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同居する理由

暫く、二人の世界の違いの話が続きます。

「何が起きたかって部分は、俺も推測しか出来ていない。だから、先ずは事実の確認から始めよう。此処は、日本という国だ。此処にある地球儀のこの島国だ」


「地図を球にするのに何の意味があるの? 何処が地図の端か全く分からない。此処は、本当に随分と誤魔化しが多い国なのね」


 は⁉ そこからかよ。


幸姫(こうき)さんの世界は、どうなのかは分らんが。この世界──地球──は、ほぼ真球だ。だから、歪みのない世界全体の地図は、球になるんだ」


 彼女が凄まじい勢いで、俺の体全体を見回している。本当に、足先なんて何の為に見るんだろうか? 何かの(まじな)いなのか?


「さっき、この国では普通だって言ったわよね。この国では、誰でも地球儀を持っているの?」


「誰でもって程では無いが、学校に通うような子供が居る家庭では、一個位あっても不思議じゃないな」


「で、日本というのは、どの島なの?」


 ??説明聞いていなかったのか?


「そこの、赤く塗ってある島々だよ」


「…………信じたくない…………どれほどの広大な大国なの。それとも、殆どは無人に近い状態なの?」


 日本が、広大な大国?? 一体全体、どんな基準でものを話しているんだ?


「一寸待って、話が見えなくなった。確認のため、幸姫さんの世界について教えてくれ。先ず、球か? いや、そもそも天体なのか? 天体だとしたらどの程度の大きさなんだ」


「バカにしないで、大地が球である事位判っているわよ。此処で知られているか判らないけど、宇宙は、大地に比べて遥かに遥かに巨大で、更には膨張しているのよ。大地の大きさも判っているわ。単位が異なるから上手く説明できないけど、大地一周の距離は、私の身長の約二千五百万倍もあるのよ」


「それなら、大地の大きさはほぼ同じだな。俺の身長が175㎝だから、計算すると大地一周は2286万倍だな。日本が広大ってのが謎だが、小さい国が多いのかな。因みに、日本の人口は約1億2000万人だ。結構、人口密度が高い方の国だよ」


 彼女が、何故か絶句してハングている。あ、再起動した。


「どんなボスなの。まさか、不死身で目を合わせただけで、子々孫々まで忠誠を強いる呪いの力を持つとか?

 ここは、そんな小説のような国なの……」


「俺が知る限り、そんな化け物は居ない。小説ですら、そんな設定……(たと)えが思い浮かば無い。まあ、それより幸姫さんの国が、本当に別の世界か確認しよう。

 そうだなぁ。幸姫さんの国がある陸地──島か大陸か──の大きさは、幸姫さんの身長の100万倍以上は、あるか?あれば、地球儀上で確認出来るだろう」


「私の国は、世界で最大の大地の西の──太陽が沈む側の──海岸にあるわ。未調査の場所があるから正確には分からないけど、調査済みの範囲でも300万倍は優に超えるわ」


「別の世界で確定だな。この世界で未調査の土地なんて無い。信頼の置ける地図があるから、こんな地球儀があるんだ」


 彼女が探るような視線で見た後で、真剣な目で言った。


「宇宙は広い。別の星から私が連れてこられたって可能性は……」


「その可能性は排除出来ないが、だったとしても帰す手段は無い。この世界に、他の星まで行く技術力は無い。ギリギリ、夜空の月には行った者が居るが、あそこは空気すらない死の世界で、幸姫さんの世界である訳はない」


 その言葉を聞いて、彼女は肩を落とした。


「私は、知っている人が一人も居ない世界に来てしまったの(T_T) しかも、(きん)や宝石も無い。私は、さんざ(なぶ)られた上で殺されてしまうの」


 可哀そうに。


「安心しろと言っても、気休めにすらならんだろうが、当座の生活は俺が保証する。そもそも、嬲ったり殺したりは、さっき会った警察の連中が決して許したりしない。国中、追いかけまわして裁きを受けさせる。重大犯罪の検挙率は、それほど悪い訳じゃない」


 彼女は、顔を上げ、涙を拭いてから、不可思議な事を言った。


「同じことを、私が見ている前で言ってみて」


 やはり、不随意運動から嘘を見破るとか、そういう技能が普通の世界なのかな。俺は、リクエストに応えて、同じことを話した。


「当座の生活の面倒を見てくれるのは嬉しい。でも、何が目的なの。私の(からだ)を欲しているのは、判るけど、それだけなの? それだけ覚悟すれば良いの?」


 いやいや、そこまでケダモノじゃないって。


「不安なら、別にホテルとか探すぜ。俺がスケベで幸姫さんに下心を持っているのは否定しない。だけど、弱みに付け込んで襲い掛かる程のロクデナシじゃない。何か、小説とかのネタが欲しいだけなんだ。

 俺は、ライター。文章を書くことを生業(なりわい)としている。生き甲斐でもある。異世界の生の話が聞ければ、アイデアが沢山得られるんじゃないかと期待している。その為には、暫く──幸姫さんが自活の手段を得るまで──生活の面倒を見るのは惜しくない」


「賭けるしか無いようね……ところで、さっきからホテルって言っているけど何なの?」


 自動翻訳も完全ではありえないな。


「金を払って、寝る場所を借りる。普通は、掃除とかベットメイキングとか朝食の準備とかもある。カプセルホテルとかの本気でベットしかないものから、この家より遥かに豪華な所まで色々ある。

 まあ、ベット一つにテレビが付いたビジネスホテルとかかな? 俺の予算的に見て」


「金を払って、寝る場所を借りる? 女一人で??? まさか、ケダモノと一緒にベット一つしかない所に泊めて、手早くご賞味するから、覚悟が決まるだろうって言っていたの?……け・だ・も・の」


「どんな誤解だ! 同じ屋根の下で、俺と一緒だと、襲われないか不安だろうから、幸姫さん一人で別の所に泊まれば? そう言っているだけだ。その程度の金は責任を持って払う」


「知り合いも居ないし、バックも無い、女一人で??? 私が空手の達人って話を本気にしているの?」


 何故? 空手の話が出てくるんだろう。


「夜中に、合い鍵を使って寝込みを襲われたら、どうにもならない。身ぐるみ剥がされて、売り飛ばされるだけ。ケダモノは、それを防げるような有力者じゃないって言っていたよね」


 幸姫の世界は、どれだけ殺伐としているんだろう。説明するのも面倒だ。此処に同居する方向に話を持っていこう。覚悟は持ってくれたようだし。


次は、「彼女の世界」です。安心して泊まれる「ホテル」が無い。そんな世界を描写します。


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