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乙女ゲームの前後  作者: ゆい
乙女ゲーム前
6/10

05

曰く、この世界はある会社の作った乙女ゲームシリーズの世界っぽいらしい。


ぽいというのは、断定できないからだ。


で、このシリーズ、どうやら私、「安藤香織」でつながっているらしい。


安藤香織はクール系の黒髪美人で乙女ゲームの主人公としてはあまり向いていないために脇役に回されたキャラらしい。


が、安藤香織を作ったスタッフが気に入りキャラとして、初登場の一作目以降の学園もの乙女ゲームにも脇役として登場させていた。ご丁寧に年齢を変えて。別にシリーズでもなんでもない別々の作品だった3作品に共通して友人役兼情報提供役として安藤香織が登場していることに気付いた誰かが勝手に3作品をシリーズものと捉えたらしい。制作側もネタ的つもりで登場させていたのだが、まぁ美人キャラなので脇役にもかかわらず人気が出て、いつの間にか安藤香織シリーズとして彼女が出演するゲームをまとめたらしい。


ちなみに出版順は高⇒中⇒小で、安藤香織は若返っていっていたんだとか。


つまり、私がやけに乙女ゲームに巻き込まれてんなぁと感じたのはネタキャラだったせいらしい。


ちなみに、美人キャラというのは納得いかない。確かにそこそこいいとは思う。特に癖のない黒髪は私の自慢でもある。がしかし、小中と美少女な主人公がいたし、高校では主人公はそうでもないが、この男のくせに私より美人な白木つばさがいるわけである。そんなやつらを見てきた私としては自分が美人とは思えんのだ。


まぁ、ナルシストにならなかったので良しとしよう。


で、お姉さまはこの安藤香織シリーズは全部やっているらしい。


だからこそ、自分の名前・容姿にここがゲーム世界である可能性にいち早く気づき、私の噂もいち早くキャッチしていたらしい。


まず、小学校が舞台の乙女ゲームだが、あれは小児性愛者、しょた好き目当ての作品ではなく、おませな女の子向け乙女ゲームだったらしい。

正直それもどうなんだと思うが……。


シナリオは特にひねりもなくかわいい女の子がかっこかわいい男の子と恋をするという趣旨のゲーム。

全ルートクリア後にはご褒美ストーリーとして逆ハーエンドもあったのだとか。


情操教育に悪いというか、悪女を量産しそうなゲームだ。そしてやはりというかしょた好き女性に飛ぶように売れたある意味問題作だったそうな。


この情報には私も獅童先輩もドン引きだ。ていうか、獅童先輩に至っては「女って…」とかいっている。やめてくれ。すべての女がしょた好きじゃないんだ!それに男にだってロリコンがいるじゃないか!


そして、気づいた。このゲームをやっていたというお姉さまは……。


思わず、獅童先輩とともに軽蔑の視線を送るとお姉さまが怒った。


「私は小学生くらいの時にやったのよ!」


疑ってすいません。


獅童先輩とともに素直に謝っといた。いや、ほんとすいません。



で、次に私に視線が集まった。


「で、なんで原作壊したの?」

と。


で、なんとなく主人公が気にくわかなかったこと、つい他の女の子の恋を応援しちゃったこと、卒業時に主人公に罵られたことをかくかくしかじかと話した。


今度は先輩方二人がドン引いた事は言わずもがなだろう。



「ということは、主人公の子も前世持ちだったのね~」


「だと思いますよ~。主人公名乗るには性格悪すぎでしたけどね~」


原作崩壊も当然の結果だろう。と私たちはうなずき合った。



「で、次は?」


獅童先輩が先を促すので次は中学の話に入った。


中学は思春期な女の子向けのピュアな乙女ゲームがコンセプトらしい。

家庭の事情で転校してきた美少女な主人公が早く学校になれるため学級委員や生徒会メンバーのお世話になったりしているうちに親しくなり、恋人同士になるまでの一年に及ぶ物語。で、これは逆ハーエンドなんてものは存在してないらしい。


「え、でも彼女逆ハーエンド狙いっぽかったですよ?」


かくかくしかじかと私の見た主人公について語ると、二人は再びドン引いた。


「女って……」


という声が再び聞こえたがギャルゲーやってる男も同類だと思う。ギャルゲーって大概ハーレムがあるっぽいし、ラッキースケベなるものがある分あちらの方が性質悪いと思うのは私が女だからだろうか……?



