春先教室
春の五限目は、どうも眠くなる。暖かな空気と満たされた腹、退屈な授業に中弛みの時期な高2の俺。さらにこの席は窓際の1番後ろ。ここまで条件を揃えられたら最早「寝る」以外の選択肢を俺は思い付かない。寧ろ何も考えたく無い、眠い。起きてるフリすら面倒臭く落書きだらけのノートと教科書を退けて、俺は机に突っ伏した。
「…が…くが……玖賀堅太ぁっ‼」
「……⁈…っはい⁉」
授業開始から十数分、すっかり熟睡していた俺は突然の怒声に飛び起きる…というか勢いが良すぎて立ち上がる。
教卓の上からこちらを睨むのは、英語教師のはげお…萩尾先生。(48歳独身、いにしえよりのバーコード)優しく厳しい学年主任様だ、おっとヤバいマジ俺今、ペンチパンチピンチ…。
クラスメート達は無言で此方を見ている、
その目が示すのは俺への嘲笑だったり同情だったりだ、糞恥ずかしいからこっち見んなチクショー。
重い沈黙、睨む教師、立ち竦み冷や汗を流す俺。何だコレ寒いのに汗が出るよ?夏が近いのかな?(大混乱)
しかし、今は取り敢えず、
「………本っ当にすいませんでした。」
「玖賀、お前やる気無いなら帰って良いぞ?」
冷たい言葉が胸に刺さる。
嗚呼、先生!そんな冷たい事仰らないで下さい!ちゃんと謝ったじゃないですか俺、泣いちゃいますよ?男子高校生が大泣きですよ⁈とか言って☆
「…いや、ホントすいませんした…。」
謝罪、大事。はげおティーチャー瞳孔開いてて目ぇ怖いんだから。
「…はぁっ、次は無いからな肝に命じとけ
。」
うぁー良かったぁ、お咎め無しで…
「じゃあ玖賀、今んとこ最初から読んで。」
おっと先生の復讐劇が!教科書開いてねぇし、今何やってるかも知らねえし!やっべ、どこっ⁉どこ読むべきなん⁉
パラパラと教科書のページを捲る。が、一向にページが見つからない。ティーチャーは何故か笑顔だ、怖っ。どのページですか?とか聞いたら殴られるかな?ボクシング部顧問のティーチャーに?Oh、死亡フラグ。
焦りとあまりの恐怖で、高2にもなってバケツを持って廊下に立たされる自分の姿を想像したその時だった。
コンコン。
「………?」
俺の机が叩かれる。
見ると前の席の少女が教科書を指差して俺を見つめていた。
「ここ…。」
小さな声で彼女は言う。
「うえ?…あっ!」
一瞬戸惑ったが直ぐに気付く、彼女が差したページが今俺が読まなきゃいけない所なんだろう。サンキュー救世主!大好きだっ!!今直ぐ君を抱きしめたい!俺は揺れる思春期だから無理だけど。それでも…
それでも今だけ体重70キロ前後の彼女と付き合ってもいいと思った。今だけ。…思っただけ。
取り敢えずこれで、はげおのお叱りを受けなくて済む。
「えっと、『つれづれなるままに、
日暮らし…』…み、…いしみ…?」「硯な。」
「…………。」
再びの静寂、お帰りなさい。(いや寧ろ帰ってホント、お願いだから。)
前席の彼女は死んだ魚の目で座りながらに俺を見下していて、
先生はいつも以上に笑っていて、
日差しは暖かく、遠くで小鳥の囀りが聞こえる。
俺は天井を見上げて少し泣いていた涙を零さないように。
諸君に一つ良い事を教えよう、確かに春の五限目は眠いが、学生の本分は勉強なんだぜ?
初めての投稿、次は無いかもしれません。明日には黒歴史です。
っていうか、コレ、小説…?