勇者と魔王編(4)
な、何なんだよこれ‥‥
俺は、叫びたい表情をぐっと堪えて、青い顔でポテチを口にする。
「どうしたの?顔、物凄く青いよ?」
神崎さんが心配してくれているが、今はそれどころではない。
俺は、何度もステータスを見返す。見間違いかもしれないという、希望を持って。
しかし、そこにあるのは、依然として、『魔王』の二文字だった。
マジかよ‥‥‥‥俺が魔王?じゃあ何か?勇者の俺が魔王の俺を殺すとか?自害せよとか言われるわけですか?それだけは絶対に嫌だな。
っていうか、そもそも、勇者と魔王って両立させてる時点でおかしいよね。しかも、聖剣と魔剣両方持ってるし。これチートじゃね?
「ーーーキサン?ーーズキさん?カズキさん!?」
「‥‥‥‥はっ!?」
考え込んでいると、ファルから声が掛かった。
「‥‥‥‥えっと、はい。何でしょう?」
「皆さん、食べ終わったようで、自室に戻られましたけど‥‥」
「‥‥へ?」
辺りを見回すと、もう食堂には誰も残っていなかった。そして、俺の皿を見ると、ポテチが山盛りで置かれていた。
「‥‥え?こんなに多かったっけ?」
俺が困惑していると、ファルが答える。
「竜也様が、『カズキはこれが好物だから、残した人は、コイツの皿に置いておけば、食ってくれるぞ。』と仰って、みなさん、あなたのお皿の上に置いていき、このような状態になったわけですけど‥‥」
竜也ぁ~!アイツ、後で絶対殴ってやる。
「確認のため、もう一度言わせていただきますが、本日、正午より、食事を食べしだい、訓練上に向かうとのことです。時間に送れないよう、くれぐれもご注意ください。」
「はい。分かりました。」
そして、俺は、山のように積まれたポテチをいかにして食べるか、という事を考えるハメになるのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※
「うップ‥‥もうポテチは食べたくない‥‥」
「あははは‥‥どんまい!」
俺の部屋に戻ると、そこには、神崎さんがいた。まあ、そんな事はどうでもいい。いや、良くはないけど。今はそれよりも大事なことがある。
‥‥‥‥魔王のことをどうするか、だ。
「ねえねえ‥‥熊倉くん?」
一番いいのは、黙っておくことだろう。ここには、ステータスを確認する術がない。黙っておけば、何ら問題ないだろう。
「‥‥熊倉くんってばぁ~。」
誰かに相談する?いやいや、そんなところを誰かに聞かれでもしたら、それこそ、俺が殺されるよ。
「‥‥熊倉くんが無視し続けるなら、私、ここで服を脱いで、大声上げるからね!」
‥‥‥‥よし、黙っておこう。黙っておくのが、俺にとって安全で、一番いい手だ。
‥‥‥‥‥‥ん?なんか変なことが聞こえたような‥‥‥‥
見ると、神崎さんが、制服のボタンを外している所だった。
おおう‥‥神崎さんスタイルいい‥‥って!
「いやいやいや、はい、無視しません!すみませんでした!だから脱がないで!お願いします!この通りです!」
そこには、魔王と勇者の職業を持つ、チーターが、1人の、少女に全力で土下座をする光景が広がっていた。
っていうか、俺なんだけどね。
誤字脱字などがありましたら、教えてください。ブクマ、評価お願いします。作者のモチベが上がるので‥‥(笑)