02
オトゲー好きの主張なつもりで書いてたネタが、意外といろんな人に見つかってしまった模様……。
ちょっとビビりましたが、頑張ります。
三度目の舞台はもちろん高校である。
っていうか、普通年齢的に高校が妥当だろう。
月下氷人(イケメン限定)で有名になってしまった私は、変わった高校はオトゲー舞台としてイケメンがいるであろうと予想。
我がK県が誇る無駄に豪華な私立綺羅星学院高等部がそれっぽいので避けて、自転車で15分な近場の公立高校に進学をしようとしていた。
うん、しようとしていたんだよ……。
まぁ、すべったけどさ。
テスト自信あったにもかかわらずすべったので、問い合わせたら解答欄ずれてた~とか、名前書き忘れてた~とかべったべたなミスいっぱいだったらしい。
その時の私、どうした?!と聞きたいくらいミスオンパレード。
結局、滑り止め兼記念受験してた私立高に進学することになったのだった。
(ちなみに、綺羅星じゃないよ)
桜の散りゆく4月。
入学式へとぼとぼと向かう道すがら、発見したのは本を片手に歩くイケメンだった。
周囲の女子がちらちら投げかける視線に気付かず歩く彼。しかも器用に電柱や植木は避けている。
微笑めば後光射しそうな穏やかなイケメン。
………………。
見なかったことにして、向かった入学式。
新入生代表はいかにもな細いフレームのメガネかけ神経質そうというか、なんというかなクールなイケメンだった。
ありがちだな。
………………。
在校生代表の生徒会長はフツメンだった!!
フツメン生徒会長に安心していた私に負報が襲いかかった。
イケメン限定月下氷人で有名な私のもとにはイケメン情報が集まってしまうのだ。
そして、知ってしまった。
一学年上にスポーツ万能さわやか系イケメンとオネエなイケメン先輩がいること、他の科におしゃれなイケメンがいる、若くてかっこいい先生がいるなどなど、な・ぜ・か1・2年と教師のイケメン率が高いということ。
念のため見て回ると、どいつもこいつも見覚えのあるやつばかりであった。
なんてったって、前世でそこそこはまってたオトゲーの攻略対象者たちだったのだから……。
ゲーム内容は簡単に言うと学内に散らばる各イケメンとちょっとかわいらしい容姿の優しい頑張り屋な主人公が創立100周年記念のイベントを通して仲良くなり、半年ほどで恋人同士になるというオトゲーだ。
主人公の性格の良さと豊富なイケメンの個性と青春な恋模様が評判で、私もなかなか気に入っていたゲームだった。
ここはあれだろう。
前世知識駆使してお気に入りキャラを落とすしかない!
と意気込むところかもしれない。
しかし、俺様、ドS、腹黒、病んデレなどは2次元なら好きだが3次元にいるとただの面倒な人間でしかない。
さらに、本物の主人公のような男に尽くしたり、いじわるに耐えたりするかわいげと健気さがない私がやつらの気を引き続けるなど無理だ。てか、自分が耐えられん。
現実っていうのは厳しいもんだ。
そこんとこわきまえてるので、そんな原作クラッシャーな真似はしない。
しないつもりだ。主人公がかわいげのある健気な子であるのなら。
が、経験がびびっというわけですよ。
また、逆ハー狙いなヤツ来るんじゃね?と。
健気?なにそれ美味しいの?な図々しい女来るんじゃね?と。
気になるよね?
めっちゃ気になるよね?
てことで、薄れつつある前世の記憶から、主人公のデフォな名前とストーリー、イベントなどなどこのオトゲーに関する知識を必死に掘り起こしてみた。
主人公は前園千鶴。普通科所属で帰宅部。成績はそこそこ良くA組所属でメガネや私と同じクラス(のハズ)だが、同じクラスにそんな名前の子はいない。
あれ?と思いつつ探してみるとC組にいた。
ということは成績はそこそこってことだ。
ゲーム開始は来年からだが、今C組ってどうなんだろう?
この高校は最初っからクラスは成績順だ。普通科は一学年200人で6クラスに分かれている。
そのため成績がどの程度かすぐにわかるのだ。
新入生代表のメガネはもちろんだが、前世持ちで勉強の大切さを知っているために勉学に励んでいた私は上位クラスA組所属だ。
そして、頑張り屋さんな主人公も1年の頃からA組という設定のハズなのだが……。
とりあえず、観察したり情報集めたり伝手作ってみたりしてみた。
主人公は休み時間、放課後、やたらとA組に来る。
ちらちらとメガネ気にしつつ、私になれなれしく話しかけてくる。私がいないときは、私以外の友人役のこに話しかけているらしい。
おかげで、クラスメイトに知り合いか?と尋ねられてしまった。
あんなうっとうしい知り合いはいない。と言っといたが。
授業中はこれまたあまりいいとは言えない授業態度らしく、イケメン教師(攻略対象)の授業は真面目に受け、積極的に質問したりしているらしいが、他の教師の授業は寝てる時があるらしい。
まぁ、高校生としてはありかもしれんが、頑張り屋な主人公としてはなしだろう。ていうかあからさますぎる。
さらに調べると、C組にはあまり親しい人間がいないらしい。
なんでも、私がC組なんて!とか、来年にはA組になるんだから!とか言って周囲と溝作ったんだとか。
これはもうあれだろう。
逆ハー狙いかまではわからんが、明らかにオトゲー知識持ちの転生主人公だ。
しかも、優しくて頑張り屋さんな主人公という周りから好かれる主人公という前提を壊してる原作クラッシャーなヤツだ。ついでに、主人公だからと調子に乗って勉強おろそかにして主人公補正期待してたっぽいあほだ。
こんなやつが主人公?
こんなやつがイケメンと恋をするのか?
こんなやつが愛されるのか?
こんなやつが?
私が好きだったかわいい主人公。彼女が恋をし、愛され成長していく素敵な物語。
それが、主人公に転生したからとこれといった努力もしていない、調子に乗った女が乗っ取ろうとしているのである。
そんなことが許されていいのだろうか。
また、そんなやつが攻略対象のイケメンたちを幸せになどできるのであろうか?
否、許されていいはずがなく、また幸せにできるはずもない。
すべては主人公が優しくて、努力家で、悩みのある彼らとともに悩み、時に励まし、ともに成長するそんな女の子だったからこそ成り立っていた幸せな物語だったのだ。
別人にマネできるはずがない。
今までは、終わってから気づいていたが、幸いにも今回は事前に気付くことができ、攻略したことのある乙女ゲームだ。
知識は十分。あとは人脈を広げていけばいい。
私の好きだった主人公を消し、私の好きだったそれぞれの幸せにつながっていた物語をつぶした報いをきっちり受けてもらおう。
そう、私は決意した。
月下氷人は仲人っていう意味です。本作主人公はオトゲー脇役なので顔は一応いい。クール系美人なので月下氷人とか言われることになりました。