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おまたせしましたぁ!ようやく更新です。
さて、あらかたの説明が終わったところで、長かった理事長の話も終わった。
内容はまぁ、創立祭やるよというのと、がんばれ学生!といったところか。
そして、次に生徒代表挨拶になる。
名を呼ばれ、舞台に上がった人物はあらゆる人に驚愕をもたらした。
制服から男性であることはわかる。長く艶やかな髪はシンプルに一つに纏められていて、それをなびかせ歩く姿は凛としていて美しい。マイクの前に立つと、男にしては繊細なその顔立ちが明らかになる。中性的で、どこか儚げな雰囲気が漂っていた。
「みなさん、こんにちは」
あいさつのために紡がれたその声は穏やかで、低すぎず高すぎず、耳に心地いい。
誰もがその声に、否、一部の泣き崩れている男子生徒を除いた人間すべてがうっとりと耳を傾ける。
さらさらと紡がれるその声は迷いなく挨拶を終えた。そして・・・・・・
「生徒代表 服飾科3年白木つばさ」
その名乗りに、再び驚愕に包まれる人間が多く出た。
そう、彼こそがあのお姉さまだった白木先輩である。
泣き崩れているのは先輩を女だと信じていた者たちだ。本気で憧れていた者たちもいたんだろう、人目もはばからず泣いてるやつもいる。驚いているのは先輩が普段女装をしていることを知っている人たちだ。女装でもあれだけ美人だったのだから元もいいだろうことはわかっていただろうが、男装姿は見たことがなかったのだろう。あまりのイケメンに、ついでに普段の声より低い美声に驚いたことだろう。初めて見たときは私たちだって驚いた。残りは知らなかったんだろう。普通にうっとりしている。
先輩の壇上の姿は実に絵になる。そう、これもちょっとしたイベントなのだ。
壇上の麗人にうっとりする主人公は隣にいた友人Aこと安藤香織に彼は誰かを尋ねるシーンである。
しかし、現実では、私の隣に彼女はいない。まぁ、当然の結果である。何せ今各クラスでわかれているから。Aの私とCの彼女が一緒にいるわけがないのだ。
だが、それであきらめては主人公の名が廃る!と言わんばかりに前園千鶴はこちらにこようとした。が、さすがにCの学級委員に止められ、連行されていった。本人不満気だったが、むしろ感謝すべきだと思う。
そんな彼女をちらりと見るときょろきょろしていた。そして、隣の女子生徒に何やら話しかける。隣の女子生徒はちょっと不満気にちらちらと前方を気にしつつも話していた。一方前園千鶴は満足げだ。いったい何を話していたのか。
「ねえ、安藤さん」
ちょんちょんと袖を引かれ、見れば隣にいた子が私に話しかけてきた。はて、何用かと首をかしげる。
「今の、白木先輩ってすっごく綺麗な人だったね。安藤さん、あの先輩のこと何か知ってる?」
はて、どこかで聞いたことのあるような・・・・・。
何やら違和感を感じつつも、とりあえず疑問に答えてあげる。
「知ってるよ。服飾科で最も有名な人だし。あの人かなりセンスがいいんだよね~。」
「へ~、そうなんだぁ」
彼女はどこか夢見るように白木先輩が去った舞台を見つめていた。
漸く始業式も終わり、ざわざわと人が混雑しながらも動き出す。この後はホームルームで今年の代表、学級委員などの役を決めなければいけないのでみんな大体同じ方向を目指して動き出す。
そこでもイベントが発生した。それは何ともガッツを感じる光景であった。
人ごみの中でも目立つ巨体に前園千鶴は体当たりをかましたのだ!
