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テロリストが少な過ぎる⁉︎

フランスにいる移民・難民の実際の不満レベルについては、作者は全く調べていません。

書いてある内容は、小説中だけの設定で、完全に作者の妄想です。

もし、不快に思われた方がおられたら申し訳ありません。


また、少し残虐な表現が混じっているので注意して下さい。

 俺らは、次の目的地のフランスに向かった。一応、俺は英国と仏語は出来るんだ。だから、この仕事を取れた。誤解しないでくれよ。


 ここでの、取材目的は、「人はどのようなキッカケでテロリストになるのか?」それを一般的な社会環境ではなく、「個人が受け取る情報ルート」の視点で調べる事だ。それが判っていれば……公安警察なら、監視対象にするだろう。嫌な話だが、別件や微罪逮捕、更には冤罪も駆使するだろう。


「姫のお陰で取材が捗った。クライアントに満足して貰えそうだ。上手く行けば追加の仕事が貰えるかも知れない」


 一週間の間に、移民や難民の取材を相当数こなした。俺が、不十分な仏語──相手だって完璧ではない──で、インタビューした後で、可愛い女性に流暢な母語で話しかけられれば、口も軽くなる。

 本物のテロ組織の影が見えるような話も色々入手出来た。もっとも、俺らはこれ以上踏み入る積りは無い。可愛い姫を危険な目には合わせたく無い。


「でも、不思議だわ。あれだけ、不満の種になる情報に接しているのに、何故蜂起したケースが少ないの。テロだっけ? それが年に数件て少なくない? 取材した人と同じ境遇の人は、何万人も居るんでしょ?」


「少ない??? フランスの最近の事件は、説明しただろ? フランス人は、完全にテロに怯えきっている……季ノ国の基準だと少ないのか?」


「私は、12歳から、直球の仕事に係っている。季ノ家の者が直接担当する重大事案だけでも年30件を超えるわ。反乱陰謀やその容疑で討伐するのは、年平均で500人ぐらい。手下レベルで処理して、情報が上がっていないのも沢山あるはず。


 もっとも、季ノ家へのテロに成功した例は少ない。私が、係り始めてからだと……多分、一件だけ、私の暗殺だけだと思う」


「暗殺だと⁉︎ トラックに跳ねられたんじゃないのか?」


「トラックに跳ねられたと聞いて、暗殺以外の何を思い浮かべるの? あれは、完全な決死テロだったわ。目が殺意に満ちていた。

 跳ねられて、目を覚ましたら……そこに緊迫感が無いお兄ちゃんのスケベ顔があって、随分驚いた。あの日は、理解不能な状況の中で、必死の決断を繰り返す悪夢の日だったわ。


 少しでも、取り乱せば、命を取り(こぼ)す。そんな緊張感があった。


 話が、逸れたわね。人は、身内や身近な人の言葉で動かされる。特に、正義感を刺激される話なら、話した者の意図を超えて過激になる事があるわ。

 ここの、移民だっけ? 彼らは、季ノ国の基準なら、既に危険な水準にある。皆殺しを検討せねばならない程だわ。

 そんな危険な状況で、この件数……フランスの警察は凄く優秀で、住民にすら気付かれないような隠密さで、危険な奴を間引いているってことなのかしら?」


 なぜ、姫はこう発想が危険なんだ! 一体どんな国だったんだ季ノ国は‼︎


「単に、季ノ国とフランスの経済状態が違うだけじゃないか?」


「それは違うわ。季ノ国も餓死が少ないのは同じ。飢えが原因の反乱対策は出来ているわ。


 不満は、あくまで相対的なものなのよ。周りの人と比べて不満を感じる。過去の自分と比べて不満を感じる。あり得る未来の自分と比べて不満を感じる。そんな嫉妬にも似た感情に、正義感の後押しがあれば、十分に命懸けのテロに走る動機になる。


 『人は皆平等』という『正義』感と、不平等である『現実』を同時に押し付けるなんて、フランスって国のボスは何を考えているのかしら? 『正義』感から『現実』を否定したくなるか、『現実』を鑑みて『正義』は嘘っぱちだと、アナーキーになるか、どちらにしろ碌なもんじゃない。わざわざ、自分の国をテロリストの培養槽にするようなものね。

 率直に『死にたいの? 家族を道連れに?』と聞いてみたくなる」


「イヤイヤ、理想と現実が乖離するなんて、どの国でも同じだよ。その程度で、テロに走るのは普通じゃない」


「まあ、良いわ。議論は止めましょう。何か此方の世界との違いがあるんでしょうね。お兄ちゃんは、何か思いつく事はある?」


「普通に、法律で禁止されている。そう言えば、季ノ国には『法律』は無かったんだよな?」


「うーん、そうだわね。『法律』については、ボスによる掟とボスによる脅しを合わせた上で、強力なギアスも付いた物と理解しているわ。そういう意味では、季ノ国には、そんな便利なギアスは無かったわね」


「イヤイヤ、『法律』にギアスの魔術なんて関係ない。というか、ギアスの魔術は、妄想上の存在だ。少なくとも、この世界で俺が知る限りでは」


「それなら、どうやって『法律を守る事』を徹底させるの? 『ボスによる脅し』の場合は、彼方此方に立て看板で周知するし、大々的に人を集めて見せしめのショーをする事で、人々の口の端に乗るようにするわ。季ノ家は、美しい少女でも、恐ろしいと知らしめるために、大変だったんだから。12歳になった私の最初の仕事は、処刑よ。


 眉一つ動かさずに一刀で首を刎ねる練習に、2ヶ月以上掛ったのよ。


 でも、この世界では、立て看板すらあまり見ないわ。あっても、馬鹿がバカな失敗をしないよう『押すボタンを目立たせる』とかばっかり」


 姫は凄く怖い女だ。ゾクゾクする。こんな怖い女が、俺のものになって、優しくしてくれたら……うぅ、堪らん。狂いそうだ。

 おっと、スケベな妄想に耽っている場合じゃない。回答しなくちゃ。


「そういう事は学校で教える。少なくとも、『法やルールを守ること』はそうだ」


 眉を(ひそ)めて、姫が俺を見た。


「……こんな街中で議論出来ないわ。ホテルに戻りましょう。何か大魔術の匂いがするから、私が『学校』と『法律』の関係を理解できたら望みのままにお礼するわ」


 そして、仮想の尻尾を激しく揺らしながら、俺はホテルに向かった。今度こそは、勇気を振り絞って、あんな事も頼んでみたい。


次は、「教育の効果と成立しない理由」です。


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