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私の夢日記  作者: 古河渚
1/2

高校2年生の春

初めて書いた小説です。

面白くかけるかなんて全くわかりません。

その上、ちゃんと書き続けられるかも一切不明です。

プロットは組んだけれど、上手く組めている自信はありません!


そんな、頼りない著者ですが

楽しんで書いていけたらと思います。


みなさま、どうぞ温かい目で見守ってください。

よろしくお願い申し上げます。

 真っ暗な夜空に、小さく光る星がいくつか灯る星空のもと、明滅した明かりのつく公園内で友樹(ともき)は泣いていた。悲しくて泣いていた。

 「・・・・うぅ・・・・・・ぐっ・・・・」

 「ともちゃん・・・さくらがいるよ。ずっと、さくらがそばにいるからね」

 少年を覆うように抱きしめている小さな小さな少女。年の頃は6歳くらいだろうか?そんな小さな少女だけれど、少年の目には自分の母のような、「ぉ お母さんっ・・・うっ」

 「・・・・・さくらはずっと、ともちゃんのそばにいるからね」

 徐々にその光景に白い靄のようなものがかかっていき・・・・




 ピピピピピピピピピピピピピピピピピ カチッ

 騒がしい目覚まし時計と、開けっ放しにしたカーテンの隙間から入ってくる陽の光に照らされて徐々に覚醒していく頭を振りつつ、今日の予定を考える。

 「ぁ、今日始業式だ 準備しないと」

 お気に入りの唄を、鼻で歌いながらてきぱきと用意していく。服も、朝ごはんも、ごみ出しも、全部自分でやらなければならない。一軒家に住んでいるから、家族がいると思われがちだが、両親とも子供のころに他界してしまった。

 今日の朝ごはんは、パンにハムと卵のスクランブルエッグを載せたトーストだ。出来栄えは上々。テレビをつけて、最近のニュースをふんふん言いながら見ていると、交通事故のニュースになった。

 誘拐だとか、他国の戦争だとかは、大変だなぁくらいにしか思わないが、やはり身近に起こった出来事というものは、気になるのだろうか?

自分ではいたって気にしていないつもりだったが、ついチャンネルを変えてしまった、と言う事はまだ引きずっているのかもしれない。

 「よしっ!」と気持ちを切り替えて、さくっと学校の準備を終え家の門を開けると、こぢんまりとした門にすら若干背が届かない少女が、門に背を預けて待っていた。


 「よっ!桜。おはよう」

 「おはようっ!ともちゃん!」

 スカートを(ひるがえ)してニコニコ笑顔のちんまい娘は俺の幼馴染で、名前は清水桜(しみずさくら)

 ダークブルー系のブレザーに若干緑の入ったスカート、手首にはいつものお守りのブレスレッドに、髪は少し短めのストレートの黒髪。透き通った瞳に、ピンク色に染まった唇。胸は若干かわいそ

