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乙女ゲームの前後  作者: ゆい
乙女ゲーム中
9/10

08

いよいよゲーム開始です。

「あぁ、いよいよこの時が来たのね。」


去年はうまくいかないこともあったけど、今年は違う。


今年は私のための舞台。すべてが私の為だけにある。


ふふっ。楽しみだわ。今日から私のゲームが始まるのだから・・・。






とか、思ってそうなくらい上機嫌に登校している前園千鶴を発見し、いささかげんなりした。

ちなみに最初のは聞こえてきたヤツの声だ。あとは私のアテレコ。


はぁ。


今日はいよいよ新学期。ついに私たちは2年になるのだ。

そして、そこで起こるどっきどきのイベント、クラス発表がある。


ちなみに、イベントでは前園千鶴と友人の私は今年もAであることの喜びを分かち合っているところに、春日弦が入ってくる。そして、神経質なインテリメガネは「ふん、またお前がいるのか」と上からな声をかけるのだ。

ゲームでは天才で孤高なメガネは努力でクラスに居る主人公があまり好きではないのだ。先生や周りの友人たちに質問しまくったりして、周りの助けで何とかAにいるという状態の主人公は彼から見ると、授業を遅らせる原因、ついでに休み時間もうるさいというふうに映っているということらしい。まぁ、他の子は授業中に質問はあまりしない。どうしてもわからないことはじっくり聞きたいので、授業が終わってからにしているのだ。こう聞くと前園千鶴だめじゃん。とか思うかもしれないけど、彼女と仲がいいクラスメイトとかは、彼女が家でもすごく頑張っているのを知っているし、夢があってそのためにもAで居続けたいと思っているのだということも知っているから、授業中に彼女が質問しようが些細な物であれば気にしないし余裕があれば助けたいと思って教えているので、別に問題はないのだ。ただメガネが気にしすぎなだけ。


これが現実になるとどうなるんだろうか。これはいろいろと前提条件が破綻している。

何より、私もAの維持ができているかどうか……。

問題ないと思うのだが実際に見るまで不安だ。








結論から言うと、私はA、前園千鶴はCと変わらぬ結果だった。


ほっとしつつ、そっと視線をヤツに向けると「愕然」とかいえそうな顔でクラス表を見ているのが見えた。

いや、勉強しなきゃクラスは上がらないし、授業中寝てるようじゃ絶対Aになるとか無理なんだけど。


ヤツは置いといて、再びクラス表を見るとAはどうやら入れ代わりはなかったようで、全員知ってる名前だった。


「よかったな」


その声に振り返ると、春日君がいた。


「まぁ、みんな頑張ったからね。今年は忙しくなるからもっと頑張らなきゃだね。」


「あぁ。」


春日君は楽しそうに笑った。うむ。レアである。が、彼としてもクラスメイトに変動がないのは嬉しかったのだろう。


そこで再びチラッとヤツを見る。それにつられるように春日君も視線をヤツに向ける。

愕然とした顔だったのがいつの間にか怒りで真っ赤に染まり憤怒の形相と呼べそうなものになっていた。


「うっわぁ~」


さすがに去年のようなイタい発言をすることはないようだが、しかし、あれもないだろう。

現に春日君の体が若干下がった。うん、引いたんだよね、わかるよ。


現実が思い通りにいかなかったことに怒っている彼女はここに私と春日君がいるのに全く気付いていないようだった。


ちょいちょい。


袖を引っ張り、春日君の注意を引いた私は、互いに目を合わせ、うなずいた後、その場から逃げだした。

走るわけにはいかないので、早歩きだ。だってしょうがない。あんなのに話しかけられたくないんだ。









さて、始業式。


理事長がざっと挨拶をし、そしていよいよ告げられた。


「今年、我が校は創立100周年を迎えました。」


そう、これがこのゲームの舞台イベントの言葉なのだ。

理事長の話だといろいろめんどいので、私がざっと説明すると、我が校、そこそこ歴史ある学校なのだ。

普通科のみならず、服飾科、体育科、調理科とあるのは、創立者の子供たちの未来への道を応援するという言葉により進学を応援する普通科、専門職への道を行きやすくする各専門科が用意された結果で、当時としては珍しいものだったのではないだろうかと思われる。

そんな学校も創立100周年を迎え、ここは我が校の素晴らしさを大々的にアピールしようじゃないか!ということになり約半年の準備期間の後、大々的な祭り「創立100周年祭」を行う事が理事会で決まったそうだ。