「あっ、すみません。」
なんて白々しい謝罪だろうか。
「いや。こちらこそ立ち止まっていて悪かったな。」
そう答えた彼はなんて紳士だろうか。混雑で止まっていたので彼は全く悪くないというのに。
そう言って振り返った彼に見とれる前園千鶴。それもそうだろう。彼はその巨体にふさわしい精悍な顔立ちの漢前だ。その巨体も脂肪で構成されているのではない。がっしりとした骨格に筋肉が程よくついて構成されたマッチョなボディだ。無表情なら威圧感を感じそうだが、その表情が困ったように微笑んでるので優しげな雰囲気がにじみ出ている。
「あ、あの・・・。お名前、お聞きしてもいいですか。」
「あぁ。俺は麻生冬馬だ。」
そう名乗った彼はそのままじゃあな、と言い置いて人波から外れ、その場を去って行った。
その場に残された彼女はしばしぼんやりと突っ立っていて、周囲の迷惑そうな目を集めていた。
これは、麻生冬馬との出会いイベントだったのである。ただし、これもやはりゲームとは少々流れが異なる。
ゲームでは、友人Aとの話に夢中になり前方への注意が散漫していた主人公がうっかり前にいた生徒にぶつかってしまうことから始まる。しかし、ここではお互いに謝るだけで終わり、その後、友人Aが彼について主人公に教えるのだ。が、今回前園千鶴は一人で歩いていたので、誰も彼について説明できていない。しょうがないのでここで私が説明しよう。
彼、麻生冬馬はマッチョなくせに体育科ではなく調理科の3年生である。
父親は有名なシェフで、高級フランス料理レストランで料理長を務めている。その店の経営者は母親が務めている。母親は食べ專だが、かなり舌が肥えており、彼女に認められた料理のみが提供されるそのレストランは予約いっぱいでなかなか入れない。そんな両親を持つ彼もフランス料理の料理人をめざしており、幼いころからの指導の賜物か、その実力は我が校でもぬきんでている。彼の作り出す料理は見た目も美しく繊細で、食べれば言葉もなくただ、ただ味わいつくしてしまうほど美味しい。そう、おいしすぎてそれしか言いようがないのだ。
そんな彼は両親の影響でかなりの美食家であり、それゆえにおふくろの味と言われるような家庭料理、若者は誰もが好きであろうジャンクフードを食べたことがないのである。
そのためか、彼とのイベントはそういった料理がかかわるイベントが多く、主人公が作ってきたお弁当を食べたり、一緒にジャンクフードを食べに行ったりするものがある。
ゲームでは頼もしさと包み込むような優しさを持つ料理のできる男子として人気を誇るキャラだった。
「お疲れ様です麻生先輩。」
「あぁ、まさか本当にぶつかられるとは思はなかった。」
私たちは周囲に人のいないところで合流した。
「すごかったわねぇ」
「あぁ。ああいうのを肉食系女子っていうんだろうな。」
そう感想を漏らしたのは一緒に様子を見ていた白木先輩と獅童先輩だ。
「そんなにか・・・。」
疲れたようにつぶやく麻生先輩の大きな肩にポンと手を当て、私たちは言った。
「あぁ」
「えぇ」
「はい」
「詳細はまた後でまとめて教えますね。とりあえずそろそろ教室に戻りましょう。」
こうして私たちはそれぞれの教室へ向かった。
A組の教室に向かう途中、スズメにぶつかられた。
「いたっ」
ぶつかってきたスズメはぶつかったにもかかわらず、滑らかな飛行で窓のサッシに止まり、可愛らしく首を傾げる。
「ちゅん。ちゅんちゅん。」
つぶらな瞳で何かを訴えるように鳴いてくる。昔のチワワの出るCMを思い出してしまうほどのかわいさだ。しかし、私は何を訴えているのか全く分からない。
「ちゅん。」
スズメはもうひとなきすると、そのまま飛んで行ってしまった。
気になって、視線で追いかければ、スズメはそのままC組の教室に入っていった。
そこで予鈴が鳴る。私はあわててA組の教室に入った。
最後にチートな彼女が出てきました。出そうか迷ったんですが、怒った彼女は特攻していきました。




