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俺に異世界は向いてない  作者: 赤白 蒼
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第二話 異世界を救う手助け

少しだけ整理する時間を貰った俺たちは話し合うことにしてみた。


「ねぇ、シオン…これどういことだと思う?」


ハルの口から出たのは意外に弱音などではなく、落ち着いたものだった。


「…わからん。でも、おそらくテレビのドッキリや、誰かのイタズラって言うわけじゃなさそうだ。」


そう。仮に誰かのドッキリやイタズラだったとしたら、それは余程手の込んだイタズラだろう。


だがそれはあり得ない。


簡単なことなのだが、俺たちはドアを開けて今ここにいる。だが今そこにはドアがない。

例え、周りをなんらかの手段で真っ暗にして、俺たちが出た後に黒いカーテンか何かで隠したとしても、ドアの姿は隠せても、形までは隠せないだろう。教室型の大型のセットを用意してそれを俺たちが出た瞬間に移動させたとしても音が何も聞こえなかったありえない。

それに加えてあのフワフワ浮く自称神様だ。

ドッキリやイタズラと考えて色々辻褄を合わせるより、あいつが言った通り、『なにか俺たちのいる場所とは違う場所に呼ばれた』といったほうが俄然納得がいく。

納得はできても理解ができない。

なぜ俺たちなのか。

悩んでいても答えはでない。現状、俺たちはアイツからしか情報を得られない。先程はパニックなっていたが、素直にあいつにどういう状況か聞いたほうがいいだろう。


「なぁ、いくつか聞きたいことあるんだけどいいか?」


「……」


返事がない。どうしたんだろうか、と思いフワフワ浮いている奴に近寄り顔を覗いてみると、なんと…!思いっきり寝ていた。

マジかこいつ。


「おい、起きろ。」


ほっぺをツンツンしてやると、うーんとか言いつつ、俺に抱きついてきた。

あれ?おかしくない?ってか顔が近い近いいい匂いするし柔らかいし近い!

だが、こうして初めて気がついたんだが、俺たちとほぼ同年代ぐらいの女の子の容姿をしている。髪は青みがかった色をしている。そして寝顔も、ものすごくかわいい。それこそこの世の物とは思えないほどかわいい顔立ちをしている。なにか言っているようだが寝言なので何を言っているかまではわからない。


