アップルティについて学ぼう
見識広稀陽学園、部室棟のとある一角。
長い艶やかな黒髪をした女性が佇んでた。
「皆様こんにちは。誰もが見惚れる和風美少女、『今知る部』部長の神田ゆりかです」
「わぁ~~!(パチパチパチパチ」
「ありがとう、菜々ちゃん」
ゆかりの挨拶に拍手で答えた良い子は、野島菜々ちゃん。ゆかりの一つ下の後輩である。
「今からアップルティでも入れようと思ったのだけど、菜々ちゃんも飲む?」
「あ、いただきます。」
「ちょっと待っててね」
一言告げ、部室の片隅にある戸棚からカップを取り出す。
「ゆりか先輩。今日は何についての知識を深めるんですか?」
テーブルに両肘を着いて、両手のひらに顎のせ、椅子に座りながら足をぶらぶらさせ、そんな事を聞く。
「もう、菜々ちゃん。お行儀悪いわよ」
ペロっと舌を出した奈々を微笑ましく見ながら、淹れたてのアップルティを渡す。
「そうねぇ、何がいいかしら」
「んー・・・。じゃあアップルティにしませんか?丁度今飲んでるわけですし」
まだ熱いのか、ふぅふぅしながらちびちびと飲んでいく菜々。
「そうね。じゃあ、アップルティについて今回は見識を広めてみましょう」
「はーい。ゆりか部長、よろしくお願いします」
菜々は両手を万歳しながら、元気よく返事をした。
「まずはね、アップルティとは、りんごのフレーバーをブレンドした紅茶の事をさすの。つまり、アップルティは紅茶と言う事ね」
「へー、別のものじゃないんですね」
「んー・・・それが完全に別とも言いがたいのよ」
「どうしてですか?」
菜々は疑問に思い、首をかしげた。
「アップルティにも色々あってね。さっき説明したタイプの他にも、スライスしたりんごを紅茶に入れるタイプとか、りんごの皮を煮詰めたお湯で紅茶を入れるなんてタイプもあるのよ」
「ほぇ~、色々な種類があるんですねぇ」
「ちなみに、菜々ちゃんが今飲んでいるものはティーパック式のりんごフレーバーが入ったタイプのものよ」
しげしげとカップの中を覗き込む菜々。
「ペットボトルで販売されているヤツなんかは、りんごフレーバーの他に果汁も入っている場合があるから、よりりんごの味が強くなっているわ」
「リプ○ンですね。菜々もたまに飲みます」
元気に返事を返す菜々を微笑ましく思い、頭をなでなでするゆりか。
「あぅあぅ・・・くすぐったいですよ、ゆりか先輩」
菜々は頬を赤らめながら、恥ずかしそうに俯く。
やわらかに微笑んだ後、そっと手を話したゆりかは、話の続きを行った。
「さっき完全に別とも言いがたいといったわよね?」
まだ、若干頬を染めているものの、菜々はコクンと頷いた。
「一般人はさして気にも留めないのだけれど、紅茶好きの人からはアップルティは邪道、紅茶ではなくまったく別物といった扱いを受ける場合もあるわ」
「なるほど・・・。飲む人によってさまざまなんですねー。」
「一般に浸透する程に知名度を上げた結果、市民権を獲得し、アップルティという独自の飲み物として完成したともいえるわね」
ゆりかは一呼吸置く意味で、少しぬるくなってきたアップルティー飲み、喉を潤した。
「赤りんごと青りんごでも、味や香りが違ったりして、フレーバーにも沢山種類があるのよ」
「そんなに種類が沢山あると、買う時に迷っちゃいますね」
「そうね。なんたって紅茶の資格なんてものまであるのよ」
「えぇ!本当ですか!?知らなかったぁ・・・」
驚いた表情を見せる菜々。
「宣伝になってしまうと困るので、興味がある方はインターネットを使って検索してみるといいわ」
にこりと微笑むゆりか。
「今日も色々勉強になりました」
菜々がぺこりとお辞儀をする。
「本当はまだまだ深いお話も出来るのだけど、あくまで私が行うのは、まったく意識していなかったものを意識してもらい、認識してもらう事。多少なりとも興味を持ってもらう入り口を作るのが目的だから、この話を聞いて詳しく知識を得たいと思ってくれたら嬉しいわね」
「スマホやケータイがあれば、自分が調べたいだけ、とことん調べられますからね」
「その通りよ。他人から教えられるのと、自分から調べて学ぶでは知識の付き方が違うもの。私はそのお手伝いというか、きっかけを与えるだけよ」
「ゆりか先輩カッコいいw」
キラキラした瞳でゆりかを見つめる菜々。
「あら、ありがとう菜々ちゃん」
後輩からの尊敬の眼差しをうけ、ゆりかはにこりと微笑み返した。
「じゃあ、次も何について聞きたいか、菜々ちゃん考えておいてね」
「わかりましたー!」
「菜々ちゃんは元気ね。ではまたじか、」
ドタドタ、バッタン!
凄く慌てたような足音と共に、勢いよく部室のドアが開いた。
「菜々!無事か!無事なのか!無事だと言ってくれ!!!」
ため息を付きつつ、騒がしいのがやって来たなぁと不満顔をするゆりか。
「おのれ、ゆりかめ。私の可愛い菜々に何をしたっ!」
はぁ、とため息を付き、
「まずは、騒がしいですよ。相原忍さん。それに私は菜々ちゃんに何もしてませんし、2人っきりで一緒にお茶して、お話をしていただけです」
ありのままの事実を語るゆりか。
「嘘をつけ!こんなに愛らしい菜々と密室で、2人っきりになって何もなかったわけがないだろ!」
ガルルルルと、今にもうなり声をあげそうな忍。
そんな中、「わぁ、忍先輩だぁ」とのん気に言葉を漏らし、のんびり最後のアップルティを飲み干した菜々が、
「ゆりか先輩とは本当にお茶してただけですよ。後は、あの・・・その・・・頭をなでなでしてもらったくらいで(///」
思い出して、菜々は頬をポッと赤く染めた。
「駄目だ菜々!しっかりしろ!なでなでくらいあたしがいっぱいしてあげるからぁ~~!」
ますます暴走する忍さんなのである。
「はぁ、『○○について広く浅く学ぼう』の第1回だったのだから、もう少し落ち着いた感じで終わらせたかったわ」
少々肩を落として、ゆりかは呟いた。
「なでな・・・って!何でそんな貴重な第1回にあたしをのけ者にしてるのよ!呼びなさいよ!菜々を1人占めするなんてズルいんだからっ!」
「仕方ないでしょう。第1回からそんなにキャラを沢山だしたら、作者がお話をまとめきれなくなるからよ。世の物書きの人達は、本当に凄いわね」
「そんな理由であたし序盤出番なかったの!?」
忍はガックリと肩を落とす。
「とりあえず第1回はここで締めるわよ。では、皆様ご機嫌よう。また会いましょう」