 「もぅっ!どこみてるのっ!」

 胸を手でガードして、頬を膨らせて抗議の目。俺はこの顔を見るのが好きで、毎度いたずらをしては怒られている。

 「べっ別になんも見てねぇよ!……ほら行くぞ」

 気恥ずかしさを隠すようにさっと顔を前へ向ける。向かう先は学校だ。

 「クラス分けどこになるだろうな?」

 「ともちゃんといっしょになれたらいいね~」

 「……そうだな」


 ちなみに、学校は徒歩10分ほどの位置にあり、自転車は2キロ圏内だから使用禁止だ。

 俺と桜は大体二人そろって学校へ行く。

 というか、どの時間帯に出ても大体門の前に桜がいるのだから、一緒に行くことになってしまう。

 まさか朝早くからずっといる訳じゃないよな?と思い、ちょっと遅めに家を出る時間の20分前に戸口を確認したことがあるが、その時は偶々(たまたま)いなかった。

 聞いてみたら、なんとなくその時間に出るんじゃないかと思ったんだそうだ。エスパーかっ

 そんなことをちらちら思いながら、歩いていたらすぐに学校の正門が見えてきた。

 門のそばには、去年クラスで一緒だった村瀬麗華(むらせれいか)が落ち着いた様子で誰かを待っているようだった。きっと、桜の事だろう。

 村瀬とは、去年同じクラスで、桜とずいぶん仲良さそうにしてたから、きっとそうだろう。

 ふと彼女がこっちを見ると、待ち合わせ相手を見つけたようで駆け寄ってきた。

 どうやら合っていたようだ。

 「おはよ~!れいかちゃん!」

 「おはようございます。桜ちゃん」

 「村瀬(むらせ)さんお久~」

 「おはようございます。お久しぶりですね。古賀(こが)さん」

 「まぁ、久しぶりといっても1か月ほどだけれどな。」

 「そうですね」

 口元に手を当てて上品に笑う彼女は、村瀬麗華(むらせれいか)。うちの学校で一、二を争う程の八方美人。茶が混じったロングストレートの髪を、フリルのついたピンク色のリボンで綺麗に結んである。目も少し茶が混じってて、プルンとしたつややかな感じの唇。胸も大きく、ウエストはたぶん細い!

 父親は、あの村瀬財閥の社長で、たまにテレビで見たりする。会ったことはないが、きっと立派な人なんだろう。

 服装は桜と同じ服を着ているのだが、似あい方が全然違う。桜はいまだに服に着られている状態に対して、村瀬はきっちりきこなしている。風が吹いてスカートが(ひるがえ)ると、そこらの男の視線は釘づけ。まぁ、俺もその中の一人だけれど。

 後ろから(にら)まれているような気がして、いや、絶対睨まれてる。村瀬も桜も見ないように、門の中へと入っていく。門の中に入ると、広々としたスペースがあり、生徒がごった返している。

 そんな中、わぁわぁ騒いでいる見た目がそっくりな双子を発見した。

 「お~い!一之瀬~!」

 声に気付くと、二人は同時に振り向き、駆け寄ってきた。

 『友樹君!ねぇ?!どうして!?また、兄貴といっしょなんだけれど!』

 『友樹っ!なぁ?!どうして!?また、春香(はるか)といっしょなんだけれど!』

 「同時に言うなっ!何が起きたかは分かったけれど」

 「いちのせーず。またおんなじクラスなんだね~」

 「仲がよろしいのですね。とってもうらやましいです」

 一之瀬兄妹は双子で、兄の一之瀬晴海(いちのせはるみ)は女の子みたいな名前をしているし、実際女の子みたいな雰囲気だしているけれど、ちゃんとした男だ。妹の一之瀬春香(いちのせはるか)は少し釣り目がちの女の子で、性格も少しきつめ。でも、捨てられた猫を見つけると、拾って帰る以外の選択肢が思い浮かばないくらいの優しさを兼ね備えている。

 二人とも、青みがかったショートカットで、見分けるには顔の表情や、雰囲気から察するか、服装で判断するしかないくらいよく似ている。また、二人はなんだかんだで一緒にいることが多く、俺ともよく飯を食いにいく仲だ。

 「友樹!クラス一緒だったぞ!見に来いよ」

 「あぁ」

 「さくらも一緒かな?」

 「わたくしも一緒だと嬉しいです」

 「確か一緒だったと思うよ?ねぇ?」

 「ん?そうだったはずよ……」

 ワイワイおしゃべりしながら歩くというのも少し懐かしい。掲示板の前まで来て確認してみるとBクラスの欄に、一之瀬ずと自分の名前に、清水桜(しみずさくら)村瀬麗華(むらせれいか)、全員一緒だ。

 「みんな一緒みたいだな」

 「うんっ!………これでまた、ともちゃんといっしょだ」

 「何か言ったか?」

 「うぅん。何も言ってないよ!」

 絶対何か言った!今度二人きりの時、こっそり聞いてみようと心にメモをとりつつ、桜を見てみると村瀬に抱きついているではないか。まったくもってうらやましい。

 「れいかちゃんまた一緒だ!わ~い!」

 「そうですね!わたくしも嬉しいです。今年度もよろしくお願いいたしますね」

 そういって抱きつかれている村瀬も嬉しそうにしている。

 『みんな、よろしく!』

 『みんな、よろしく!』

 また同時にしゃべってる。あの双子は、3回に1回くらいのペースで同時にしゃべりだす特技を保持している。本人たちは嫌がっているが、(まぁ、俺もそんなことになったら嫌がるが)結構すごい事なんじゃないかと思っている。