「ねぇ、お楽しみのとこ悪いだけど早くおこしてくれないかな?」


顔は笑っているけど、目が物凄く怖いハルさんが声をかけてきた。やはり紳士。怖い。


「あぁ…すまん。」


悪くなくてもすぐに謝る。これは夫婦円満の秘訣だと昨年離婚した先生が言ってたぜ。説得力がある。


「おい、起きろー。」


軽くデコピンをしてやる。するとむー、って言って俺の胸で顔をスリスリし始めた。

なにこの動物かわいい!おもちかえりぃ!としたいところだが今は男の鏡のジェントルマンハルさんがさっきより怖い目でこちらを睨んでらっしゃるのでそうはいかない。

どうしたものか、悩んでるとようやく目が覚めたらしく顔を上げた。

まぁ当然上げた先には俺の顔があるわけでして、目があった。すると顔が真っ赤になってしまい、恥ずかしそうに俺の元から離れていった。


「………」


沈黙。なにこれ俺が悪いの?なんか俺が悪いのーってヒーローいそう。オレガワルイノー。いない?あぁ、そう。

とりあえず気まずいので質問をするとしよう。


「なぁ、いくつか質問いいか?」


「あ、うん、いいわよ。」


ハルに、先にする?と聞くと先にいいよと言われたので遠慮なく聞くことにする。


「ここは何だ?」


「うーん、なんと言ったらいいかしら。アタシが作り出した空間、とでも言えばいいのかしらね。」



なるほど、わからん。

こいつが言っていることが本当なら、作り出した空間ってことは、こいつやはり神様かどうかは置いといてなにか人外の特別な何かなんだろう。

そして自称神様は更にこんなことを言い出した。


「その気になれば世界でも作れるけど、ここでは説明するだけだし手抜きでいいでしょ。」


「あ、ありがとう。なんとなくわかった。」


とりあえずこいつは人以外の、それこそ神様のようなものなんだろう。

今はそれで納得しておく。


「じゃあ次に、お願いってなんだ?何をすればいいんだよ。」


「それはね、アタシに力を貸して欲しいんだよね。」


あっ、すごい嫌な予感がする。具体的は夏休み前にとてつもないプリントの山を抱えてくる先生を見た時と同じぐらい。


「アタシの世界を救ってやって欲しいんだ。」


宿題など霞む見えるほど、それはとてつもないお願いだった。




----




それからいくつか説明を受けたが分かりにくかったのである程度まとめてみた。

どうやら、この自称神様が作った俺たちのいる世界とは別の世界のバランスが乱れているらしい。それをバランスを整えるめにはその世界に8人いる『魔女』が建てている8本の塔を全て破壊しなければいけないらしい。

お願いというのは、その塔を一本でもいいから破壊してほしいというものだった。

自分でいけばというと、神が世界に降りるのはあまり良くないことらしい。なんでも、天災が起きてしまいそれこそ世界が終わってしまうかもしれないらしい。

全部破壊しなくていい理由はアンタ達だけに全部やらせるなんて良くない、別のはまた他の人を呼んでやってもらう、ということみたいだ。

要は異世界に行って、その世界を救う手助けをしろってことらしい。

馬鹿げている。なんの条件もないならなんとしても断る所だろう。

しかし耳に残っているのは、あの悪魔の囁き。


『アンタ達にはアタシのお願い事一つ叶えてもらう。無事に叶えられたらアンタ達のお願い事も叶えてあげるよ。』


俺にはなんとしてでも取り返したいものがある。その為なら異世界にだって、地獄だって、どこへだって行ってやる。

俺は混乱しつつも、最初からこれがチャンスだと思っていた。それをみすみす逃す訳にはいかない。


「だいたいわかった。俺はいくよ。だが改めて確認させてもらう。願いはなんでも叶えてくれるんだよな?」


「えぇ、必ずなんでも叶えてあげるわ。」


自称神様は真剣な眼差しでこちらを見つめてそう言った。そこに嘘をついて様子はなかった。俺の決意はさらに固まる。

しかし、気掛かりなことが一つ。ハルのことである。どうするんだろうかと、ハルの方を見てみると考えているようだった。だがこれが普通だ。

俺みたいになにか特別な理由がなければ行く必要もないんだから。

説明を受けた時に聞いた話だと、もちろん怪我もするし、最悪死んでしまう可能性があるらしい。そんな危険な場所にやすやすと足を踏み入れたい訳がない。

俺は声をかけた。


「ハル。どうするんだ?まぁ、危ないし、たいした願いごとがないならやめといたほうがいいぞ。」


「…いや、もちろん僕もいくよ。どうしても叶えて欲しいお願いがあるし。」


言葉こそ軽いものだが、その瞳にはしっかりとした意志が感じられた。それを見てしまった以上もう何も言うまい。

俺は改めてその自称神様の方を見る。

すると彼女は咳払いして、俺たち二人を見る。


「二人とも行ってくれるのね?」


行ってくれるのね、という辺り彼女も俺たちに申し訳ないと思っているんだろうか。

俺たちは無言で頷く。


「わかったわ。じゃあ簡単にアンタ達を送る世界について説明するわよ。」


異変のことについては先程聞いたが詳しいことは話されなかった。情報は多いほうがありがたい。


「アンタ達を送る世界は、アンタ達人間が進んで行った機械文明とは違う、精霊や術などが進んでる文明の世界なの。つまりは『ゲーム』や『本』なんかで良くある『ファンタジー』の世界ね。」


