第七話 妖精の力
『やぁぁぁあっと!会えた!』
俺は今あの過去の忌々しい見るのも嫌なあの部屋にいた。ここではいい思い出なんてものは一切なく
「ねぇねぇ!」
思い浮かぶのは嫌な思い出ばかりだ。
しかし何故こんな所にいるのだろうか。先程まではサバナの家の部屋にいたはず
「聞いてるー?」
俺には何故こんな所にいるのだろうか。まさか今までのは全て夢ということだろうか。
「もぉ、無視しないでよ!こうなったら…」
あの幸せだった日々は俺の思い描いたたただだだだだ!痛い!
頬をつねられた。まぁ、さっきから故意に無視していたこの羽の生えた虫のようなものに抓られたらしい。
「いてぇな、何すんだよ。」
「シオンが無視するからでしょ!」
大きさが消しゴムくらいのこの虫みたいな奴の正体は大体検討がついていた。
「お前が妖精ってやつか。」
そう妖精。その姿は小さな女の子で金色の髪の毛をしており、髪は短めだ。羽は羽ばたいていないのに飛んでいる。不思議な生き物。
そして、俺の魔力で使うことのできる魔法の名前。
「ええ、そうよ!あたしが妖精のワンサーラよ!サーラってよんでくれていいわよ!」
「じゃあ、サーラに聞いていいか。」
「なんでもいいわよ!」
「やっと会えたっていうのは前から俺のことを知ってたのか?俺の名前も知ってたみたいだし。」
そう、サーラは俺の名前を知っていた。それに初めましてといったわけでもない。
それなら俺はこいつを知らなくてもこいつは俺を知っているということになる。
「知ってるも何もシオンとはずっと一緒だったわよ。シオンが生まれた時からずーっとね。」
「生まれた時から?」
「そうよ!あたしはあなたの赤ちゃんの頃を知っているし、あなたがしてきたことも、されてきたことも、あなたの痛みも、苦しみも、喜びも全て一緒に感じてきたわ。」
「全て?」
「ええ、あなたの辛い記憶から恥ずかしい記憶、隠しておきたい記憶も全部知ってるわ。」
えぇ!プライバシーが!ひどいこんなの許されない!
「一緒にいたのに俺は気付かなかったのか。」
「まぁ、仕方ないわよ。向こうじゃあたしはシオンから出られなかったし。」
「出られない?」
「そうよ。あたしはシオンの魔力を使って初めてこうして姿を外に出せるの。こっちの世界は魔力を使えるんだけど向こうだと使えないのよ。」
つまりはこっちの世界じょないと外には出てこれないから俺は気がつかなかったし、こいつも俺のことが見えていても鑑賞はできなかったということか。
「サーラ。」
「なに?」
「アーサーって奴知ってるか?」
そう、初代国王アーサー・アルベニア。歴史上最強の人物。そして俺と同じ魔法を使えたという唯一の人物。
つまり妖精が同じならサーラはアーサーにも使えていたということになる。そうすると色々と昔の情報が聞き出せるのだが。
「アーサー?誰?」
世の中そこまで甘くないようだ。
まぁ、同じでない可能性の方が高いわけだし、仕方ない。
「なら妖精魔法ってどんな魔法なんだ?」
「あ!それならわかるわよ!」
ふふん!と言わんばかりに腕を組んで自慢気にしているサーラ。
「いい?妖精っていうのはね、全ての魔力の素なの。」
素?なんだかよくわからないなと首を傾げているとサーラが俺の肩に着地しすわった。
「んー、そうね、わかりやすく言うなら他の人より強い魔法が使えるのよ。それに同じ魔法でも威力が違うわ。」
「普通のやつとどのくらい違うんだ?」
「そうね、まぁ、こっちの世界にある一つの大きな町、一つ潰せるんじゃないかしら。」
町。そこには当然魔法を使えるやつや、剣の腕が立つものもいるだろう。それでも潰せると言うのだろう。
「…はぁ、そんなに強くなくていいのに。」
強い力。魅力的なのだがそんなにいいことばかりじゃないのはわかりきっていた。
俺が陰鬱な気分になっているとサーラが頬をプニプニと押してきた。
「元気出してよ。それにまだあるのよ!出来ること!」
「何ができるんだ?国は潰さんからな。」
「そんなつまらないことじゃないわよ。あたしはシオンの魔力を使ってここに出てきているって言ったわよね?つまりその逆もできるの。」
「俺がお前の魔力を使えるってことか?」
「正確には力が使えるんだけどね、光栄に思ってくれていいわよ!」
「力って具体的にはなんだ?」
力とはどういうことだろうか?妖精というとなにか魔法を使うイメージがあったんだが。
「あたし、つまり妖精の力を使えるのよ。妖精の力っていうのはね、まぁ、簡単に言うとあたしと同化することね。」
「同化?」
「ええ、そうよ。あたしと同化してさらにパワーを足すの。まぁ、あたしの力を貸せばそれこそこの国だってシオンのものね!」
「まぁ、俺にはそんなつもりはないけどな。」
力は人に振るうためにあるんじゃない、人の為に振るうためにあるんだ。守り、助け、救う。そうすると心に誓ったんだ。
「シオン、わかってるわ。冗談よ、冗談。だからそんな厳しい顔しないで。」
俺の顔の前まで飛んできてそういったサーラの顔は少し寂しそうだった。
「お前もそんな顔すんな。可愛い顔が出しなしだぞ。」
「知ってるわよ。だからあなたも笑って?そしたらあたしも笑えるの。」
そう言ってサーラは笑った。
「てか俺そろそろ寝たいんだが。」
「そうね。残念だけどもう朝みたいよ。」
「まじかよ…」
こんなに寝てる時頭使って大丈夫かな。朝起きたら禿げてるみたいなことありませんように。
「まぁ、そんなこんなでこれからもよろしくね。」
それを最後に俺の意識は遠のいた。