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ドタバタパーティ  作者: 20あまり3
1/1

第一話~タウン・イン・キャッスル~

拝啓 父上様


久しくお顔を拝啓いたしておりませんが

お変わりございませんでしょうか。

まだ知らない世界をこの目で見たいと

そう決意して旅立ち幾分か経ちました。

見ようとすれば必然と見たくないものも目に入る、

それに目を背け立ち止まることもありました。

その度、立ち止まり足踏みをすることで気付かなかった

景色があることを知りました。

そして、前を向きゆっくりと歩み続けます。

立ち止まったとしてもまた新しい景色が見えるので。

それでは、またお手紙いたします。

どうか、お体を大事になさってください。


セキトより                          草々




書き終えるとセキトはペンを置いた。

こういった文章は本当に苦手だと実感する。

セキト達がこの街へ着いたのは昼ごろ。

宿をとり、それぞれ自由行動になったのはいいが

セキトは特にすることがなかったため宿屋で近況報告の手紙を書いた。

すぐに終わると思っていた作業は予想以上に時間がかかった。

旅の疲れもあり、ベッドで横になったセキトだが、


「あいつらどこに行ったんだ」


ふと思い、体を起こし、手紙をしまい身支度をして宿をでた。



タウン・イン・キャッスル



タウン・イン・キャッスル

そう呼ばれる場所は名前のとおり、城の中に街がある。

ほとんどの街は居住区や商業区、港がありその中心部に王族が住む城がある。

けれど、この町はすごく大きな城の中に街があるのだ。

そのため、一年を通して自然災害による被害が少ないらしい。

日の光は城壁にたくさんつけられたガラスから取り込んでいる。

夜になると等間隔に設置された街灯が点くようだ。

セキトはそんな街をあちこち眺めながら歩いた。

仲間と合流しようと街にでたがどこにいるか見当がつかない。

街に着いたときには、


「魔導書…たくさん…あればいいな…」


「かわいい女の子がたくさんいればいいですね」


「たくさんあそぶぞォー」


3人がそう言っていたのは知っている。

しかし…セキトには「たくさん」しか印象にない。

右手を頭の後ろにあて唸りながら歩いていたとき、

どこからか大きな声が飛んできた。


「お、いらっしゃい!冒険者だね!どこからきた!?」


声のする方を見るとどうやら露天商のようだ。

冒険者に売り込みをしているらしい。

どこの街でも見られる光景だ。


「ん、あれは…」


と、セキトは思い露天商の商品を眺めている冒険者に近づいて行った。


「お嬢ちゃん!冒険者だろう!?そして魔法使い!よくわかったろう!?なんせ俺はこの商売を

先代からひきついでもうにじゅ…」


「魔導書…ある?」


主人の言葉を遮るように少女がたずねた。

その少女は茜色の髪を前下がりにし、

それを縁取った小顔に大きな目そして濃赤の瞳。

黒色のエナン(帽子)をかぶり、

黒色に染められたローブを着けている。

すっと通った鼻筋に少し尖った鼻は、少女を大人びいて見せ

薄いさくら色の唇は、あどけなくも見せる。


「ある…?」


主人の答えを待たずに少女はもう一度たずねた。


「あ…あぁ!あるぜ!そこに積んであるのがそうだ!」


少しとまどった主人だがさすが商売人。

積み重ねてある6冊の本を指さし言った。


「見て…いい?」


少女を首を傾けながら聞いた。


「もちろん!気に入ったものがあれば買ってってくれよー!」


主人は気前よく答えた。


少女は積まれた本を一冊手に取り、

パラパラとめくっていった。すぐにめくり終えると次は逆から

パラパラとめくっていった。そして表紙に戻ると、

次はパラララとめくり本を閉じた。

そして、すぐに次の本を手に取って同じ作業を繰り返した。


「いやぁ~若いのに冒険者かい!何か事情でもあるのかい!?」


本を吟味する少女に主人はたずねた。

少女はこくっと一度頷いただけで何もしゃべらなかった。

黙々と作業を続けている。


作業を終えると少女はふぅと一息ついて、

主人の方を向き、


「…ありがとう」


とただ一言だけ告げ露天商を立ち去ろうとした。

主人もなにか不安になって思わず訪ねた。


「お嬢ちゃん何も買わないのかい!?どれもこれも最近仕入れた本で、

一番上の本なんか、魔法の盛んな国フェイジョエールで書かれた本だぜ!?