想像はしていたが、やはりそういうファンタジー系なのか。異世界と聞いた時、俺は最初にそれが思い浮かんだ。


「一番大きな違いは魔法があることで、魔法っていうのは世界中の万物にある、魔力っていうのを使うと出来るんだけど…まぁ、細かい所はいけばすぐわかると思うわ。」


「めんどくさくなったろ、今。言葉は通じるのか?」


まぁ、確かに違いなら目で見た方が早いかもしれない。だが言葉は大切だ。会話が出来なければ、情報を貰うことも、買い物することもないだろう。


「言葉は大丈夫よ。アンタ達が今喋ってる日本語が使われてるわ。ただし、文字がちょっと違うのよね〜…まぁ、文字はアタシが読めるようにしといてあげる。感謝してよね。」


ありがたや、ありがたや。言葉を読めるようにしといてくれるのはものすごく助かる。本とか読めないしな。


「あとはそうね、バランスが乱れてるとは言ったけどなんのバランスか言ってなかったわね。乱れているのは、さっき言った魔力、そしてそれを乱しているのは『魔女』ね。」


さっき聞いたが魔女というのはどんなものなんだろう。イメージとしては、老婆で箒とか持ってて身長が低く小太りしてるイメージがある。


「魔女っていうのはね、いわば人が突然的に変異してしまったものなのよ。でも、変異したのは姿形じゃなくて、使える魔力の量なの。普通の人間が使える量を1だとすると、彼女たちは、そうね、無限、と言っても過言ではないかしら。」


実際、どれくらいの量なのかはわからないが、ただ、普通の人間なんかとは桁外れに違う強さなんだろうというのはわかる。


「でも過去にもそういう突然的に変異した子達が一人や二人、生まれてくることはあったの。でもその世界の歴史7651年を振り返ってみても、今回のように8人同時になんていうのはなかった。」


「でも、魔力を使わないなら問題ないんじゃないのか?それともそいつらの存在自体がダメなのか?」


「いいえ、そうじゃないわ、シオン。

彼女たちに別にどれだけ魔法を使われてもなんら問題は生じないの。」


「じゃあ、なんで?」


ハルが不思議そうに聞いた。すると自称神様は微笑みこう続けた。


「アンタ達…いや、アンタ達は違うかもね。

人間は強大で、それこそ恐ろしいほどの力を持っている者が近くにいたら、どうすると思う?」


俺は気がついた。こういう話を聞いたことがあるし、ハルがそうされたように。


「そう、気づいたようね。その者は拒絶された。生まれてきて両親に拒絶され、その村では拒絶され、しまいには村を追い出されたのよ。」


ハルと目があった。確かに俺が知っている物語でも拒絶された奴がいた。でも、気になることがあった。


「でも、普通すごい量魔力を使えるからってそこまでされるか?」


だってそうだろう。普通に生活していたなら、なんら問題ないはずなのだ。強くて優秀でいいはずだ。


「そうだよね。それにどうやってその人が魔女だとわかるの?それともかくしておけないものなの?」


ハルがそういうと自称神様(略:神様)は微笑えんだ。


「本当に優しいのね。そうね、何も無かったら人々もそんなに怖がらないでしょうね。彼らが怖がるのはね、一番最初に生まれてきた魔女が当時、国を滅ぼしてしまったの。それ以降、魔女は国に不幸をもたらすというとこで忌み嫌われるようになってしまったの。」


なるほど。一番最初のものが印象として残り続けているということか。


「本当に全員が全員、そんなに危ない奴らなのか?」


「いいえ、そうじゃないわ。一番目以外はほぼ全員大人しいわ。当然、人間嫌いだわ。

で魔女を見分ける方法だけど、魔女は9歳になると手の甲に『☆』のマークが出るの。だから9歳の時に初めて魔女とわかるわけね。それまで普通に生活していたのに、突然みんなの対応が変わるんだからね。人間嫌いや、人間不信になるなって方が無理な話ね。」


最初の印象が強く根付いている。印象、特に最初の印象ともなれば強烈なほど後にも響いてくる。その結果、今も恐れられ、厄災から逃れるため大人しかろうが、何だろうが村から追い出すというわけか。


