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同棲というのかこれ?

 本人が、言ったように料理は上手かった。味付けは地中海料理に近い感じがする。


「美味いな。料理人としてやっていけるぞ。授業料を貸してやるから料理学校に行って資格を取ってみないか」


「それで、『つけ』を増やそうというの? け・だ・も・のw まあ、褒めてくれて嬉しいわ。季ノ国の料理が認められたと思うと誇らしくなる」


 話が途切れたところで、俺は別の話題を持ち出した。


「少し、話辛いんだが、明日の予定で一つ話がある。明日は、ほぼ丸一日、取材のため家に居ない。心細いとは思うが、我慢してくれないか」


「家の壁は厚そうだけど、襲撃とかされた場合は、どうすれば良いの?」


 いちいち、発想が殺伐としているな。


「誰が来ても、玄関のドアを開ける必要は無い。外に受け取りボックスがあるから、そこに入れて貰って。サインを要求されたら、自分は単なる客人で受け取りは出来ないと言えば良い。

 玄関を蹴りつけるとか、武器を持っているとか、塀を乗り越えたとか、そういうケースは、躊躇せずに110番して、ここの住所を言えば良い。

 ホームセキュリティーの契約もしているから、塀を乗り越えて来たとかの場合は、警備会社と警察の両方から人が来ると思う。

 あと、サバイバルナイフの場所は後で教えるし、本当に心配なら防刃服とかもある」


「警備会社とか警察とかは、何故信用できるの? 本当は有力者なの?」


 そこからかよ⁉


「警備会社は、金だ。俺が金を払っている。金の分の仕事はして貰う。警察は、うーん、四捨五入して言うと、ボスにそう命じられているからだ。街中での凶悪事件に対処出来なければ、ボスの覚えが悪くなる」


「少し、嘘の匂いを感じるわ。本当に大丈夫なの?」


「ああ、大丈夫だ。『何故信用できるか』という問いに対する答えが、上手く説明出来なかったから、端折っただけだ。本当は、『当たり前だろ、それが職責なんだから』と言いたかったけど、伝わるか自信がなかったので、省略した。」


 幸姫(こうき)が眉根を寄せている。やはり、上手く訳されないか……


「うーん、お花畑の国の魔法とでも思ってくれよ。兎に角、大丈夫だ。どちらも真面目に対応してくれる」


 幸姫の真剣な疑問の眼差しは怖いな。


「若しかしたら、此処はマジ魔法の国で、強力なギアスを掛ける『職責』って大魔法があるって事なの? まあ、いいわ。ケダモノに賭けるしかないのだから。飲み込んで信用する。後で、サバイバルナイフの練習をさせて貰うわよ」


「後、掃除では、第二資料室は、手を付けなくて良い。と言うか、入ろうとするな。ヤバ目の資料を置く部屋で、無理に入ろうとすると、警備会社に通報が行く。対処を間違えると、物凄くヤバい」


 幸姫は、疑いの目で言った。


「何か、他の事も考えている。しかも、スケベな事」


 下手な隠しだては、不審を生むだけか。恥ずかしいけど仕方ない。


「後で、寝室にあるエロ本とエロビデオを運ぼうと思っただけだよ。そんなの見つけても、困るだけだろ」


「け・だ・も・の」


 …………


「それと、着替えは第一資料室にあるものを適当に使ってくれ。女性用の品も揃っていると思うが、足りなかったら、リストアップしてくれ、明日の帰りに買ってくる。

 うん? 何故女性用品があるのか不審か?

 女性誌の仕事もあるし、変装が必要な場合もある。何より、現物があった方が、リアルな小説が書ける。

 後、風呂とか寝室とかは、家を案内しながら説明する」


 そして、慌ただしく1日が過ぎていった。寝室に戻った俺は、今日得たネタをメモってから寝た。

 翌朝、幸姫は甲斐甲斐しく朝飯を作ってくれた。そして、掃除と洗濯の準備なのだろう。俺が出かける時には、襷掛けをしていた。和服でも無いのに? あちらの習慣なのだろうか? でも、仕草が可愛い。つくづく、タイプだ。


 その日は、ウキウキしながら猛烈な勢いで取材を進め、早め──といっても8時だが──に頼まれた買い物も済ませて帰宅した。勿論、先に帰宅の電話も入れている。


「凄く、嬉しそうですね。食事が美味しいってだけでは無さそうですが……まあ、機嫌が良いのは良い事です。出来れば、早めに食事と風呂を済ませて、常識を教えて欲しいのです。

 早く、外に出れるようになって、ケダモノ以外の人と知り合う機会を作りたいのです」


 うぅ、信用されていないって匂いがプンプンするな(T_T) でも、実際、早めに外に出れるようになって貰った方が良いや。


「勿論だとも、参考にと礼儀作法の本も買ってきたよ。あと、通貨の価値を把握してもらうために、値段表と初任給リストもある。違和感が無い服を選んで貰うために、ファッション誌も用意した。地理や法律の本もあるよ」


 幸姫の為になるだろうと頑張って色々買って来たんだ。気に入ってくれると嬉しいな。


「それも『つけ』にする積もりですか? ケダモノから、獣欲の匂いがプンプンします」


「嫌だなあ。純粋にプレゼントだよ。幸姫さんが、早く此方の世界に慣れる事を少しでも助けたいんだよ。

 喜び感謝して欲しいとは思うけど、『つけ』ではないよ。実際、別に幸姫さんが頼んだ訳じゃないでしょ」


「有難うございます。プレゼントは何時でも大感激です。そういえば、ケダモノは、何と呼んで欲しいの? 名前でも苗字でも呼びづらいので、悩んでしまうの」


「二人の時は、あ・な・た。と呼んでくれると嬉しいな。他の人が居るときは、カモフラージュの兄さんかな?」


「却下です。濃厚で邪悪な気配がしました。

 二人の時も、他の人が居るときも、カモフラージュに慣れるために兄さんにしましょう」


 うぅ、例え「兄さん」でも呼ばれると嬉しいな『ケダモノ』『ケダモノ』言われるよりは、ジーンと来る。


 そんな事を感じていたら。幸姫が汚物を見るような目で「け・だ・も・の」と言い放った。


次は「幸姫との攻防」です。


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