 「またかぶってるねぇ」

 「うがぁ!春香まねしないでよ」

 「そっちこそ!晴海こそまねしてるじゃない」

 時計を見てみると、教室への集合時間まであと5分ほどとなっていた。

 「ほら、またんなこと言ってないで、さっさと教室行こうぜ。」

 「ともちゃんにさんせ~!れいかちゃんいこ~?」

 「はいっ♪そうしましょう」

 顔を同じようにふくらませた双子の背中を押しながら、教室へと進んだ。

 

 教室は、休み中の出来事や、これからの出来事の話に花を咲かせた空気で満たされていた。座席はどうやらアイウエオ順のようだ。自分の席へ向かいカバンを置いて晴海の元へと向かうと、桜も自分の机にカバンを置いてやってきた。村瀬もすぐにやってくる。

 「なんかこの感じも懐かしいな」

 「もぅ、ともちゃんそればっかり」

 「そうですね。今日久々とか懐かしいとか、そんなことばかり言ってますよ?」

 「そうかもしれん」

 でも、なんだか懐かしい気分になるんだから、しょうがないだろう。

 「そういえばさ、2年生ってさ、春にハイキングあるよね?」

 「そうね、私も少し気になってたのよ。どこにいくかしら?」

 「たしか、去年の部活の先輩は二つ丘に行ったって言ってたぞ」

 「二つ丘?さくら行ったことないなぁ。一度ともちゃんと行こうとしたことがあったけれど、結局行けなかったんだよね」

 「そういえばそうだな」

 あれは、中学生の頃だったか。桜が綺麗に咲いてるからと、桜が行こう行こうとうるさくて、しょうがないから行こうと思ったら、桜が風邪ひいちゃって結局行けなかったという。面倒見のいい俺は、桜の看病たり、近くの河原の桜の花びらを桜に届けたりしたなぁ。おぉ、俺結構いいことしてるじゃん。

 「あの時はごめんね。あと、ありがと」

 「気にすんな。俺が風邪ひいた時は桜が看病してくれるんだから」

 「えへへ」

 「じーーーーーーーーーーーー×3」

 「な、なんだよ」

 『べっつに~?』

 『べっつに~?』

 「なんでもないですよ♪友樹さんじゃないですけれど、なんだか懐かしいなと思いまして」

 まったく。なんだってんだ。なんか恥ずかしいじゃないか。

 

 「はいそこ~!ラブラブしてないで席座れ~!HR(ホームルーム)始めるぞ~!」

 おぉ、わがクラスの担任は、今年もこもりちゃんか。こもりちゃんとは、去年のクラスでもお世話になった学校一小さい教師だ。名前は、小森七美。先ほど言った通り、背が小さい事がこもりちゃんの唯一にして一番の特徴。体重とともに身長も絶対に教えてくれないが、うちの桜よりも小さいから、140切ってるんじゃないかと思っている。

 「友樹~?先生の背の事考えてるだろう~?一人っ子授業受けたくなかったらさっさと席座れ!」

 「は、はいっ!」

 一人っ子授業だけはやりたくない!授業中一人だけ立ちっぱなしだぞ?その上、問題文や設問を全てその一人が行うことになる地獄だ。あれだけはもう二度とやりたくない。

 席についてまわりを見てみると、全員が綺麗に着席していた。みんなもどうやらあの恐ろしさを理解しているようだ。

 「ほんじゃ、これからの簡単なスケジュール発表だ」

 「まずは、全員お待ちかねの春季ハイキングが4月25日」

 「部活の締め切りも、4月25日までだからさっさと決めて入れよ~!」

 ここで不思議に思った人もいるだろう。そう。俺達は2年だ。部活に入ってるのでは?と思う者も多くいるだろう。だがしかし、うちの学校は少々特殊で、部活は1年ごとに昨年までにした事のない部活に入る必要があるのだ。というのも、うちの学校はもともと部活が盛んではなかった。

