共通して出現するチートキャラ?
日本書紀の最初の方は、編纂された時点で、「歴史」ではなく「神話」として書かれた。そういう前提でこの部分は書いています。
もし、気分を害される人が居たらすいません。
今回の仕事は評価も高かった。クライアントに姫の事を語学が堪能な有望新人と印象付ける事が出来た。姫の場合は、やはり外国が絡む仕事を狙った方が良いんだろうな。
見つけたと思った切っ掛けだが、あれは旅行中の興奮感で見えた幻想だった。日本に帰ってみて考え直すと……何をどう考えても季ノ国の方がおかしい。理解の地平線外同士で話し合っている事に変わりない。
ただ、姫は非常に現実的だ。
「真実が重要なのでは無く、私がこの社会に適応できるかが重要なの。大魔術があると解釈して、それで実際の人の行動が予測できるのなら、それで十分だわ。
後は、どんどんと法律や道徳? それと教育の内容を勉強していけば良いのよ。基準となる文書があるって事は、お兄ちゃんが全力を尽くせば、資料は入手できるんでしょ。お願い入手して」
「ああ、教科書とかなら、簡単だ。姫の履歴上、高校は出ていない事になっているから、小中学校の物だけで良いだろう。法律もダイジェスト版みたいな解説書はある。ただな……道徳の方は、曖昧だからな、少し考えさせてくれ。兎に角、揃えてみる」
それから姫は、精力的に勉強をしていた。ついでに、何時でも英語を喋れるように、オンライン英会話の特定の講師を選んで実験をしている。俺を念頭に置けば、何時でも日本語が話せるという事は、誰でも良いから英語ネイティブの人間を念頭におけるようになれば、何時でも英語が話せるようになるかも知れない。
「実はね、日本語については、少しだけだけど自動翻訳じゃなくて日本語として話せるようになりかけているの。この異世界言語理解のチートは、言語学習にもアドバンテージがあるようだわ」
姫の自立の日が、待ち遠しい。
そして、しばらくして、姫の才能を活かせる次の仕事が確保出来た。対象は、カナダだ。英語圏・仏語圏の両方あり、多様な移民も居る。前回と同じクライアントで、打ち合わせ等でも姫の事に期待していることが判る。むしろ、俺はおつまみのようだ。『一人で不安なら、此方で護衛を用意しようか?』などという提案まであった。
「お兄ちゃん以外の男と旅をするのは、怖いので。代わりに、護身術を教えてくれませんか?」
などと、煙に巻いていたが、姫にとって重要なクライアントになりそうだ。何れは単独で仕事を受けるようになるだろう。
俺の助手に自分の仕事の下調べ。誰もが一度は経験する殺人的忙しさ。そんなある日、姫は訳の判らない質問を持ってきた。
「チートキャラってのは、読者が自分を投影する事で、偉くなったとか強くなった自分を疑似体験し、満足する為のものだわ。
そして、人は本当に千差万別だから、様々な主人公像があり、読者層や時代で人気のキャラも違ってくる。
それは、この世界でも同じかしら」
姫が俺に手を伸ばしてきた。え! そんなに重要な質問なのか⁉︎
「辛辣過ぎて、全力で否定する者も居ると思うが、俺はその理解で正しいと思う」
「それなら、主人公より遥かにチートなキャラを設定する理由は何?」
「それは、単純にやられ役だろ? 主人公が乗り越える壁として必要なだけだ。壁は高い方が、乗り越えた時に爽快感がある」
「そっちは、判るの。それ以外に、あまりストーリーに関わらない。とてつも無く強力。最期まで倒されない。しかも、色々な話に共通して出現する。
そんな特徴を持つキャラが居るの。凄く変でしょ?」
「色々な話に共通して出現する? 何か自動翻訳の誤謬とかじゃないか? 全く思い浮かばない」
俺の答えを聞いた瞬間、姫は大きく目を見開いた。『信じられない』目がそう語っていた。
「自動翻訳の誤謬では無いわ。日本語として読んだ時に見つけたの。読み方がよく分からないけど同じ漢字だから、同じキャラ名の筈だわ。お兄ちゃんが、何故知らないのか、全く理解できない。怖い。やはり、超の付く魔術師が居るの? この世界には?」
「見せてくれ」
姫は直ぐに本を持って来て、当該箇所を指し示した。
「……なんだ。『神』か、ナゾナゾは止めてくれよ。これは、キャラじゃない。日本語では『神』にはこの文字を当てるんだ。自動翻訳も案外だらしないな。こんな基本単語が訳せていないなんてw」
「キャラでは無い? どういう意味、人以外の亜人とかも、キャラにはなり得るでしょ?」
「言い過ぎか。キャラである場合もあるからな……でも、本来は超越者だ。世界自体を創った存在だ。そちらの世界にも神話位あるだろ?」
「世界自体を創った存在! 魔術師どころの騒ぎじゃないわ。この世界には、そんな者がいるの‼」
「???何を言っているんだ? 創世神話とかの話だぞ。実際に起きた事か否かは、何とも言えん。まあ、国によって話が異なる事から……止めておこう。この手の話は、泥沼に嵌るだけだ。季ノ国には、創世神話は無かったのか?」
「世を創る神の話? 建国伝説とはまた別の話だよね」
創世神話が無い? そんなバカな。何かの誤訳だろう。
「うーん。そうだな、建国伝説と創世神話が融合している日本書紀とかを例にした方が良いかな。話の流れを聞けば、季ノ国にも同じような話があるのに気づくだろう」
そして、俺は日本書紀の天孫降臨までの流れを急ぎ足で説明した。
「こうして、主神である天照大神の子孫が高天原から天孫降臨した。この国を建国した神武天皇は、天孫降臨した神々の子孫だ。神々の子孫だから尊く、此の国を治める正当性がある。そういう筋書きだな」
ふと、顔を上げると真剣な目をした姫がいた。殆ど、表情が無い。怖い位に鋭利で美しい。そして、トンデモ無い要求をした。ここまで言うのは初めてだ。
「今すぐ全て脱いで全裸になって。そして、私の質問に答えて。意識の表層にも昇らないような些細な嘘も見逃したくない」
次は「季ノ国には神話が無い!」です。
この話の二つのテーマに一応の解決が付きます。




