表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの前後  作者: ゆい
乙女ゲーム前
5/10

04

世間って広い……。


前世持ちだから、多少は人より優れてるっていうか、経験が多い分有利っていうか、まぁ、そんな感じでちょっと調子に乗ってたんだろうなぁ。


反省しよう。上には上がいる。



「ちょっと、香織ちゃん。聞いてる?」


「ボーっとしてんじゃねぇよ。」


あぁ、現実逃避も許されないんだ…。


「すいません。ちょっと考え事してました。」


「もう。せっかくのお茶会なんだから、しゃきっとして頂戴ね。」


「はい」







現在、私はお姉さまとスポーツ少年とともにお茶をすすっている。


あれから引きずられて行った先は校門からでてすぐの喫茶店だった。

学校の目と鼻の先にあるので学生にあふれてそうとか、内緒話に向いてなさそうとか思うが、そんな心配無用だ。

ここは一応情報通な私すら知らない隠れたお店で、来るとき正直ビビった。


なにせ、普通に民家にしか見えなかったからだ。

普通に門があって、家の表札(山田って書かれてた)もあるちょっとおしゃれな庭付き一戸建て。

看板とかおいてない。


その家に遠慮なく入っていくお姉さまにはドン引きしたし、不法侵入で怒られるだろっ!とさらなる混乱に見舞われたのは当然だと思う。これでも私は常識人なのだ。


で、玄関から入ったら目の前には階段。横には「すたっふおんりー」と張り紙された扉。


なにこれ?


と思ってたらお姉さまが私を引きずったまま階段を上りだした。


まぁ、当然私はこけたよ。


「あら?何してるの?」


と心底不思議そうに首をかしげるお姉さまに殺意を抱いたのは言うまでもなかろう。


そんなこんなで階段を上った先には、実にクラシカルでおしゃれなお店があった。


雰囲気のある喫茶店といった感じの店内で、学生の自分がひどく不釣合いな感じだ。

飴色のよく磨かれたテーブルやカウンター。すわり心地のよさそうな椅子。カウンター内には飾られていると言えるほど綺麗に納められた食器やコーヒー豆。レジ横には輝き放つスイーツがありどれも美味しそうだ。テラス席というのだろうか。外へと通じるガラス戸の向こう側にも席がある。しかも驚くべきことに完璧に外なのではない。ガラスで覆われた温室のようになっていて、天気が悪くても外の席が利用できるようになっているようだった。


そして、意外なことに店内はほぼ満員だった。


驚く私にお姉さまがいう。


「ここはね、一見さんお断りってことで、紹介がないとお店ってわからないようになってるのよ。」


どこの高級料亭だよ。と思った。


だが、そんな感じだ。店内に若い人は私たちぐらいで、後は年配の方々がほとんどだ。


高校生とか超アウェイ。


だから、すっごく目立ってた。入ってきた私たちもだが、すでに席についていた獅童陽介が。


こう、お姉さまは上品な雰囲気だからまぁ似合わなくもないのだが、獅童陽介の容姿はさわやかスポーツ少年系だ。つまり、騒がしそうなやつ。それが大人な雰囲気の店で、おとなしく本を読んでいるのである。実に気味が悪い。


だが、納得でもある。彼も仲間なのだろう。前世持ちの。


「待ったかしら?」


「待ってない。今日はさぼりの日だからな。」


さぼりの日?と首を傾げる私にお姉さまが説明してくれた。


「彼、練習嫌いなのよ。だから定期的にここでさぼってるのよ。」


・・・うわぁ。

彼も相当な原作クラッシャーだったらしい。

外見はそのままだが中身が全然違う。っていうか、今こうしてさぼっている彼の表情は普段の獅童陽介からは想像もつかないくらい不機嫌そうで、まるで別人だ。マジ怖い。


「そいつ、一年の安藤だろう?なんでそいつ連れてきたんだよ。」


うわっ、どうやら彼も私をストーカー的情報屋として毛嫌いしているようだ。


「噂に踊らされちゃだめよ?それに彼女がさっき話した子よ。」


「初めまして。安藤香織です。言っときますが私は決してストーカー的手段で情報集めて売り買いしている犯罪者ではないです。」


「そうそう。彼女は主人公への情報提供役だから自然と情報が集まっちゃうだけよ。」


……ん?


「おね……白木先輩ってゲームの詳細まで把握してるんですか?」


危うくお姉さまと呼びかけるとこだった。じゃなくて、仮にも男がなぜ乙女ゲームの詳細を知っているうえにしっかり覚えているのだ!女の私ですらあらすじ程度しか覚えていないのに!


私の質問にきょとんとしたお姉さまはしばらくしてあぁ、という風にうなずいた。


「詳しい話はとりあえず座ってからにしましょう?まだ、ちゃんと自己紹介もできてないでしょう?」


そういえばそうだった。私は名乗ったがさっきからにらんでくる獅童陽介は名乗ってすらいない。









その後、席に着いた私たちはそれぞれの前世込みの自己紹介と情報交換を始めたのだった。
















「まずは、私からしようかしら。」


そういったのはお姉さまだ。


「私は服飾科二年 白木つばさよ。前世は女の子だったの。だから乙女ゲームもしたことがあるし、女の子の服が好きなのよ。」


お姉さまは前世でまれに見かけたTSネタの体現者だったらしい。

なんか納得。


「じゃあ、次俺な。俺は体育科二年獅童陽介。前世も男だ。」


実にそっけない。だがまぁそんなもんか。お姉さまが濃すぎるだけだろ。TSで攻略対象に転生とかネタとして前世のWEBに話が上がってそうだ。


「私は普通科1-Aの安藤です。前世は女でした。うちの高校を舞台にした乙女ゲームをやったことはあります。」


「あら?」


私の自己紹介にお姉さまが首をかしげた。なんだ、なんかあるのか。


「安藤さん、シリーズで小中と乙女ゲームに出てるはずだけど、それをやった記憶はなかったの?」


あれ、シリーズだったのか……。


「やってないですから、詳細は知りませんし、あれらがシリーズだなんて知りませんでした。」


「まぁ。知らずに原作崩壊させてたのねぇ」


何やら関心しているお姉さま。うん確かに乙女ゲームとしては崩壊してたな。攻略対象が全員ヒロイン以外と結ばれるという乙女ゲームの定義を外れた結末だった。


「何?どういうこと?」


男であるために話についていけない獅童先輩にお姉さまは丁寧に、そして私すら知らない知識をもって説明してくれた。




とりあえず、いったん切ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