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指輪を贈る特殊な意味

主人公がヒロインを特殊な方法で口説きます。

作者は男性なので、女性視点で見ると強引過ぎるかも知れません。

「でも、私の(からだ)が目的じゃないなら、何が目的だったの?」


 恐怖を吐き出し、暫く泣き続けていた姫だったが、涙を振り払ってそう言った。立ち直りが早い。恐ろしい程の胆力を感じる。


「今から安アパートを扱う不動屋に案内する。また、不動産屋と質屋、買取もする宝石店の探し方も教える。

 あの2点を売り飛ばせば、徹底的に粘って、250万円は確保できるだろう。切り詰めれば一年以上は命を繋げられる金額だ。

 ヒメに、ほんの少しでも安心出来る材料をあげたかった。俺の所を逃げ出しても、暫く生活出来る手段があれば……籠の中の鳥の閉塞感が少しは和らぐと思った。


 あの指輪とネックレスは俺からの逃亡資金だ。


 だけど、婚約指輪になってくれればと思っているのも本音だ。愛している。全てを、人生と誠意と愛情を含めて、ヒメの全てを手に入れたいと恋い焦がれている」


「……呆れた。狂っている。でも、嘘では無いよう」


 それから、姫と俺は見つめ合ったまま、何分か沈黙の時間を過ごした。


「私は、生き延びる事を諦める気は無い。そう躾けられているから。だから、生きる為の最善の選択をさせてもらうわ。有難くプレゼントを頂く。お礼は言わないし、しない。

 あなたの誠意に嘘はつきたくない。それに、こんな真摯な気持ちへの嘘を、万一でも見破られるなんて屈辱……心がズタズタにされてしまう。

 これでは足りない。心の動揺が収まらない。私の心の均衡を保つために、私も命懸けの告白をするわ。若しかしたら、明日二人とも生きていないかも知れないけど。


 鳥籠を逃げ出す自由は、元々あるのよ。家にある武器は、キチンと把握済み。あなたがド素人だという事も判っている。


 耐えられなくなったら、あなたを殺して逃げれば良いだけ。必要なら、拷問して預金口座の暗証番号も吐かせる。


 季ノ国では、直球の仕事ばかりしていた。アジトの強襲に反乱鎮圧、処刑や見せしめだけが目的の拷問もした。あなたより私の方が遥かに強い。全く勝負にならない。

 でも此処は、余りにも理解不能な国。鳥籠の外に飛び出して犬や猫に食われて死ぬより、あなたに(からだ)(むさぼ)られる方がマシ。その決断は、最初の日に済ませた。


 あなたに、私を殺す気が無いなら、暫く此処に居てあげるわ。警察に追われるリスクを冒してまで、あなたを殺す利益が無いもの」


 姫は、感じていたより、遥かに凛とした良い女だ。惚れ直した。猛烈に欲しい。魂まで喰らい尽くしたい。



       ◇  ◆  ◇



 指輪とネックレスは無事に届き、当然ながら姫はそれを俺に判らない場所に隠した。助手としての仕事ぶりはクライアントにも認められるほどになった。ただ、『法律の起源』は、結局の所、社会に関係するような語彙は全て翻訳出来ないと断じるしかなかった。

 そうすると、それらの概念を一から教える必要があるのだが……そもそもどうやって教えたらよい? 俺は、小学校の社会科教員じゃない。


「ふふw 私が一つ理解できる毎に、お礼として何でも言う事を聞いてあげる。一寸だけならスケベな事も許すわよ」


 く、狂いそうだ。弄ばれているのは、俺の方なのか?


「あ? それだと、欲求不満になり過ぎちゃうか。うーん、お礼の他に、挨拶だけは毎日してあげるわ。家の外限定だけど」


「……フゥフゥ……」


「ドゥドゥ。落ち着いた?

 お兄ちゃんの本質は、やはり、け・だ・も・の、ねw

 そこは、上手く飼い殺してあげるから、質問に答えて。

 法には、双方の合意を助ける為にあるものもあると、そう説明したよね。

 双方の合意を助けるための、前例や慣習を明文化したものもあると。確かにあった方が良いわ。一族の中でも、そういう事に詳しい役目の人がいた。

 でも、合意はそれが口頭であれ文書であれ、その時点の利害損得、力関係によるわ。それが変われば、当然合意など守りたくない場合がある。


 それでも、何処かに書いてあった様に『合意は守られなければならない』それが根底にある。この理解正しい?」


「ああ、理解してくれて嬉しいよ」


 姫は、暫く俺を見て考えていた。そして、スーと近づき、俺の手を握り胸に手を当てた。


「怖いからそんなに興奮しないでね。お兄ちゃん程度なら、本当は嘘発見器があれば十分なんだ。だけど、無いから直接確認するだけ。


 良し、捕らえた。質問に、はい、いいえ、で答えてね。

 今、私に欲情している?」


「違う!」


「文章を書くのは好き?」


「ああそうだ」


「風呂場に監視カメラはある?」


「あ、ある訳無いだろ!」


「私の入浴シーンを覗いた?」


「俺は、ケダモノじゃない!」


「この国の名前は日本で正しい?」


「そうだ」


「では、さっきの説明をもう一度してみて」


 酷い羞恥プレイだが、諦めて、姫の要求に応えた。


 暫く、その姿勢で俺に説明させた後、俺から離れて姫は話した。


「合意は守られなければならない。その前提が厳然と存在する事は判った。それは魔術ではないし、必ずしも完璧でない事も判った。

 全く意味不明だけど、それを前提に解明するしかない。

 此処が異世界だということを、何処かで私が舐めていたよう。でも、これからは覚悟を決めて前進するわ」


「うぅ。少しは信じてくれよ」


「勿論、信じているわ。

 私が来てから、風呂場とトイレの監視カメラを切っているのは確認済み。何故、人が無防備になる場所に外部に繋がる窓があるのか、意味不明。だけど、そんな構造上、監視カメラが有るのは問題視しないわ。

 恥ずかしい思いをさせたのは、御免なさいね。でも、前に進むには、確証が必要だったのよ。

 お兄ちゃんが要求するなら、お礼に監視カメラをオンにしても良いわ。再生したかは、確認出来るから、害はないし」


「俺は、ケダモノじゃない。お礼はもっと普通の物で良いから(T_T) 」


次は「初の海外」です。

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