 そこで、単純に部活を強制するだけだと、3年間楽な部活に入ろうとするものが出てくる。それを防ぐための、1年ごとの総入替なんだな。まぁ、もし3年間じっくりやって大会などで成績を残したい人は、申請書とその部活の顧問の了承書が有ったら続けられるので、その辺の対策もばっちりなんだそうだ。

 まぁ、そんな訳で今年も新しい部活探しをしなくてはならない。

 「んで、5月の中旬に中間テストがあるからな?」

 「先生の給料もかかってるから、いい成績取ってくれよ~?」

 「そんでそんで、今日は10時から始業式!5分前になったら廊下に並ぶように!」

 「細かい事が気になるやつは、私のとこまで来るように!以上!解散!」

 こもりちゃんのHRは、相変わらずサバサバしていて疲れない。去年からこもりちゃんの生徒だった人は慣れたもので、もぅ友達の席に行って話し始めている。今日が初めての人は、ぇ?これで終わり?っていう顔をしているから面白い。こもりちゃんは、鉄パイプ椅子に足を組んで座っている。大人っぽさは全くなく、子供が背伸びしているようだ。ギロッ 

 「さて、また晴海の席にでも行くかな……」

 おっかねぇ・・・・


 談笑しているとすぐに時間がたつ。5分前になったのか、生徒が廊下に出始めた。

 「おぉ、もぅそんな時間か」

 「おぉ~」

 「いきましょう♪」

 「だな」

 「だね」

 廊下に出たおれたちは、出席番号を適当な人に聞いて、自分の位置を確かめていく。しばらくすると、先頭が動き出した。こもりちゃんの姿が見えないが、いつもの事なので気にしない。これは決して、居なくなるとかではなく、単に見えないだけだ。2回生は、北校舎の2階なので1回まで降り、体育館への渡り廊下を歩く。靴は上履き(うわばき)を履いているので、特に履き替える必要はない。

 体育館の中は、久々に開けたからか、ドアというドアが全開されてて、春の風が通り抜け、若干肌寒かった。でも悪くない。

 用意された長椅子に順番に座り、あちこちで、ぎしぎしという音と生徒の笑い声や、雑談している声が音を絡め合っていた。そうこうしているうちに、10時になったのか、校長の次にえらい感じの先生、教頭かな?が出てきた。

 「はい!静かにするように!これから校長先生のお話があります!」

 それだけ言って、下りて行った。(校長が言えばいいのに)

 恰幅のいいおじさんが、えっちらと登壇してくる。登壇で一仕事なのか、ハンカチで(ひたい)を拭きつつ、マイクをカチカチと音量チェックして、話し始めた。

 「えぇ~みなさん。おはようございます。」

 「・・・・・・・・・・・」

 「おはようございます。」

 「おはよぉございま~す」だれた感じの声が広がる。

 「もうすこしだけ、元気な声が聴きたいです」

 「おはようございます!」

 「おはようございますっ!」もぅ、やけになった感じの声が聞こえる。俺は2回目からは普通に声を出していましたよ?本当ですよ?と、誰に言い訳しているのかわからないことを思いつつ。

 「えぇ~去年の終業式の日に、皆さんにお願いした3つの事があります。」

 「おぼえていますか?」

 「一つ目は、元気に過ごすこと」

 「二つ目は、趣味を一つ見つけること。または、趣味を伸ばすこと」

 「三つ目は、勉強も少しはしてほしい事」

 「この3つをお願いしたと思います」

 「今年も、皆さんの元気な姿を見る事が出来て、とてもうれしく思います。」

 「これから皆さんは………

 お約束の校長先生の長い話が終わり、また教頭(仮)が出てきた。

 「起立!」おっとりおっとり、生徒が立ち上がり、

 「礼!」見事にバラバラに礼をしていき、

 「直れ!」直れという前に直る生徒もいる中で

 それだけを言って、降壇していった。(ほんと何しに来たんだ)

 音楽の先生が、登壇し澄んだ声で校歌斉唱と唱えると、どこからともなくメロディが流れてきた。

 音楽の先生は、当校の先生の中で一番美人だ。すらっとした体格に、多少カールした黒髪。派手にならない程度の装飾を加え、ほんわかした感じの雰囲気を漂わせ、胸はそこそこ大きく、身長は160くらいか。当校一ほんわかしている為、一部の生徒からはほわちゃんとよばれている。

