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乙女ゲームの前後  作者: ゆい
乙女ゲーム前
4/10

03

さて、行動に移る前に攻略対象の情報をまとめよう。



と、思ったら、2名ほどおかしな奴がいた。



一人は噂のオネエな先輩である。


攻略対象にオネエはいない。

しかもあのオネエ、女装が似合う迫力美人とかしている。


その名は白木つばさ。

ゲームでは中性的な容姿に儚い雰囲気の美青年で、年の離れた姉がおり、姉弟仲は良好であるため女性の扱いもうまい一つ上の先輩。

所属は服飾科で、女性を美しく着飾らせるのが好きで、イベントも主人公をモデルに衣装を作るなどといったものがあった。


だが、現実はオネエと化し、本人が着飾っている服飾科の有名人である。

何があった?と聞きたくなる原作クラッシャーっぷりである。







二人目は体育科のさわやか系イケメン先輩である。

こちらはオネエほどあからさまではないが微妙にゲームの設定と違っていた。


ヤツの名は獅童陽介しどうようすけ

ゲームでは運動神経抜群なスポーツ大好き少年だ。

子供っぽい性格で、楽しいことには全力を注ぐ熱血的なところがあり、特訓、合宿などを進んでやりたがる体育科の一つ上の先輩だ。

イベントもスポーツ系で球技大会の練習にがんばる主人公に指導したり、逆に応援されたりと青春っぽいさわやかなものが多かった。


しかし、現実はちょっと違う。

運動神経抜群なのは確かだが、スポーツ大好き?子供っぽい?熱血?とちょっと首をかしげたくなる人物だ。

ゲームではたいてい何かしらのスポーツをやってて遭遇場所も校庭や体育館などで運動している場合が多いのだが、この先輩、昼休みはたいてい屋上で昼寝してるらしい。

しかも、特訓、合宿は割とさぼりがち。それでも持ち前の運動神経で何とかなるので文句は言えないし、休む理由も一応あるらしいが、真偽不明というのが現状だとか。




この二人ゲームの設定と異なっている。


今まではゲーム知識なくただ前世の記憶があるだけだった私には過去にかかわった人々がゲームと違ったかどうかはわからなかったが、今回ゲーム知識があるために気付いてしまった。


ゲームと現実が違うのはわかるが、1人別人かと思うくらい違うのだがここまで違うものなんだろうか?


もう一人はまぁ、許容範囲かな?となんとか思い込める。さらに、今学校にいる他の攻略対象者たちはおおむねゲーム通りの人間だ。


つまり、ゲーム設定を外れてしまうようなイレギュラーがあり、それがはっきり表れているのが白木つばさという人間なのだろう。


で、ここまで原作とかけ離れている人間というのに私も心当たりがある。

私と今まで出会った3人の主人公たちだ。

共通するのは前世の記憶、ゲーム知識だろう。

私は前世の記憶があるために彼女たちを嫌い、彼女たちはゲームの知識があるために自分は特別な存在だと思い、逆ハーを狙った。


前世の記憶または知識があるがゆえにゲームとは異なる行動をしているのである。


ならば、白木つばさも、もしかしたら獅童陽介も前世の記憶があるのではないだろか?











なら、早速行動を!


と行きたいが、バカ正直に「あなたに前世の記憶はありますか?」なんて聞いたら中二病の疑いがかけられること間違いなしだ。

中学の頃の一年間中二病患者として憐みと嘲りの中過ごした美少女を笑えない事態になる。

しかも、私の場合は高校3年間中二疑惑。間違いなく私の人生の黒歴史を飾るであろう。

そんなの嫌だ。


だが、オネエになった白木つばさのことはすごく気になる。


とりあえず、オネエになるきっかけでも聞きに行くべきか。親しくなってからこっそり聞いたら中二の疑いかけられずに済むと信じよう。























「こんにちは、白木先輩」

放課後、早速オネエのもとにあいさつに来てみた。

制服は決まっているが着こなしに関して特に厳しく言われない我が校では誰しも着崩したりしておしゃれを楽しんでいる。服飾科ではいかにおしゃれに着こなすかも重要で、おしゃれな人ほどセンスが良く将来有望とされているので、特に洗練されているが、このオネエは別格だ。