「ねぇ、もしかして今回も…?」


お姉さまが若干青い顔して聞いてきた。獅童先輩もはっとしたようにこちらを凝視してきた。


二人は否定してほしそうだったが、残念ながら現実は甘くないのだ。


私はコクリと頷いた。


「ありえねぇ!」


獅童先輩が突っ伏してしまったが、気持ちはわかる。しかも、その当事者に自分も含まれているという現実はつらいものがあるだろう。


だがしかし、現実を知ってもらうべく、私は今作の主人公、前園千鶴と今作のストーリーについて話した。



「主人公の子、原作から外れすぎじゃない?名前しか一致してないわよ?」


とはお姉さまの言だ。しかも、顔は大分ひきつっている。それでも美人に見えるのは美形ゆえか。ちっ。


「そうなんですよ。主人公補正とか期待してた馬鹿な女っぽいんです。」


「つーか、リアルで主人公補正期待するとか痛すぎんだろう。」


獅童先輩は立ち直ったらしく、呆れたような顔して会話に参加してきた。


「原作では主人公は性格美人なんですよ。まぁ、乙女ゲームによくある夢展開で、平凡な女の子が美形に惚れられるっていうやつです。まぁ、性格がかなりいい子なんで平凡とは言い難いですし、ゲーム主人公になってる時点で容姿は平均より上なんですけどね」


「そうよねぇ。ゲームしてた時は主人公に好感持てたわ~。でも、いくら主人公になったからって努力一つしないでうちの普通科A組に入れると思ってたなんて……。」


うちの高校のA組は所謂進学クラスというやつで、成績のいい人間が集められ、授業もかなりレベルの高いものが進められている。ので、同じ普通科でもA組とそのほかのクラスではかなりの差がある。

この話は学校案内にも乗っていて、この県では有名な話である。他所の高校では特進科と分けられるが、うちの高校では普通科にまとめることでやる気のある生徒なら上がれるシステムにして入学後も諦めずにやってもらおうという方針なのだ。


なのでうちの高校の普通科の偏差値自体はそこそこ高い程度だがA組の偏差値で見るとかなり高い。どれくらいかというと県一の進学校と同じくらいというと分って頂けるだろうか。

つまり、我が校のA組に3年間所属していたというのは自慢できるステータスであり、所属するのも維持するのも難しいのだ。


そして、授業が他クラスよりハイレベルで進むため、途中から上がってきたものには授業についていくのさえ厳しく、相当な努力が強いられる。


私だって前世持ちで勉強の大事さを知っているからこそ続けてきた幼少からの努力なしにはA組には入れなかっただろうし、正直入れるとも思ってなかったので、クラスが発表されたときは家族とパーティー開いちゃうくらいには喜んだ。


主人公補正的体のスペックや転生特典的なものでどうにかなるほど甘い肩書ではない。多少有利になれる程度だ。


「現実を甘く見すぎですよね~。しかも、言動からするに私は特別!とか思ってるっぽいんですよね。」


「それに来年に向けてあなたと親しくなろうとしてるんだったかしら?」


お姉さまがかなり呆れてるっぽい。声がなんだか投げやりだ。


「そうなんですよ。休み時間ごとにA組に入り浸り。でも、A組って自分たちはエリート!みたいな考えの人もいるんでCに所属する子が入り浸ってるのは歓迎されてないんですよ。毎度ブリザード吹き荒れてますよ~」


「そいつ、空気も読めねえのかよ。CがAに遊びに行くとかバカじゃん。」


部活で友人とかなら昼休みに来るが、休み時間にAに尋ねる人間は普通いない。だってみんな授業内容の復習とか、わかんなかったところの相談とかで忙しいから。

訪ねてきて話しかけるとか邪魔以外の何物でもないのだ。


「そうなんですよ。バカなんです。で、私思ったんですよ。」


予想と違う展開になっていたのですっかり今まで目的を忘れていたが、これはいいチャンスだ。


「主人公に前世の記憶もって転生したからって自分は特別だ~とか調子に乗ってるバカに現実ってものをわからせて、その鼻っ面折ってやりたいな~って。」


「へ~」

「あらあら」


先輩方の目がきらりと光ったような気がした。


「せっかく私たちもゲーム知識持ってるわけですし、私たちゲームの主要キャラですし?」


「現実を教えてやるのも先輩の務めだろうしなぁ」


「せっかくのストーリーを台無しにしてくれたわけですし?報いを受けるべきかなぁと。」


「そうねぇ。原作ファンとしては許しがたいものがあるわよねぇ……。」


           ニヤリ


三人で顔を見合わせ笑った。


先輩方は実に腹黒そうな笑みだったと言っておこう。きっと私も似たようなものだったのだろうが、二人の方が実に邪悪なオーラを発していたと思う。





「さて、どうやってお仕置きしようかしら?」


「俺たちに迷惑かけようっていうんだ。相応の罰でなきゃつまんねーよなぁ」


うふふふふっ

あははははっ


実に楽しそうな笑顔だが、目は一切笑ってなかった。




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