今でも有名校なので定員割れとかもないので、これは中学生へのアピールではない。業界の大人たちへのアピールで、理事たちは生徒の素晴らしさを見せつけることでより支援と伝手を得たいのだ。また、これにより生徒の方も将来性が大人たちに認められれば未来は明るいものとなる。今までも学園祭、体育祭でアピールしていたが、今回それらを失くし、創立祭一本に絞り、かなりの予算をかけることが決まった。そして、今まで来てもらえなかった人も招き、新しい伝手を作ろうという計画らしい。みんな大盛り上がりだ。


そして、このお祭りこそがゲーム舞台なのだ。

今日から約半年間、準備期間となる。授業関係がほんっっっとうにぎゅうぎゅう詰めになる。特にAはヤバいくらい忙しくなる。が、それくらいこなせなければAにはいられないので頑張らねばならない。

まぁ、このお祭りにより普段より交流が盛んになるのだ。それによって主人公の前園千鶴は攻略対象との仲を深めることになるのである。

特に攻略対象者たちは各分野で優秀なものたちなので、各学科の学年代表となっているし、教師は若い男性なのでそれらをまとめる顧問のような役に抜擢されていて、この祭りの中心となっている。

そんな彼らと出会い、忙しそうな彼らを手伝い、支えたり、一緒にがんばったり、励ましたりとすることで仲が深まるのだ。

同クラスメイトの春日弦の場合だと、このお祭りで主人公と話す機会も多くなり、それにより彼女のことを認め、次第にひかれていき、創立祭にて無事恋仲となるというシナリオだ。


で、なぜ逆ハーがありえないのかというと、理由は簡単。彼らも彼女も忙しいから。Aはやることもいっぱいあるし、この学校、そこそこ広いので、各所に散らばるキャラに一日で全員に会うというのは不可能なのだ。故に逆ハーはありえない。


いったいどうして逆ハーできると思ったのか、不思議でならない。


まぁ、話を創立際に戻そう。


この創立祭の中心となるのが各学科の学年代表とその下の学級委員および体育祭・学園祭の実行委員たちである。

そう、実はこの学校、生徒会は存在しないのだ。

私も驚いた。入学式で生徒会長だと思ったフツメンは生徒代表として挨拶しただけの3年の各学科学年代表の中から選ばれた先輩だったらしい。しかも特に誰がするとかは決まってなく、暇な人が引き受けるものらしい。私たちの時は普通科だったが、今年は服飾科の代表が行ったらしい。

この代表に選ばれるのは各学科のトップ数名からの立候補制で、補佐は指名制である。

私たちの学年の普通科代表は春日君だ。天才なので余裕があるから。そして、補佐は同じA組の田辺君という彼とそこそこ仲がいい生徒だ。本来、ゲームではそれだけだが、去年彼の泣き付きによりもう一人補佐が付いた。それが私の友人、佐竹ほのかさんである。おそらく今年もこの状態だろう。普通は補佐はAから選ばないが、Aで固まったのは、春日君の社交性のなさゆえであろう。

他にもお姉さまこと白木つばさ先輩は服飾科の代表だし、獅童陽介先輩もしぶしぶらしいが、体育科の代表だった。今年もそうなりそうらしい。


この各代表の話し合いにより、創立祭の主な方向性と日程が決められ、各学科間の協力体制がつくられる。そしてその方針により準備が進められていく。

後は各学科、各クラスで2日間の創立祭で何をどこでどのようにするかが決められるのだ。


特に普通科は難しい。他科は得意分野を学んでいるのだからいかに自分たちのレベルが高いかをアピールすればいい。が、普通科は勉強メインなのでアピールしづらい。更に言うとAは優秀なのは当たり前なので、他の部分、所謂プラスアルファってヤツをアピールし、勉強できるだけじゃないことをアピールしなければならないのだ。企画力だったり、リーダーシップだったり、文武両道っぷりだったり。

まぁ、大抵普通科だけでは難しいので他科の他クラスと組むのだが。


と、この通り実に忙しくなる。が、だからこそ、いろいろなトラブルが起こることで仲を深める乙女ゲームの舞台としてふさわしいのだ。正直なんでもないのにやたらと主人公の周りでトラブルが起きてたら、トラブル体質で周りから距離を置かれるだろう。

それに何より、この創立祭後、後夜祭という名のパーティーが理事長たちによって開かれる。頑張った生徒たちを労うのが目的でもあるが、ゲストなども呼ばれ、生徒がスカウトされたり、伝手を作ったりするのを推奨する場ともなる。ここが、ゲームの終着点で、恋人同士になった二人の甘いデートやら、明るい未来やらでキラキラしいエンドを迎えるわけである。スチルも美麗でヤバい。


どこまで現実が原作通りに行くかは知らないが大まかな流れは変わらないだろう。

まるで、ゲームシナリオ。っていうか、実際ゲームの設定、シナリオなのだが、これが私たちの現実となるのだ。




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