無事お開きとなった。しかし次の日、僕らは朝刊の一面を見て愕然としたのは言うまでもない。
「Bよ…お前まだ…」
【解説】
Bは同窓会の会場でいじめの復讐として同級生を皆殺しにしようと企てた。『日本では手に入らない酒やソフトドリンク』と伝えたのは毒を入れても気づかれないようにしたため。
『豪華フグ料理のコース』はフグの毒を混ぜ込むために普通のフグとは違う印象を与えるため。 B自身が自分でフグを調理するため『調理師免許』を取得した。
同窓会に参加させるためにしつこく電話したのは一人残らず殺そうとしたため。
しかし、『日本では手に入らない酒やソフトドリンク』ではなく、『普通のビールやジュースじゃないか。フグ料理は出たけど刺身やフグチリだけだし』となったのは、Bがすでに捕まってしまい、飲み物を押収され、フグの調理もできなかったから。
『外でポンとかすかに音がしたけど』この音はBが作った時限爆弾が爆発した音。この時限爆弾のために化学薬品の取り扱い免許を取得した。
『皆様が大変驚くような演出を用意してお待ちしています』この演出というのが同窓会の会場を爆発すること。しかし、会場の外(Bの家が近くだからBの家?)に爆弾を置いたままでBが捕まったため、そのまま爆発してしまった。
この話は実際にあった『同窓会殺人未遂事件』が元らしい。