 たぶん、ほわちゃんに言われたら、何でもする生徒は多いと思う。おれは、ほわちゃんよりもこもりちゃんの方が気に入っているけれどな。

 

 始業式が終わり教室に戻ると、

 「さぁ~!席替えやるぞ~!」

 「えっ?!」

 「あれ?しばらくはこのままじゃないの?」

 クラスからは驚きの声が上がる。それもそうだ、通常席替えというのは、もっと後の時期に行われる。なぜ後なのかというと、生徒がアイウエオ順に並んでいる方が、先生は生徒の顔と名前を憶えやすいからだ。ある程度覚えてくると、場所が変わっても問題ないため、席替えが出来るようになる。先生の一番大変な仕事は、授業資料を作るとかよりも、生徒の顔と名前を一致させることなんじゃないだろうか?

 まぁ、そんなことはどうでもいいけれど、席替えだって?!なんだって?!

 いま、窓から2番目の一番後ろの席で、陽の光がいい感じに当たって、先生の目から逃れられる最高のポジションにいるのに、なぜ今席替えなんだ!俺は絶対反対だ!

 「こもりちゃん、また次のHRでしましょうよ。今日はもう解散でいいじゃないですか」

 「だが断る!」

 こもりちゃん潔く否定しすぎです。

 「え~」

 「え~って言いたいのはこっちだ!せっかく夜なべして席替えカード作ってきたのに!」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 こもりちゃん。たまに言いたいことがある。あほか?あほなのか?

 「まっ、そういうことだ!ほれほれ、適当に引け引け」

 席替えカードの入ったボックスを教壇の上に置くと、教室の隅に置いてあるパイプ椅子に座り、後は任せた状態のこもりちゃん。他の生徒は、我先にとカードを手にする者や、残り物には福があると黒板に書かれていく名前を見ている者、話の流れについて行けずボーっとしている者や、グループで纏まってカードを取りに行く者など、いろんな人がいる。

 俺も教壇の前でいつまでもボーっとしている訳にはいかない。桜達の方を見ると、桜が目で任せたと言ってきたので、カードを一気に5枚引き、桜達の元へと向かう。

 『どうだった?』

 『どうだった?』

 「まて、そう焦るな。俺もまだ見ていないんだ」

 5枚のカードを机に並べる。カードは長方形で、クラスで回される手紙の折り方に似ていた。こもりちゃんも小まめだよなぁ。普通二つ折りくらいだろう。

 さて、全部開けてしまうか、ここで選ぶか、どちらにしようか?

 「さて、どうする?」

 「私は開けてもらって構いませんよ」

 『右に同じ』

 『左に同じ』

 「ともちゃんの隣だったらどこでもいいよ!」

 「俺の隣って、むづすぎるだろう!」

 「大丈夫だよ!ともちゃんの運は最強だからね!」

 「んな、うまくいくもんかね~?」

 そんなことを言い合いながら、カードを開いていくと、1枚目は「8」窓から2番目で前から2列目だ。 次は「25」窓から4番目で前から6列目。3枚目は「11」窓から2番目で、前から5列目だ。結構いい場所じゃないか。4枚目は「33」……ぬぉ一番前の廊下側だ。今の所、隣り合った席は確保できていない。最後の1枚が、どこにくるか・・・・・・・・・。せ~の、ご開帳!「38」!

