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二人が助かった後

 目を覚ました時、近くに華山(はなやま)さんが居た。


「ヒメ、姫は何処に居るんだ! 大丈夫なんだろうな‼」


「やはり、貴方達はそういう関係だったのね。はぁ〜

 幸姫(こうき)さんは、無事よ。ケガ一つしていないわ。それより、貴方の方が大変だわ。退院まで、少なくとも1週間は掛かる。ちなみに、事件は昨日よ。幸介(こうすけ)さんは、丸一日目を覚まさなかったのよ」


 そうか、俺は腹にケガをしたんだ。確かに、腹部に凄い違和感がある。


「その間、付き添ってくれたのか、有難う華山さん」


「どういたしまして。見捨てて帰国するほど、私も上司も不人情ではないわ。第一、カナダ警察から、捜査が一段落するまで、留まるように言われているのよ」


「そうか、悪い事をしたな、あんな店を選ばなければ……そうだ。姫に連絡してくれないか? 姫も凄く心配していると思うんだ」


「そうね。電話してくるわ。でも、会いにこれるのは暫く後になると思う。幸姫さん、やむを得ないとは言っても、三人も射殺したから、事情聴取で大変なのよ。

 電話のため、一寸部屋の外に出るけど、ベットを出たり、飲食喫煙は絶対ダメよ」


 と言われてもな、繋がっている管が多くて動けるわけ無いだろ。


 暫くして、華山さんが医師と一緒に戻ってきた。色々、診察されて状況を説明してくれた。


 俺の怪我は、運良く、内臓には到達していなかった。だから、この程度で済んだだけで、一歩の違いで死ぬ所だと、医師からは無謀さをクドクド叱られた。


 犯人グループは、実は5人いた。銃を持っていた3人の他に、客に紛れて2名いた。勿論、警官隊に直ぐ制圧された。だが、他にも居ないかのスクリーニングの為、客側も全員半日程度拘束されたらしい。

 特に、外国人は全ての行動を洗い出して犯人グループとの繋がりがないか検証する迄、出国を禁止され、監視下に置かれている。警察がよく使う『善意の協力者』という名目だ。


 俺らは入国以降の動きが怪しすぎる。会った人間、行った場所全てを確認する為、俺が退院出来るまでは留まるようにと言われている。疑義があれば、任意に退院を延ばすつもりだろう。此処は、警察病院なのだし。

 ただ、配慮されていない訳では無い。死んだ犯人3人は、警官隊との銃撃戦で射殺された事になっている。隙を見て脱出しようとした華山さんを助ける為に、警官隊が危険を冒して突入した事になっている。


「日本人が巻き込まれた上に重傷者まで居る。何時もながら日本のマスコミはウザいわ。しかも、全部私に来るの。貴方は瀕死の重傷で面会謝絶って事になっているし、幸姫さんは付き添って居る事になっている。

 しかも、貴方達には日本から現地に飛んでくるような親族も居ない。尺を稼がせるために、私が犠牲になるしかないのよ。私も妙な疑いを掛けられないように、大変なんだから。日本の同僚が、ワイドショーとか送ってくれているから見てみる? というか、見ておいて。退院したら、口裏を合わせる必要があるんだから」




 その日、かなり遅くなってから、姫が病室にやって来た。部屋に入ると直ぐにベット脇に来て、俺の手を握って、涙ぐんだ。


「あなた。大丈夫、痛くない。あんな無茶をするなんって、どうかしているわ」


「俺が、生きているのは姫のお陰だよ。助けるつもりが助けられるなんって、男として本当に失格だな」


 そうやって、暫くお互いを慰め合っていた。ああ、生きているって良い事だ。人心地ついた後、姫が『聞いて欲しいの』と前置きして、独白しはじめた。


「彼らの目を見たとき、私を跳ねた決死テロと同じだと感じた。殺意に満ちた恐ろしい目。でも、私が標的であるはずが無い。なんの関わりも無いのだから。最初は、そう思った。

 彼らが、神を讃えた時に疑問が湧いた。この人達、誰が標的なの? 標的を探すより、神を讃える方が何故優先するの?

 だけど、強い使命感を持っているのは判る。矛盾した情報に混乱した。使命感があるのに、使命を果たすために必要な標的を探さないのは何故?

 生き延びる為には、相手の意図を見抜く必要がある。私は、全力を尽くした。何一つ見落としがないように。

 季ノ国での知識と此方の知識を総動員して、得た結論に私は驚いてしまった。それ以外の事を考える余裕を無くす程。


 人質の命など無価値なのだと、それどころか自分達の命も無価値なのだと。両方、彼らの神への供物にするつもりだと。


 何故? 『神』にそこまで傾倒出来る? 『神』に直接会って、信頼を示して貰えたの?」


「そんな筈は無い。神に会った話は、神話かホラだ」


「話が、それてしまった。

 私は、あなたに謝らなければならない。あんな事言ってしまってごめんなさい。あなたが、どうするかなんて予想出来たハズなのに。

 そして、あなたが私の盾になる事を決意した時、それを止める事が出来なかった。受けた(しつけ)が恨めしい。

 拳銃が宙を舞うのを見るまで、本気であなたを見殺しにして逃げるつもりだった。私は、本当のロクデナシね」


「気にする必要なんか無い。それら全てを含めて愛しているんだ。自分を卑下して俺から去る事だけは止めてクレ。俺が、危険を冒した意味が無くなる。俺は今生きている。そして、姫が欲しいんだ」


「そうね、危険を冒して飛び出したのは、あなた自身の神聖な決断だわ。私が、とやかく言うのは間違っている。

 でも、犯人を射殺して、あなたを救ってもなお、……この心の動揺が収まらない。凍てついた心を溶かすために、本当はあなたに抱いて欲しいけど、この状態じゃ無理ね」


 そして、姫の独白後も暫く、回診による邪魔が入るまで、二人でお互いを慰め合っていた。



次は「姫の自立と真情」です。

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