助手にしてみたらどうか?
ヒロインは、異世界転移者なので、生きる為には異世界言語理解のチートは必要です。
でも、交通機関が発達した世界での、異世界言語理解は、実は超チートのはずですw
幸姫は、不満そうな顔をしたが、断固無視だ。俺は、この話題は終了だと言う意味を込めて別の話題を出した。
「実は、さっきの本で気づいた事があるんだ。少し試してみて欲しい事がある。朝早くで大変だが、仮に上手くいけば、『つけ』なんて気にしなくてよくなるかも知れない」
幸姫は、俺を舐めまわすように何度も見て言った。
「私の純潔が掛かっているんです。早起き位は何でもありません。何を試す必要があって、どんな可能性があるのか教えてください」
喰いつきが良いな。
「世界には、沢山の言語がある。幸姫のチートである自動翻訳が日本語以外の言葉にも有効なら、もの凄く価値がある。人の仕草を読める技量と合わせて、俺の助手として働いてくれれば、キチンと給料を出すよ。
そのテストの一環として、朝早くからやっている語学放送にチャレンジして欲しい。番組表は、そこにあるから、片端から試して、どの程度理解できているか教えて欲しい」
「生活費は、お給料からの天引きですか?」
実際的だなぁ。
「それは、家事を手伝ってくれるか否かによるな。家事を手伝ってくれるなら、生活費は家事手伝いと相殺だし、手伝ってくれないなら、生活費分は『つけ』になるか、お給料からの天引きだよ。それほど、変な話じゃないでしょ?」
「お給料の額は?」
「最初三か月は、月5万円だな。助手といっても色々教えなければならない事が多いし、手伝える範囲も狭い。助手として使うために必要な、様々な道具もコッチで準備する必要がある。その後は、その三か月の経験から考えるよ。
俺の稼ぎから出す必要があるから、月15万が限界かな。まあ、それが不満なら、語学なり料理人の資格を取って、別の稼ぎ口を見つけても構わない。倹約して貯金すれば、資格を取る原資はそのうち溜まるだろう」
「私の躰に執着して、監禁したりとかは考えない?」
「だから、そこまでケダモノじゃないって。そりゃー、可愛いなとか、親密な関係になりたいなとか、下心はある。だけど、執着のあまり暴力を振るったり、監禁したりは、この国の法律では重罪だよ。それ以前に、男としての誇りとか名誉とかをドブに捨てる行為だ。
まともな人間なら、女を口説き落とすのに失敗しても、傷心旅行をするとかやけ酒を飲む程度だよ」
幸姫は、暫く悩んだ後に、意外な事を聞いてきた。
「重要な事なので、誤魔化しなく教えてください。『法律』と『傷心旅行』と『やけ酒』の意味を教えてください。傷心旅行は、居たたまれなくて遠くに逃げ出す。やけ酒は、身体を壊すまで酒を飲む。そういう風に解釈すれば理解できます。
だけど、特に『法律』は何を言っているのか判らない。仮に、「ボスからの掟」と解したら、全く理解不能な話です。この群れは、今二人しか居ない。兄さんが「ボスからの掟」を変えても、私には抗うすべがない。結局、私にとって何の保証にもなりはしない」
法律が、翻訳不能とは……全く想像の外だった。
『傷心旅行』と『やけ酒』の説明は、『法律』に比べれば簡単だった。お花畑の国の人間は、クレイジーなくらいシャイなのだと理解したようだ。だが、『法律』については、手を変え品を変え説明しても、どんどん誤解が広がっていくような感じがする。そして、ようやく幸姫が理解を口にした。
「殺人や強姦、監禁の禁止は3代前の天皇陛下の時代に、『刑法』とかいうスーパーボスのスーパー掟紙が作られて、日本国の全ての人──それこそ総理大臣とかいう人すら──従う掟になった。
それを破った者が出た場合、『職責』に従った何十万もの警官らが、草の根分けて、地の果てまで追いかけて、『裁判』という儀式に掛ける。そして、犯罪者として牢屋に放り込まれるか、殺されるかの罰を受ける。
さらには、この国の殆どの人が、それを当然の事として支持し協力している。
そういう理解で正しいのですね? ふ・ざ・け・る・な」
何故、『ふざけるな』なんて言われるんだろう。
「何が変なのかな? これまでで一番近い理解だよ。それは」
「最も実力がある総理大臣が、故人が定めた掟に従うのがまず可笑しい。
掟を破っても、故人には何も出来ないのだから。
掟破りに対して、動員できる手下の数が異常過ぎる。
季ノ家全ての手下を合わせても、とても足りない。一人のボスでどうにか出来る数じゃない。
掟の実施に裁判なんて儀式が必要。その理由が全く判らない。
掟を維持するのはボスなのに、ボス以外が裁くなんて、完全に論理が破綻している。
最後に、会った事も無いボスの掟を支持する人が沢山いる事が理解不能
誰が、その人たちと掟を交わしたというの?
仮に、お花畑の国の魔法だとしても、信じられない。私は、誤魔化されない」
「うぅ、俺も何故理解できないのか理解できない。ちなみに、この世界には魔法なんてない。少なくとも、今の話と魔法は関係が無い」
耐えかねたように、幸姫は涙を流し始めた。
「私の命と純潔の話なのに、ふざけた話を信じる以外の手が無いなんて……気が狂いそう。
命と純潔なら、純潔を諦めるしかないけど……考えるだけ無意味ね。だって二者択一だもの。本当に『刑法』が存在して私の命と純潔、両方守られている。あるいは、実は『刑法』なんて嘘っぱちで、私の命と純潔、両方ともケダモノの手中にある。どちらかだわ」
「いや、マジ俺そんなケダモノじゃないから、何度でも同じことを幸姫の目の前で言うから、信じてくれよ」
「疲れたわ。前に進まない話は脇に置いて、実際的な話を進めましょう。私の命が掛かっているの。だから、家事も助手も早起きも全てするから、私の事を少しは憐れに思って、酷い目には合わせないで」
俺は、何とか幸姫の不安を解消して、幸せにしてやりたい。思いが心の底から湧き上がる。幸姫が幸せになるなら、破産したって構わないや!
次は、「幸姫の仕事ぶり」です。




