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初の海外

主人公は、呆れられても可笑しくない程のヘタレです。

ただし、スケベではあるかも知れません。

 一つ突破口を見つけた後は、翻訳自体は、徐々にだが進んでいった。その分、お礼をして貰える機会も増え、俺はついつい限界を探りたくなる。


「え? 言ったでしょw 『あなたに私を殺す気がないなら』って。ただ、お兄ちゃんの男性としての成績表がどうなるかわ知らないw

 まあ、弱みに付け込んで、一方的に欲望を満たす男は、通常、最悪の成績よ」


 そんな風に警告された俺が、どんな選択をしたかは……断固として秘密だ。ただ、指輪騒動以降、なんとなく、男女として心が通い合っている。そんな、感じを──幻想かもだが──受けている。


 翻訳が進んだと言っても、姫が言うには、理解には程遠いそうだ。


「説明し難いわね。うーん、疑問符付きで私の国の言葉と対応が出来るようになった。そういう感じかな。そうだわね。

【契約】は契約とは意味が違うと思うけど、その違いが理解出来ていない。

 どう? 最初の【契約】と二つ目の契約は、同じ言葉に聞こえた? それとも違う言葉に聞こえた?

 一つ目が私の国の【契約】という意味で使ったの。次は、あの本に書いてあった契約というニュアンスで発音したのよ」


 確かに、訛りがある何か異なる【契約】として聞こえるが……正直、訳が判らない。自動翻訳のチートの性質が良く判らん。正しい理解かの判定も……どうにもならん


「途中で、見え方が変わったという事は、私の理解レベルで徐々に翻訳方法が変わっていくのだと思う。クオリアって概念ここにあるかな? 私の頭の中で、契約がクオリアとして登録された。うーん、イメージ的には、脳細胞が一つ割り振られたかな? だけど、まだ既存の【契約】とは、単語としては分離出来ていない。そういう状態なんだと思う。

 完全に理解するためには、色々造語も必要かも知れない」


 仕方ない。じっくり進めるしか無い。仕事も有るんだ。


 姫は、その後も必死に努力を続けた。この国の身分証明で便利な自動車免許も最短で取った。得意を活かすために、語学検定の試験問題にも取り組んでいる。調理師は実務経験が必要だから後回しだが、変わった所では色彩検定なんかも狙っているようだ。

 また、指輪騒動で隠す必要が無くなったのか、空手やナイフの練習も毎日している。


 俺も、こんなに健気な姫を少しでもサポートしてあげたい。そうすれば、早く自立出来て……この(いびつ)な関係を脱して、真の恋人同士になれるだろう。


 そして、姫が助手になって3ヶ月、俺らはある意欲的な仕事をする事になった。何と! 海外取材費用を俺と姫の二人分出してくれる太っ腹さだ。

 公式には、ある研究機関からの仕事だが、公安警察の影がチラチラ見える。テーマは、「一人前のテロリストになる為に必要な事」だ。無論テロリストを育てたい訳じゃない。育成中のテロリストを炙り出す参考にする事が目的だ。


「姫、明後日からの海外出張だけど、不安は無い? 不安なら今からでも予定を変更するよ」


「何度も答えたわよね。生き抜く事は、賭けの連続だって。

 私が早く稼げるようになる為に、お兄ちゃんが苦労して取って来てくれた仕事。不安はあるけど、一日中お兄ちゃんと一緒なら、我慢出来るわ。その為に、ホテルの部屋も同じにした。

 でも、乱暴したりしないでね。これ以上、幻滅したくないの」


 きっと、姫が自立してからだが、求愛を受け入れて俺の女になってくれる。そう信じている。だから、俺は平明でいられる。


「いくら、キリッとした顔しても、隠しきれてないわよ。け・だ・も・のw

 本当に、そこは安心材料が全くないわよね〜」



       ◇  ◆  ◇



 俺らは、最初の目的地のグアムについた。手始めに、武器の扱いを学べる場所を取材する。日本に住むテロリスト候補生が、独自に銃火器の扱いを学ぼうとするなら、こんな場所に来るのかも知れない。

 有名な射撃訓練場に来て、姫はイキイキしている。多分、姫の世界にも銃火器はあるのだろう。此処の火器の説明を受け、分解・組立と操作法のレクチャーを受けた後は、どんどん射撃している。しかも、結構上手い。


「彼女は、自衛隊員か警察の狙撃手だったのかな?」


 インストラクターが、興味を持って詮索するぐらいだ。一方、俺は……イヤイヤ恥になる事まで赤裸々に描くほど、正直になる必要はないさ。


 此処に来たもう一つの理由は、自動翻訳の言語切り替えが自在に出来るかを試すためだ。現地の人の中には、チャモロ語と英語と日本語が全て使える人も居る。そういう人に対して、翻訳言語の切り替えが意識的に出来れば、強烈なアドバンテージになる。十分、食っていける特技だ。




「結局の所、相手の言語習熟度によるのね。相手の習熟度が低い場合は話しかける事は出来ない。逆に、相手の語りかけも理解できないようね。

 ただ、日本語だけは、お兄ちゃんを念頭に置く事で何時でも話せる」


 姫の総括だ。それでも、強烈な特技だ。


「練習すれば、どんなマイナーな言語でも通訳が出来るって事じゃないか。通訳として生きてく事も出来るぞ」


「それはダメね。通訳は出来るけど、語学を教える事は出来ない。余りにもあり得ないキャラだから、怪しまれると思う。他の仕事がメインだけど、色々な言語に精通しているってキャラが一番適当だと思うわ」


「そうだな。次の目的地では、その方面の可能性を探ろう。まあ、危険が少ない場所でテスト出来て良かった。

 本当に太っ腹なクライアントで助かったよ。テロリスト候補が、爆弾製造や銃火器の取り扱いを学ぶシミュレーションなんて項目、『海外まで行って調べるまでも無い』と却下されないかヒヤヒヤしていたんだw」


「そこは、本当に助かったわ。久しぶりに、銃の練習が出来て私も嬉しかった。本当は、一つ持ち帰って身に着けていたいけど……予算も足りないし、日本の法律も邪魔だし……本当に生きにくい世界よね」


 つくづく、危険な女だ。だが、そこがイイ!


次は「テロリストが少な過ぎる⁉」です。

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