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俺に異世界は向いてない  作者: 赤白 蒼
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第一話 変化は突然起こるものである

ピピピという機械音がなった。一般的に見ると小さめな音の源はこれもまた小さめの目覚し時計。朝が弱い人、また多少のことでは目が覚めない人なら起きないであろうそれは、自分的にはそれぐらいで充分だった。

時刻は7時ちょうど。いつもの時間だ。


(学校なくなってねぇかな…)


切実な願いだった。しかしそれは決して物理的な意味ではなく、昨日の天気予報で

『大きな台風が近づいてきているので明日の天気は大荒れになる』というものを見たので警報により夜のうちに雨が降り始め今も降り続けていれば、警報により学校が休みになるといったことである。

カーテンを開けてみると雨は降った形跡はあるものの止んでいた。というより晴れていた。


(予報だからな、別に期待して夜更かしとかしてたわけじゃないし、べ、別に大丈夫だし。)


最近は警報があまり出ないような気がする。人に害が及んだり、災害が起きない程度になら起きてくれた方がうれしい。むしろ、毎日出てほしい。それはもう警報じゃねぇか。

兎に角、警報が出てないのなら学校にいかなくてはならない。

キッチンに向かいトースターでパンを焼いて、その間に制服に着替える。中学の時からずっと続けてきた朝の行動である。だいたい靴下を履いたぐらいで3分が経つ。すると、チンッと音がなり、トーストが出来る。


「いただきます。」


そして一人で食べる。家族は皆家にはいない。いや、逆か。俺が一人暮らしをしているのだ。父と母も健在だ。兄妹はいた。しかし事故により死んでしまった。これはあまり触れないでいこう。あまり話をして良いものじゃないし、話したくない。

トーストを食べ終わり、

「ごちそうさま。」というと俺は食器を片付け始めた。

次は学校の用意だ。学校の用意は昨日のうちにしておけ、みたいなことよく言うけど前の日に準備すると絶対忘れ物するのって俺だけ?

準備も終わったのでボーッとする時間が始まる。これが中々面白い。あっという間に時間が経ってしまう。学校までは自転車で20分ぐらいだ。それまでボーッとしておこう。







------





うちの学校には術師がいるといえば大半の人間は、いるわけ…あっ…うんいるよねいるいる。と可哀想な目で見てくるだろう。

しかし俺たちの学年で術師といえば確実に全員に伝わるであろう。

その者の名前は小林一茶。

別名『睡眠術師』

今年で我が校に勤めて20年目のベテランの国語の教師である。独特の落ち着いたトーンとうるさくない声で授業をするため、授業を受けるとほとんどの者は眠りに誘われてしまう。その威力たるや並ではない、だからこそ、『睡眠術師』なんて異名をつけられているわけだが。見た目はいたって普通の優しそうなおじいさん。実際に物凄く優しく、いい人なのだ。授業も受けていて力がつくらしい。

『らしい』というのはちゃんと受けられる者が少ないからでなのだが。

とにかく、今はその『睡眠術師』の授業が終わり、全ての授業が終わったので後は終礼をする担任の先生を待っている。

基本的に国語の授業が終わればクラスの皆様の顔は眠たそうな顔をしているか、物凄く眠たそうな顔をしているか、もはや授業が終わったのにも気が付かずに寝続けているかと多種多様である。

その中で俺、海宝 紫音はこの授業を見事寝ずに乗り越えて、疲労の果てに机に突っ伏している状態である。

もうゴールしてもいいよね…?なんて思い寝ようと思ったことあったのだが、授業中寝ないのは俺なりのルールだった。

いや、別に昔、授業中に寝ててバレて怒られたのを引きずっているとかではないんだからね!勘違いしないでよね!

そんなこんなで激戦を潜り抜けた戦士の俺は突っ伏している訳である。


「相変わらず真面目だね。凄いや。」


突っ伏していても、声の主はわかっている。俺の友達にこんな可愛らしいの声の奴はただ一人。


「いや、なんの苦痛もなさそうに起きてるお前に言われてもイヤミにしか聞こえんぞ、ハル。」


そうして俺は顔を上げて伸びをする。

俺の横に立っていたのは、髪は綺麗な栗色でショートカット、体系は華奢で、顔立ちはそこらの女の子より可愛いんじゃないの?ってぐらい可愛い顔をしている。そして声も可愛らしい声をしている。

しかし、悲しいことに俺にはクラスの女子に友達と呼べるような親しい人間はいない。

つまり、どういうことか。

答えは簡単。この瀬田川 春は見た目と声こそ女だが、ちゃんとした男なのだ。

一番最初に見たのは中学生の時、その時は驚いた。えっ、こんな可愛い奴が男なの?そんなのって本の中だけのお話じゃないの?といった具合に。

まぁ、外見だけだろ。と思って話を聞いてるとなにやら性格は紳士的で優しいらしい。すげー、こんな完璧なやついるもんだなといった感じだった。

もちろんクラスの人気者で女子からモテモテである。そんなハルと一方、教室の隅で寝ているか、数少ない友達と喋っているかの窓際族の俺がどう仲良くなったのか。

あれは中学生2年生の頃、瀬田川 春が大企業の社長の子供というのがクラスで噂になった時だった。

その噂は真実だった。それが良くなかったのかもしれない。イジメが起きた訳ではない。ただクラスのみんなが少しハルに対して壁を作ってしまったのだ。

今まで仲が良いかった奴が急によそよそしくなってしまった。同時にありもしないような悪い噂も流れた。すると、ハルは段々クラスで隅に追いやられていった。

そんな状態が続いた一ヶ月後のこと。

美術の時間にペアでお互いの顔の絵を描くといった授業があった。もちろん俺は数少ない友達と組むはずだったが、どうやらみんなペアを作ってしまったらしい。

あれ?俺は?べ、別に辛くなんかねぇし。ほんとだからね!