そりゃ値段は張るが、それに見合った内容のはずだ!なんなら少しはまけるぜ!?」


少女は立ち止まり振り返って答えた。


「全部…見たし…全部…わかったから…バイバイ」


くるりと向きを変えまた歩き出した。


「お…おい!全部ったって…!」


「わかると思いますよ」


そこに一人の青年が答えた。

その若者は透き通るような青い髪を持ち、

整った顔に白い肌。

体の線は細いが、その凛としたたたずまいは

どこか頼もしく見える。

腰に細い剣を差しており、剣士とわかるが

革のブーツに

灰色のウール素材のズボン。

白いシャツの上に臙脂色のベスト、その上に黒いフロックコートを着けている。

剣士にしては軽装である。

見ようによっては冒険者気取りの上流階級のお坊ちゃまにも見える。


声をかけてきた青い髪の青年に主人は聞いた。


「なんだい!?兄ちゃん!あの子を知ってんのかい!?」


「ええ。彼女は優秀な魔法使いなんです。一般の人とはずば抜けた頭脳をもっていまして。

本を読む速さは魔法を教えている先生たちのおよそ200倍くらいだったと思います。静かな場所だったらもっと速いんじゃないでしょうか。」


青い髪の青年は冷静に答えた。


「おいおい!じゃあもし兄ちゃんの言うことが本当だったら、あの子は本を全部読んで、全部頭に入った

ってことか!?いくらなんでもそれはできっこねぇよ!そんな奴がいたら本なんて売れねぇし儲からねぇ!どうせあの子は難しくて読み飛ばしたんだろう!」


信じられない主人が嘲笑うかのように言う。


すると少し離れた所からさっきの少女が戻ってきた。


「…伝え忘れた…上から4つ目…中級魔法学入門…23ページと…24ページ

言葉逆…文章的に逆…読んだ人…混乱する…あと…クスッ…絵が…フフフ…絵がへたくそ」


本に乱丁があった指摘と本に対する強烈な評価が少女から主人に伝えられた。


「まじかよ・・・」


そう一言つぶやいた後主人はがくっとうなだれてしまった。


「すごいですよね、こんな少女が。僕も最初会ったとき信じられなかったですから」


少し主人を気の毒に思った青い髪の青年は主人に声をかけた。


「あ…セキト」


その声に少女は反応する。


「セキト…でむかえ…ごくろう」


セキトに気付いた少女はそうつぶやいた。


「ははっ。また何かに影響されたね?まぁ、みんなを探してたからあながち間違いじゃないけど。

ネリア何かいい本は見つかった?」


街での収穫をセキトは聞いた。


「うん…やっぱり…フェイジョエール…すごい…おしゃれ」


ネリアはこくっと頷き露天商の積まれている本を見ながら答えた。


「へー、魔法にもおしゃれとかあるんだ?ところで、他の二人にはどこかであった?」


おしゃれといった言葉に少し疑問を持ったセキトだったが、

ちょっと前に魔法を習おうと、ネリアに教えてもらったが、

理解できない言葉ばかりで混乱したことをすぐに思い出し、

深く聞くのを止め、話題をかえた。


「ううん。誰にも…会わなかった。」


ネリアは首を振った。


「じゃあ、一緒に二人を探そうか?あの二人ほっとくと事件やトラブルの元になりそうだし。」


そうネリアに聞くと


「うん…うん」


ネリアもすばやく頷いた。

あの二人のいろんなやばさは共に旅をしているからわかる

そう言っているような頷きだった。


「よし、行こっか。それではおじさん、ありがとうございました。

また寄らせてもらいます。」


まだ、うなだれている主人にセキト達は一応お礼を言って露天商を後にしようとした。


「ちょっ!ちょっとまってくれ!」


主人がセキト達を呼びとめた。


「お嬢ちゃん!名前は!?名前はなんて言うんだい!?」


うなだれていたからか、ショックだったからか、主人には

セキト達の会話が聞こえてなかったようだ。


「ネリア…ネリア・モーエングローレ…」


ネリアは小さくつぶやいた。


「そうか!いい名前だな!お嬢ちゃんはきっと立派な魔法使いになる!

俺にはわかる!そんな立派な魔法使いが俺の店に寄ってくれた!

それだけでもみんなに自慢できる!ありがとよ!また機会があれば寄ってくれよ!」


そんな主人の言葉に

ネリアは何も言わずこくっと頷き主人に小さく手を振った。

セキトも小さくお辞儀をした。


そして二人は仲間を探しに街中へ歩いて行った。






















よろしければ、感想をお願いします。

初めてなのでどういった形になるのかこの先もわかりません。


見守って下さったら嬉しいです。

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