開口一番
※作中に登場する陰陽師は実在の陰陽道などを参照にしてはありますが、一切関係のない空想陰陽道です。そこのところお願いします。
――それは唐突に起こった。
もうこれは、数年前の出来事だ。
ある日突如として巨大で被害甚大の災害が起こった。昼にも関わらず辺りは薄暗く夜のようであり、昨日までは跡かたもなかった霧の様な黒い靄がその街の辺り一体を覆う。その街の中では見たことも無い様な生物――というか、バケモノと呼べるモノが街中を徘徊していた。
警察や自衛隊や救助隊でさえ、そのバケモノに吹き飛ばされ、あるいは食われ手出しが出来なかった。だが、唯一対抗できたのは
――陰陽師だった。
そこには一人の少年がいた。まだ幼く十代前半と思しき少年だ。その少年は一人でこの薄暗い街を歩いていた。手には何処かのスーパーかコンビニの袋を持っている。恐らく、お使いの帰りであろう。怯えて半ベソを掻きそうになりながらも真っすぐと歩く。
周りには数体のバケモノが蠢いていた。
だが、真っすぐと家に帰るつもりであったが、その少年は閉鎖区域へと足を踏み選れようとしていた。
そのまま、歩いていたが、ピタリと足を止める。
前を見るとそこは、地面のタイルにひびが入り、その下からはボコボコと地面が動いている。建物が斜めに傾いていたり、倒壊してる住宅もある。率直の感想を一言で例えるなら地獄絵図だ。その言葉がぴったりであろうその風景に少年は顔が青ざめて言葉も出せず絶句するしかなかった。
だが、少年は逃げるという選択肢を選ばず、こんな状況だ、なによりも家族の安否が心配であったのだろう止まった足を再び動かし走り出した。進むごとにそこはさっきまでいた場所よりもバケモノの数が増え、黒い靄が前にもましてどす黒い色に変わっていった。その度に空気も悪くなり度々咳こむ。
それは当然来た。
袋が手からこぼれおちた。何故か、急に体が重くなる。それに耐えきれず足を付きしゃがみ込み悶えながら何かを押さえるような表情を浮かべる。相当な負担がかかったのか少年は意識を失いその場に倒れた。
この時、一人の少年の運命がねじ曲がった時だった。