第十二話 村の長
約一日。
感じられるハルの魔力を追い走り続けた。
辿り着いたのは塔。あの魔女が自分の住処として建てている塔であった。
「遠目から見たことならあったけど、やっぱでかいな」
「何メートルあるんでしょうね〜」
などと人質をとられていることを忘れているかのような呑気な発言をしている。
誤解のないよう訂正するが二人とも、人質の事を忘れているわけではないのだ。ただあの場ですぐに殺さず、連れ去ったということは凡そシオンがあの魔女に勝てば返すなどと発言するであろうことが予測できたからである。
それに何ものんびりしていたわけではなく三日かかる道程を一日できたのだから、そうとう急いでいたこともわかるだろう。
「じゃあ行きましょうか」
「ああ、そうしたいところだが………サーラ、ここら辺に村があるか探してくれ」
「村?何しに行くのよ。薬草でも買い溜めするつもり?」
「RPGならそうするところだが、そうじゃない。ちょっとばかり私用で行かなくちゃいかんのだよ」
「ふーん…まぁいいわ。そうねぇ、ここから西に三キロってところね」
西に三キロ。まぁ、半時間もあれば着くであろう距離だ。夜も遅い。今夜はそこに泊まろうとどこまでも呑気なシオンだった。
辿り着いた村の前には大きい門がついている高い塀が建てられていた。
「でかいわね〜」
「まぁ、そりゃ魔女の家の近くだからな。だが……」
まぁ、それは後回しだと、門に近づくと門番らしき者達に話しかけられる。
「とまれ!貴様何者だ!」
格好は全身に鎧を身に纏い、槍をもち、身長は高いが、どこか痩せていることがわかる雰囲気のいわゆるもやしを連想されるような体つきをしていた。
「何者だ!早く答えろ!」
「あー、はいはい。旅の者です。少し泊めてもらいたくてたちよりました」
「なに?旅の者だと?」
そう言い、そのもやしはジロジロとシオンを見た。そして納得したのか手を差し出してきた。
「いや、すまない。この村は知っての通り魔物が多くてね。気を悪くしないでくれ。私の名前はシュライダーだ。一晩ゆっくりしていくといい」
そう言いもやし、もといシュライダーは兜をとり微笑む。握手を交わした。
「さぁ、なにもない村だがくつろいでくれ。
《サナトゥの村》へようこそ。困ったことがあればなんでも聞いてくれ」
「あー、じゃあ早速一つ。聞いてもいいですか」
「なにかな?」
「魔女が生まれた村ってここですよね」
「………すまない。そのことは村では口に出してはいけない決まりでね」
「いえ、大丈夫です。こちらこそすいません」
案の定の反応だった。
そう、ここが魔女が生まれ、幼き頃に育ち、幼き頃に追い出された村。
ただし、喋ってはいけないというのは厄介だな。情報もろくに集まりそうにない。
「ならもう一つ。村長の家は何処ですか?一晩泊まる恩義もあるので挨拶しておきたいのですが」
「ああ、それなら村の一番北の端だよ。大きいからすぐわかるよ」
「ありがとうございます」
俺は礼を言い、そのいわれた家の方へ、足を向ける。
「村長になにか用でもあるの?」
「あぁ、どうしても聞いておかなきゃならんことがあるんだ」
シオンは先程まで隠れていたサーラの質問に答える。そしてその顔はどこか不安そうで、どこか悲しさを感じさせる顔をしていたという。
一方その頃。
「ん、んん……こ…こは」
目が覚めて最初に目に入ったのは鉄の棒がいくつも並んでいる光景だった。
頭の回転が速いハルでも、気絶させられて起きたばかりの頭じゃ理解が追いつかないらしい。
しばらくボーッとしたあと、そこは正方形の檻でそれが宙にぶら下げられているということがわかった。
そして気絶する前の出来事と合わせると合点がいった。
「あぁ、攫われちゃったのか……シオンはどうしているんだろう」
「あら、自分の心配をしたほうがいいんじゃないかしら?」