仕方がない、普段とは別の奴等になるがペアを作るか。うちのクラスは偶数人なので、欠席がいない限り一人余ると言うことはない。

余った奴を探していると見つけたのは、ハルだった。

今でも覚えている。あんなにつまらなさそうな顔をしてたハルを見たのはあれが最初で最後だった。

そして俺は声をかけた。


『瀬田川君、ペア決まってる?』


するとハルは驚いた顔で俺を見た。

まぁ、普段ほとんど喋らない奴が声をかけてきたんだから、そんなもんだろう。


『え、あ、いや、決まってないけど…』


『そっか。じゃあペア組もうぜ。』


更に驚いた顔で聞いてきた。


『えっ、でも、ボクでいいの?その…噂とか』


少し暗い顔しながら、最後の方は小声になりつつも、聞いてきた。

俺は驚いた。自分がどうよりも人の事をこの状況で心配しているのかと。そして俺は思った。こいつは誰よりも優しいんだなと。だから俺は、俺だけでも普通に接してやろうと。


『噂か…まぁ、気にすんなって。俺は元から友達が少ないんだよ。だから減る友達もいない。というか、それで友達が居なくなったらお前が友達になってくれりゃいいよ。』


『えっ』


えっ、ってもしかして嫌なんですかね。カッコよく決めたつもりなのに。軽くショック。

そして互いの顔を描きあった。

そこからだろう。ハルがちょくちょく話かけてくるようになったのは。暇そうにしてる時や、ペアを組む時や、帰る時。そしてその度に色んな話をして、俺は瀬田川からハルと呼び方を変え、ハルは…最初からシオンだったか。

まぁ、そんなこんなで今に至る訳である。今ではそんな噂もなくなり、ハルはクラスの人気者で、女子からモテモテである。しかし俺は『瀬田川と仲良しだけど、ちょっと変な奴。』といった感じでクラスのみんなの印象は間違っていないはずだ。

ちょっと変ってなんだよ。何も変じゃないだろ!いい加減にしろ!

そんなことを考えながらハルの顔を見つめていた所、頬をぽりぽりっと掻きながら目を逸らされた。


「な、なにかな?ボクの顔に何かついてる?」


「いや、お前は将来どんな奴と結婚するのかなぁと考えていただけだ。」


「えっ!?」


ハルはこういう恋愛系の話題を振ると顔を真っ赤にする。純情なんだろう、三分の一でも分けて欲しいぜ。


「えっと…その…き」


「あっ、別に答えなくてもいいぞ。さっきの嘘だし。」


「…はぁ……」


あまり言いすぎると良くないと思ったんだがなにやらため息をされてしまった。


「ボクは今とっても傷ついたよ…

だから今日はここに行こうよ!」


そう言って目をキラキラさせながら俺の前に雑誌を出してきた。それを見てやると『春のスイーツフェァ』

という特集ページだった。

正直俺も甘いものにはめがない。だから断る理由があるはずもなく、


「いいね、行こうぜ。」


といった具合に二つ返事。

ハルも甘いものが好物らしく、前々からちょくちょくこういうものに一緒に行くことがあった。

今日はどんなスイーツが食えるんだろうな。そんな事を考えていると、担任の先生が入ってきた。


「あっ、じゃあ、そういことで。」


そう言うとハルは自分の席に戻っていった。そして終礼がはじまる。

するとこんな言葉が耳に入ってきた。


『一人は良いとして、もう一人はあの子でいいか。』


その声は聞いたことがないほど美しいもので、俺は振り返る 。

するとそこには、笑いながらライトノベルを読んでいる久保くんがいた。

まさか久保くんがあんな声出せたなんて…人には意外な特技があるもんだなと思いつつ、前を向いた。





-------





終礼が終わるとハルは俺のとこにすぐに来て、早くいこうよ!と腕を引っ張って来た。わかったから袖を引っ張るのはやめて。伸びちゃう。

俺もカバンを持ち、教室のドアに向けて手を伸ばした。そしてこのままスイーツフェァに行くはずだった。

そこには見慣れた廊下の景色ではなく、ただ真っ暗な空間が広がっていた。


「えっ…」


最初に声を発したのはハルだった。俺はというとただひたすら状況が飲み込めないでいた。

意味がわからない。なぜ、ここはどこなのか。後ろを振り返っても、さっき出てきたドアはなく、ハルしかいない。

困惑していたところ、更に追い討ちをかけるように、一人の少女が目の前に現れた。しかしそれはフワフワと浮遊しているものだった。そしてその少女はこう言い放った。


「よしっ、じゃあ、単刀直入にいうよ。アンタ達は私がここに呼んだ。そして、アンタ達にはアタシのお願い事一つ叶えてもらう。無事に叶えられたらアンタ達のお願い事も叶えてあげるよ。」


更に意味がわからなくなった。しかし、目の前のこいつが俺たちをここに呼んだといった。ならば聞くことは一つだろう。


「お前はなんだ?」


誰だ?とは言わない。人間でないことは、ハッキリとわかっているんだから。

すると少女はこう答えた。


「アタシ?アタシは神様だよ。」


俺はそうして色々と整理する時間をくれとその自称神様にお願いした。

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