 「あぅぅぅぅぅうううう」

 桜の悲痛な声が響く。それに続き、双子も残念そうな感じでおしいと言っている。

 「あらら残念ですね…」

 「まぁ、1席離れてるくらいじゃないか。だから、気にすんな」

 「でもぉ、でもぅ………」

 「村瀬は、33でいいか?」

 「はい。私はそこで大丈夫ですよ」

 「一之瀬は、8か?11か?」

 『11!』

 『11!』

 「なら、3分くらい掛るじゃんけんでもしておいてくれ」

 『さいしょはグー じゃんけんぽん!…あいこでしょ!…あいこでしょ!…あいこで(ry…………』

 『さいしょはグー じゃんけんぽん!…あいこでしょ!…あいこでしょ!…あいこで(ry…………』

 さて、残ったのは、25と38

 38は、廊下横の最後尾で、25は窓側に1席開けた所にある。

 普通の人なら、1席くらいと思うだろう。その考えは、俺も理解できる。というか、そもそも隣り合う必要性を感じない人が大多数だろう。俺は、授業中に忘れ物に気付いたり、シャー芯がなくなってたり、消しゴムが消える人なので、隣の席の桜から貰うという事が日常茶飯事だから、隣にいてほしいという理由があるが、桜の方は俺の隣で何かいい事があるのだろうか?

 そう考えると……ない?あれ?俺の隣で得することってなくね?今まで全く疑問に思ってこなかったが、桜は何で俺の隣がいいんだろう?いつも普通に隣がいいね~と言ってたから、そういうもんだと思ってた。

 「なぁ、桜」

 「んぐっ?」

 「なんで桜は俺の隣がいいの?」

 その時、3人の空気が凍った。え?なんだ?なんだこれ?

 「えっ!えっ!えっ!えっ!そ そ そそそそそんな、なんでって」

 何を慌ててるんだか……

 「兄ちゃんあれ殴ってもいい?」

 「いいよ僕が許可する!」

 「ちょ、ちょっとまて一之瀬~ず。俺が何かしたか?」

 『したよっ!』

 『したわっ!』

 「なにをっ!」

 「古賀さんって、前から鈍感だとは思ってましたが、予想以上ですね」

 「え?鈍感?何の話してるの?」

 「と ととともちゃんの事を、お、」

 「桜は少し落ち着こうぜ」

 「おふゅ」

 『頭が痛くなってきたわ』

 『頭が痛くなってきたよ』

 「とりあえず古賀さん、席が決まりましたので、黒板に書いて来て下さい」

 『私11番!』

 『僕8番!』

 「同時に言うな!わけわからんだろうが!」

 「晴海さんが8番で、春香さんが11番です。」

 村瀬さん。そんな、ため息しか出ない感じの表情で頼まないでください。俺がすごく悪いみたいじゃないですか。あの双子の同時発言を聞き分けるとか無理がありすぎます。ボーっとしていたら、またため息をつかれそうなので、とりあえず、黒板に俺、桜、一之瀬ず、村瀬の順に名前を書いていたら、中田が声をかけてきた。

 「古賀」

 「ん?なんだ?」

 「俺は、お前と清水さんの間に挟まれるのか?」

 「ん、中田が32番なのか」

 「実はそうなんだ」

 「なら、そうなるんじゃないか?」

 「そこで相談だ。」

 「ん?相談?」

 「あぁ。俺は古賀と清水さんに挟まれて授業を受けるのは出来る限り避けたい」

 「ん?なぜ「まぁきけ」」

 「とりあえず、そのような事態は出来る限り避けたいわけだ。」

 「だから、38と32を交換してほしいのだ」

 「それって、廊下側がいいんだろう?」

 「そうじゃない。たとえそうだったとしても、それよりも、挟まれるのは困る」

 「まぁ、よく分からんが交換したらいいんだな?」

 「おぉ。話の通じる奴でよかったよ」


 「ということで、25が桜で、32が俺になった。」

 「ともちゃぁぁぁぁぁぁぁん!」

 「おぉ、おぃ、抱きつくな桜」

 「これで、ともちゃんのお世話ができるよ~」

 「なんだ、お世話がしたいだけだったのか」

 そういえば、昔から犬の世話やら金魚の世話やら大好きだったな。

 「ってことは、俺は犬か?」

 『犬の世話の方が楽そうよね』

 『犬の世話の方が楽そうだね』

 「なっ、お前ら!」

 「まぁまぁ、桜ちゃんと隣になれてよかったじゃない」

 「いや、まぁ助かるけど………」

 「ともちゃんの隣だ えへへ」

 まぁ、そんなこんなで、高校生2年生春の初日は終わった。


高校2年生の春 完

次回は、部活選びは大変?!です。

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