表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

テロリストとの遭遇

 第三者として「神の概念の重さ」を叩き込まれる経験としては、「路傍の石」として殺されかけるのが、適切だろうと考えて、このエピソードを挿入しました。

 作者には、特定の宗教を暗示する意図は有りません。どの宗教でも、この程度の狂信者は出現しえると考えています。


 俺は、男だからネチネチしたりしない。嫌な事など直ぐ忘れてみせる。


 その晩には、わだかまりを忘れて、姫の特製の御馳走を美味しく頂いた。酒も美味い。そして、気付いた時には、朝だった。何時の間に寝たんだろうか? まあ、心が疲れていたからな。まさか、睡眠薬を飲まされたとかは……


 でも、オールマイティパスは、持っていると思うだけで、随分と心が癒されるものだ。姫も俺の事を愛していると思うと、ムフフフフ、幸せだ。


 そうこうしている内に、カナダへ出発する日が来てしまった。実は、今回の取材旅行には、華山(はなやま)愛紗(アイシャ)という女性も同行することになっている。研究者と名乗っているが、どう見ても婦人警官です。お陰で、ホテルでは、姫と華山さんが同室で、俺は寂しく1人寝だ。


 カナダには、フィリピン、インド系、中国、イスラム系、ヒスパニック系等、本当に様々な移民が居る。それに、テロリストになるのは移民ばかりでは無い。移民の増加に怒りを募らせてテロに走るようなケースもある。俺らは、精力的に走り回って、インタビューを集めまくった。


「幸姫さんは、本当に語学が堪能ですね。何か国語位できるのですか?」


 幸姫は、ありとあらゆる移民にそれぞれの母語で話しかけている。それを見た、華山さんが興味津々といった感じで聞いてきた。


「話せているように見えているけど、我流の一夜漬けなの。できるというレベルじゃないわw 片言でも、故郷の言葉で話しかけられると、口が軽くなるだけなのよ」


 実は、華山さんは、英語も十分ではない。英語で話しているのか仏語で話しているのか、判っていない事がある位だ。だから、こんな誤魔化しでも通用する。どちらかと言うと荒事の方が得意そうだ。


 そして、今日のランチは地元の有名店だ。外国に来ているんだ。その土地の旨い物を食わなければ、取材だって捗らない。

 日本語で今後の取材計画を議論していると、姫と華山さんの気配が急に変わった。


「耳を塞いで、身を屈めて、大人しくして」


 姫がそう囁いて直ぐ、店の中で銃声が響いた。


「動くな! 全員手を挙げて、壁際に並べ、グズグズするな!」


 汚い英語で怒声が響いた。え! えぇぇぇぇ! 事件に巻き込まれただと!


 三人組の犯人グループは、神は偉大なり! とか叫んでいる。目がヤバイ、狂信者の目だ。そして、二人が拳銃を、もう一人はサブマシンガンを持っている。やば過ぎないかこの状況。


 どうする事も出来ず、客は一箇所に集められた。大体20人ぐらいか。その内、何人かが指名されて机や椅子の片付けをさせられている。射線を遮る物を無くすつもりなのか?


「ダメね、全員殺すつもりだわ」


 壁際に集められてから10分ぐらい、姫は恐ろしく不吉な言葉を吐いた。そんな……暫く目を離してくれれば、隣にある階段で二階に上がって、そのまま地面にダイブして逃げれるのに。警官隊が集まっているはずだ。外に出れさえすれば、多少ケガをしていても助かるハズなんだ。


「マジか?」


「そこ! 勝手に話をするな! お前らから殺すぞ!」


 ほんの少し話しただけで、罵声を浴びせられる。怖い。人質は皆ブルっている。泣いて顔を上げていない女性もいる。確かに、開放してくれる感じがしない。此処までなのか、俺はまだ27年しか生きていない。結婚も子供もまだだ。チクショウ、最悪の取材旅行だぜ。

 いや、俺が27歳なら、姫はまだ21年しか生きていない。そして、こんな場面で女を守るのが男ってもんだ。諦めずに、よく考えるんだ。

 最前列に居る俺から男までは、三歩だけだ。しかも、単にしゃがんだ状態だから、足のバネで勢いを付けて飛び出す事が出来る。それに、顔を見るとまだ少年だ。武術の心得があるようにも見えない。襲い掛かれば、怯ませること位は出来るだろう。


「合図をして俺が吶喊する。注意を引いている間に、姫だけでも逃げてクレ」


 バン‼


「話すなと言っただろう!」


 銃声と怒声が連続して響いた。近くで、しょんべんの匂いがする。恐怖のあまり失禁した者がいるんだろう。俺だって怖い。でも、怖がっていちゃだめだ。

 男から目を離さず、チャンスを探すことにした。そして、長く長く感じる時間の果てにチャンスが来た。拳銃を持った男が、窓の外を気にして、俺たちを見ていない。いまだ。


 姫の手を強く握って合図してから、俺は飛び出した。三歩、男が振り返る前に殴りかかるのに成功した。上手く拳銃も弾き飛ばせた。兎に角注意を引くんだ!


「ぶっ殺してやる。ぶっ殺してやる、うぉぉぉぉ、ウギャー、うぉぉぉぉぉ」


 押し倒して、相手の首を絞めながら、叫んで注意を引いていると、脇腹に熱い感覚がした。ナイフで刺されたのか、銃撃されたのか……どちらにしろ俺は、このまま死ぬ。でも、神様お願いします。姫だけでも助けてください。俺が死体になった後も、俺だけに注目を集めてください。


 次の瞬間、目の前が真っ赤に染まった。死ぬときは視界が赤く染まるのか……初めて知った。来世で小説に書いてみたいな。


「全員動くな! 華山さん、外に走って、警官隊を呼び入れて」


「ラジャー」


 俺は、自分が死体の首を絞めている事に気付いた。思わずへたり込んだ俺に……


「気をしっかり持って、他に仲間がいる可能性が高い。人手を確保するまで耐えて」


 姫の日本語だ。姫は大丈夫なんだ。




「左端の青の服の男と、中央右のヴェールの女が怪しい。特に、女は何か武器を隠し持っている」


 意識が薄れていく中で、姫のそんな英語が聞こえたような気がする。


次は「二人が助かった後」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