「それでアンタ達にして欲しいのは魔女が村から追い出された後に住むところとして建てる『塔』を破壊して欲しいんだけど、その方法は2つ。魔女の息の根を止めるか、魔女自身がその家を破壊するか、どちらか二つに一つしかないの。彼女たちは塔が同時にいくつもあると魔力のバランスが崩れることをわかっていないわ。わかっているなら彼女たちも塔を建てないはずだから。」


下手したら自分も魔法使えなくなってしまうからな。

さて、塔を壊す方法だが前者は、息の根を止める。つまりは殺すということ。これは現実的ではない。まず国を滅ぼすっていうほどの力を持ってるのに俺たちが立ち向かったところでは歯が立たないだろう。

となると、後者の魔女自身が塔を壊すといものなのだが、人間嫌いしている彼女達に対してどう言っても話を聞いてくれなさそうな気がする。

いきなり来て、世界のバランスが崩れてるから家壊せって言われるのだ。しかも嫌いな奴が。俺なら聞く耳を持たない。

あれー?両方ともできそうになさそうだなー?


「まぁ、こんなもんかしらね。あと、時間とかは気にしなくていいわよ。あなた達の世界の時間は止めてあるしね。急いで死ぬなんてことは絶対にやめてちょうだい。あと向こうの世界で色々と知る必要もあるだろうから、昔、名のある冒険者だった人の前に飛ばしといてあげるから、弟子になって、その人から色々教わりなさい。」


おぉ!ちょっと優遇された!でも、あんまり変わらないような気がする!

だが、時間余裕があるなら急ぎ過ぎない方がいいのは確かだろう。こういうのはだいたい、急ぐと失敗するのがお決まりってやつだ。


「ちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな?」


ハルがそういうと神様はなに?といって応じた。


「なんで僕たちなの?」


「…たまたまよ。たまたま。」


その言葉は明らかに濁っていた。

だが追求はしない。空気がそうはさせてくれなかった。


「さて、そろそろ質問もないでしょう?向こうへ送るわよ。っとその前にアンタ達お互いについて知らないことが多すぎるわ。送ってから向こうに着くまで時間かかるから、お互いのこと知っておきなさい。戦いの場では信頼が大事なんだから。いいわね。」


お互いのことを知らない。俺の方はハルに言っていないことがある。まぁ、こういう状態だしいつかはバレるから、先に言っといた方がいいのかもしれない。そこで脳裏を走るのは昔の記憶。消し去りたい昔の記憶。


(大丈夫、大丈夫なはずだ。ハルなら…)


俺はハルを見る。するとなにやら暗い顔して、下を向いている。さっきの言葉通りなら、ハルにも隠していることがあるということだ。なんだろうか。そう言われてしまうと気になってしまう。なんだろうかと考えているとと声をかけられた。


「さぁ、私はもう準備できたわよ。いいなら、この上に乗ってちょうだい。」


いつの間に準備したのか、そこには円状の薄い板のようなものがフワフワ浮いていた。

これに乗るといよいよか…怖いわけではない。だが妙に緊張するというかなんというか。すると手を掴まれた。その手は僅かだか震えていた。


「大丈夫だよね?さぁ、いこう!」


ハルは元気にそういった。そうだな。今更だな。叶えてもらわなきゃいけないこともあるし。

俺とハルは一緒にその板の上に乗った。


「じゃあ、いくわよ。」


そうして神様は手を前に突き出し上にあげた。すると板は上にどんどん上がっていく。スピードはそれなりに出ているはずなのだが、息苦しくない。流石親切設計。

そんなことより俺はどこからハルに話そうかなということで頭がいっぱいなのだが。

まぁ、いいさ。行こうか、異世界とやらを救う手助けに。


遅くなってしまい申し訳ありません。

次回から後書きはキャラ紹介にしたいと思います。では、次もよろしくお願いします!

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