まず、制服が女子用である。

男装はままあるが、女装はこのオネエ一人だ。

しかもこの女子用制服、改造が施されていて邪魔にならない程度に品よくレースやリボンが付けられ、

私服にもできそうなデザインに変えられている。

そのうえ、太ももの半ばまで白いニーソックスで覆われ、その淵はレースで飾られている。そこから除く白い美脚は絶対領域が作られている。

長い髪はまとめられていて、まとめきれなかった残りの髪は緩やかに波打ち、サイドに流されている。

顔もうっすらと化粧がされていて、どこからどう見ても美女だった。


これで男とか詐欺だ。

実際、去年男と知らずに告白した可哀そうなやつがいたとか、学際のミスコンに優勝したとかいう情報がある。


「あらぁ、こんにちは。一年生よね?何か用かしら?」


声まで女だった。優しげで穏やかな声。声変わりしていないのかと思うぐらい男声特有の低さのない声だった。


ふざけてオネエとか言っていいレベルではない。完璧なお姉様だ。


「えっと…」


知ってはいても実物を見るとつい答えに詰まってしまう。

そんな私に、ん?と微笑みながら首をかしげる様は実に美しい。これがリアルとかマジか…。


「私、普通科一年の安藤香織です。そこそこ有名なのですが、ご存知でしょうか?」


とりあえず自己紹介。自己紹介飛ばして性別聞きたかったが、さすがにいきなりは失礼だろう。

ついでに、私について知っててくれたら話しやすくなる。


するとお姉様、少し驚いたような顔をして、手を合わせた。


「まぁ、あなたがあの安藤さんなのね!知っているわ。みんなあなたが入学したと聞いてわくわくしていたのよ~」


ですよね~。

イケメンとの仲を取り持つ情報屋として様々な女子が私を頼ってくる。


リアルファンクラブはさすがにないが、似たようなイケメンに群がる女子たちが私のもとにイケメンの個人情報求めてやってくる。

さらに、イケメンとの恋を成就させろと詰め寄る呆れた女子もやってくる。

そんなストーカー予備軍や恋を実らす努力しをしない女に私が協力するわけもなかろうに。

困ったものである。


それでも、私がイケメンとの仲を取り持つと絶対成功するとか、幸せになれるとか変な噂が流れてて、中2の時以来、女子で知らぬ人はいないというくらい有名になってしまった。


あぁいやだ。注目浴びたくないのに……。


「先輩も噂をご存じなんですか。言っときますけど情報売ったり、イケメン紹介したりはしてないですから、求めるのも警戒するのもやめてくださいね。」


そう、女子は求めてやってくるが、イケメンたちは警戒するのだ。役柄というのか、イケメン情報は勝手に集まってくるのであって、私が集めているわけでもないのだが、彼らにしてみればやたらと詳しい私は十分要注意人物に値しているらしい。別に住所やアドレスなどの個人情報は持っていないというのに。せいぜいどの辺に住んでるとか趣味や好物程度の情報でストーカーほどの情報は持っていないというのに噂が大げさすぎて警戒されるし、情報売り買いしてないのにしてると思われて「情報屋」なんて言われる始末だ。


はぁ。と肩をすくめてため息つくと、お姉様はクスクスと笑いだした。


「知っているわ。私の友人もね、あなたに好きな人との仲を取り持ってもらおうとしたのだけれど、断られてしまったと言っていたわ。」


「あぁ、そんな人もいましたね。告白なんて勝手にすればいいのになんで人を間に立たせようとするんだか。まぁ、そんなことはどうでもいいんです。先輩にいくつか聞いてみたいことがあってきたんです。」


「あら、何かしら?」


「白木先輩って男性ですよね。似合ってますけど、どうして女装を?」


頬に手を当て首をかしげるお姉様にとりあえずの疑問を尋ねると、少し驚いたように目を見開いた後、再び穏やかな笑顔で問いかけてきた。


「初対面で私の性別を言い当てるなんてすごいわね。それとも知っていたのかしら」


ふむ、私はゲーム知識により性別を知っていたのだが、ここで知っていたと答えると私にストーカー疑惑がかかりそうな気がする。

だが、知っていたと答えた方が自然だろう。だって見分けつかないし。どうやって?って聞かれたら答えようがない。


こういう時、腹の探り合いとかができるような腹黒系がうらやましい。

前世とか何の役にも立たんし。


「知っていましたよ。けど、ストーカー的情報収集で知ったわけではないですからね。」


「そう。それで、私がどうして女装しているかという話だったわよね?

別に大した理由でもないのだけれど、女の子のおしゃれって楽しいじゃない?だからね、女装して着飾っているの。好きな服着ておしゃれを楽しむのって幸せな事なのよ。」


そう言って微笑む先輩はずいぶんと大人びた表情で、どこか達観しているような雰囲気だ。

おしゃれを楽しむのが幸せな事だという先輩は一度そういうことができない立場になったからこそ言えるのだろうが、それにしても女装に走るというのは違和感がある。

別に女じゃなくてもおしゃれは楽しめるだろうに。


ていうか、めんどくさい。

普通に生きてる人間に腹の探り合いとか無理だ。

ズバッと聞いてしまいたい。


「言ってることはまぁ、わからなくもないですけどそれにしたって女装に走るなんて先輩って変わってますね。」


「でしょうねぇ。でも、それはあなたにも言えることではないかしら?」


「へ?」


私のどこが変わっているというのか?これでも一応普通なつもりだというのに。

だが、先輩は何やら意味深に微笑んでいる。


「あなたが知りたいのは“どうして私があなたの知る私と違うのか”ということじゃないかしら?

そして、私もあなたと同じではないかとおもったのよね?」


図星である。というか、その発想に至るということはつまり…


「答えは簡単。私も前世の記憶があるのよ。女の子の。」


「やっぱり……。私も変わってるって言うことは先輩もここがどこだか知っているんですか?」


「もちろんよ。あなたの小学、中学の時のゲームの内容も知っているわ。でも、ゲームとは全く異なる終わりを迎えたようだから驚いたのよ。そしたら噂であなたがかかわっていたという話を聞いてね、あなたも私と同じなんじゃないかと思って会えるの楽しみにしていたの。」


私より上の人がいたらしい。

ていうか、小児性愛者がやりそうなゲームをこの人はしていたのか。


「これで、3人目ね。早速みんなで仲良くしましょう。」


3人目って、早速ってどういうことだ。と唖然としている間に先輩はケータイを取り出してどこかに電話をかけだした。


「もしもし?私よ。お友達見つけたから早速カフェにでも行きましょう!いつものところで待ってるから!」


一方的にまくし立てて電話を切ったお姉様はそのまま私の手を取った。


「さ、行きましょう?」


「どこにっ!?」


「カフェよ~。お茶しながらゆっくり話しましょ?」





そうして、私はずるずる引きづられていった……。



お姉様はあらゆる点で私の遙か上を言っているようだ。はぁ。

難産。腹の探り合いのような会話は難しかったです。とほほ。

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