下にいる女…魔女にそう言われ、応えるように下を見る。なにやら本を読んでいるようでつまらなさそうに本のページを指でつまみながらペラペラ捲っている。
「あなたは今すぐ殺されてもおかしくないのよ?」
「…………」
そういう魔女……彼女にはシオンと対峙していた時のような殺気や負のオーラなどはなく、むしろ暖かさを感じるような魔力が出ていた。
「あら、だんまりかしら。つまらないわね。今まで読んだどの本よりもつまらないわ」
「………」
「それとも喋れないのかしら?私に怖気づいて怖くて震えることしかできないのかしらね」
「別にそういうわけじゃないけど…」
「あら、そう。ま、別に話し相手になって貰うためにここに連れてきたのではないのだし、別にいいわ」
そういうと彼女は立ち上がり、綺麗な金色の髪を後ろに流し、本を閉じてパタンと木製のドアを閉めて奥に引っ込んだ。
おかしい。
ハルが感じた違和感はなにもおかしなものではない。だってそうだろう。記憶に新しい彼女は敵意むき出しで鳥肌が立ったのに、今の彼女は鳥肌どころか暖かさがあり、どこか感じたことのある、いうなれば家にいるような安心できる魔力が溢れ出ているのだから。
別にハルは怖くて、恐ろしくて、嫌悪感を感じ喋らなかったわけではないく、只々戸惑っていたのだ。
彼女のギャップに。そして彼女あそこまで変えてしまうシオンに。
「シオン……」
不安そうな声が口から漏れる。その声は少年の耳には届きはしない。
場面は戻って。
「ここが村長の家か」
「思ったよりもボロいわね」
着いたそこには看板で村長と吊るしてある以外、他の民家とはなに一つとして変わりは無かった。
トントンと扉をノックすると出てきたのはいかにも村長感がある白髭が長く、腰は曲がっていて、杖をついていてもなおフラフラしているご老人だった。
「何か用かねぇ」
「すいません。今夜この村に泊めて貰おうと思ってご挨拶に上がりました」
「おぉ、そうかいそうかい。こんな何にもない村じゃけど、ゆっくりやすんでいってくだされ」
静かに微笑む村長に対してシオンに笑顔は無かった。
「あと村長にお聞きしたいことがあります」
「……?なんじゃね?」
「魔女のことについて聞きたいことが山ほどあります。この村では魔女のことは言ってはいけないようですけど、意地でも話してもらいます。こちらも仲間が攫われ、あまり余裕がありませんので」
そう言うとシオンは少しだけ魔力を放つ。少しだけ放つのには理由がある。あまり出しするぎるとおそらくこの村の住人は全員被害を被ることになるだろう。別に村を襲いに来たわけでもないので村の人には危害を加えたくない。
まぁ、魔力を解放しただけで人に被害を与えられる人間の数は指で数えられる程度にしかいないわけだが。
しかし、村長が見せた対応は予想外のものだった。
「ふぉふぉふぉ、若いとはいいものですのぉ。この老いぼれにそんなことせずとも話しますとも。それがこの村の決まりでもありますしなぁ」
少しだけといっても魔力を使ってない人間がピリピリ、言うなれば獰猛な獣と対峙したぐらい、カエルで例えるなら蛇に睨まれている時ぐらいのプレッシャーを与えたつもりだったのでこの反応は予想外だった。
「まぁまぁ、立ち話もなんじゃ、とりあえず上がりなされ。老人の話は長くなる故、飯でも食べながら話しましょうぞ」
遅れてすいませんでした。この言葉を紡ぐのは何度目になるんでしょうか。決して今季のアニメを見てて遅れたわけではないんです。そうですね強いて理由を挙げるならばアレが原因ですかね。そうですねアレです。本当にアレがアレで大変でしたよ。アレは本当に強敵でしたね。本当にアレはやっかいですから気をつけてくださいね。皆さんはアレには勝てましたか?僕は死に戻りとか覚醒とか体が銃に変形したりできないので難しそうです。
え?なんの話をしてるかって?いやだからアレの話を(以下略 遅れてすいませんでした。
あっ、僕は金髪ドリルが好きです。