勇者と魔王編(5)
「ふーんふふーん♪」
城下町の商店街で、ある男が、鼻歌交じりに歩いていた。
彼の名はユウヤ・コンゴウ。名前から分かる通り、異世界人である。
彼が召喚されてから、早いモノで、2年が経過していた。
彼は、勇者だが、勇者の役目を放棄した勇者だった。自分の次に召喚された、言わば後輩勇者が、魔王を討伐したらしい。
その情報を聞いた時は、心が震え上がった。
自分にも魔王は倒せるのだと。しかし、現実はそう甘くはなかった。
その後輩勇者は、聖剣を使えるのだ。そして、自分は使えない。その事にいくら嫉妬した事か。
だが、ユウヤはあきらめなかった。努力に努力を重ね、遂には、冒険者の中でも指折りのエリート、ミスリルの称号を手に入れたのだ。それがついさっきの事である。
「こんな気分のいい日にゃあ、飲みたくなるなぁ。」
そんな事を呟いていると、誰かが肩にぶつかった。見ると、一組の男女だった。
(昼前からいちゃつきやがって。リア充爆発しろ!)
そう思ったユウヤは、八つ当たりの感覚で、男の方に絡みに行ったのだった。
「おい、にぃちゃん。ぶつかっておいて、ゴメンナサイも言えないのか?」
と。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
時間を少し遡る。
神崎さんのサービスシーン?をなんとか回避した俺は、ある条件を突き出されていた。それは、
『今日の訓練までの間。つまり、午前中は私の買い物に付き合うこと!』
だった。
いや、正直嬉しいんですけどね。なんというか‥‥俺でいいの?的な感じが出てるというか‥‥いや、どうせ俺はチキンですよ?
と、そういった訳で、俺達は街に繰り出していた。服は、平民的な服をバルムさんに借りた。神崎さん曰く、
『うわぁ!熊倉くん、すごく似合ってるよ!』
との事。いや、庶民的な服が似合うって言われても‥‥‥‥なんか悲しいよね。と思う俺がいました。
まず、1軒目。ファストフード店!
‥‥‥‥え?何でこんなのがあるのかって?なんでも、初代勇者が広めたらしい。これで、初代勇者ひきこもり説が強くなった気がする。
そして、2軒目。ユニ○ロ!
‥‥‥‥え?何でこんなのが‥‥(以下略)
神崎さんの色々な服や衣装?を見れて、俺、感激っす!
気づいたけど、この国には、勇者の文化‥‥っていうか、日本の文化が根付いている。ユ○クロしかり、マクド○ルドしかり。
っていうか、初代勇者がほとんど広めたらしい。ホント何者だよ初代勇者。
そして、3軒目に行く道の中、人通りが多かったため、人ごみをかき分けて進むしかなく、神崎さんと手をつないで、歩いていたところ、一人の男性とぶつかった。謝ろうとしたけど、神崎さんがどんどん先に行ってしまうので、謝れなかった。その直後‥‥男の人から声をかけられた。
「おい、にぃちゃん。ぶつかっておいてゴメンナサイも言えないのか?」
と。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ああ?ダンマリか?‥‥お?いいねぇちゃん連れてんじゃねぇか。よし、そいつで手を打ってやるよ。」
‥‥‥‥コイツ、当たり屋だよな?無視していいかな?
「俺が誰だか分かってるのか?」
いや、全くご存知無いです。むしろ、あなたみたいなチンピラ、覚えてる人の方が少ないんじゃないんだろうか?
「俺は、ミスリル級冒険者だぞ!」
ふーんミスリルねぇ‥‥強いかさっぱりわかんねぇ。
‥‥取り敢えず、イラついたから、喧嘩に乗ってやろうか。
「ふーん。おじさんでいいのかな?」
「あ!?お兄さんだろうが!」
自分で言うとか、こいつ何なんだ?
「じゃあ、お兄さん。」
「あ!?」
「‥‥喧嘩しようか(ニコッ)」
瞬間、男の人の腹を殴る。それを受けて、男は‥‥
「ハプン!」
「‥‥‥‥え?」
1発で悶絶。その場に蹲ってしまった。
え?俺やりすぎた?あ、勇者補正かかってる?一般人は殴っちゃ駄目だったの?
「‥‥‥‥‥‥(ヒクヒク)」
なんか痙攣してるし。ヤバクね?俺、犯罪者として捕まらね?
そう思った瞬間、
「お前達!こんな人の往来が激しいところで何をやっている!」
警備兵がこちらにやって来た。
‥‥‥‥南無三!
書いてて思ったんだけど、主人公強くね?