アザとー式作文講座(美少女キャラを書いてみよう!編)
書き手さん向けコメディーです。
ケータイから見てくださる方、ごめんなさい。少し長めです。
アザとーの作品を一作でも読んだ方はご存知だろう。俺、人物の外見ってあんまり細かく描写しないんだよね……髪色とか瞳の色とか、要となるパーツの説明程度で後は読み手様の妄想力にお任せしてしまう。
だからといって萌えな美少女が嫌いなわけではない! 青緑のツイテ可愛い某歌姫にかなり前から片思いしているのは家庭内でも有名だし、人類侵略を目論む海から来たダメ娘とか大好物っ! 美少女こそ最強! 美少女こそ正義っ!
だから美少女を、書くっ!
人物の外見を文章で書き表す……これはカメラワーク理論で言うと『ポートレートをとる』ということになる。
創作にあたって作者の頭の中には、キャラクターの外見的イメージがどんな形であれ存在するはずだ。だが、その全てを他人に伝えるのは難しかろう。
年齢は十代半ば、身長160センチ前後。痩せ型。青緑色の長髪を頭の高い位置で結んだツインテール。容貌の特徴は……
とやったら、どんなに愛くるしい美少女キャラもなんだか不審者のようである。
文章というカメラで撮るポートレートに必要なのは『ピント』。まずはキャラクターの中で一番特徴となる部分を探そう。
そして『ズーム』。その特徴を表すために必要な最小限のパーツを事細かに説明する。
手入れが行き届いているせいだろうか、緑青色のツインテールは朝日を砕いて輝いているというのに……伸ばした僕の指先が君に触れることないと知っているから……毛先を遊ばせているその風にすら嫉妬する。
髪色と揃いの大きな瞳はくるくると良く動き、まるで君の心を映す幻灯機。普段は小さく引き結んでいるくせに、笑うとき、歌うとき大きく開く唇が僕の全てに甘い傷を残してくれる。
うっわ、俺は中学生男子かっ!
◆◆◆
気を取り直して……今回の講義のために用意した主人公はごく普通の男子高校生。身長はクラスでも中程度……つまり大柄な女の子からは見下ろされてしまうが、小柄な女の子からは見上げられちゃう程度である。ここでわざわざ身長の設定を作ったのは、ポートレートには欠かせないカメラ位置による演出のためです。
健全男子諸兄なら大好きな雑誌のグラビアページ、上目遣いになるように張られた構図が圧倒的に多いことをご存知でしょう? これは人物写真を撮る上での基本的なテクニックです。
顔や表情を撮影する場合にはカメラをどの位置に配するかという位置関係でイメージを操ることが出来ます。カメラをやや上に置いて見下ろすように構えれば被写体は上目遣いで見上げざるを得ない。すると出来上がった写真に写るのは『か弱い』女の子が『可愛らしく』上目で見つめている姿。
これを文章で実際に表してみましょう。
主人公は家を出たところで待ち伏せていた幼馴染に会いました……という設定で、アクションんんん!
A子は小柄だ。どうしたって僕を見上げる形になる。しかし、幼馴染ながらよくもここまで美少女に育ったものである。
もちろん、本物の写真なら解像度によって毛穴まで写ってしまうのですが、文章というカメラはカメラマンの主観で成り立っているので『美少女』に必要なパーツだけをこのポートレートから書き出せばいいのです。
小動物のようにくりっと黒目がちな瞳は不安げに揺れている。額にかかった前髪がさらりと流れ落ちて白い額が露になった。
本人は「薄すぎる」と気にしているが、普段は隠れている細い眉が顰められている様子はいっそうに庇護欲を煽る。
え? 男なら乳を描写せよ? 甘いっすね。
ここで重要なのは距離感。遠くからズームで撮ったアップと、がっつり寄りで撮ったバストアップでは全然見え方が違ってしまうのです。二人が気心の知れた仲であるのを表すためにぐぐっと寄って上から見下ろせば一番手前に写るのは顔で、胸はむしろ見切れてしまう可能性が多い。
どうしても乳? じゃあ、距離感を表すために……
僕の表情を確かめるようにぐいぐいと近づいて来るものだから、小柄な割に大きな胸が無防備に押し付けられる。
どっすか? これでキュンった?
頼りなげな引っ込み思案キャラは好みじゃない?
じゃあ第二の刺客を送り込みます。
「二人ともなにやってんのよ、遅刻するわよ!」
クラスの世話役的美少女登場です。さばさばした性格で男子とも対等に渡り合える姉御肌キャラです。こういう相手には視線の高さが同じになるようにカメラを設定します。
被写体に親近感を持たせるためのテクニックです。
アザとー理論ではこのカメラ位置で撮影されている新人アイドルは『可愛がってね♡ 身近な美少女』みたいな感じで売り出そうとしている感がありますね。
B美だ。
けっこう可愛くて男子からも人気はあるのだが、本人はそんなことは気にも留めていない。
はい、基本的な性格描写はしました。お次は外見。
自分と同じ高さに彼女の目線があるとしたら、何が見えますか?
このときも相手との距離感を大事にしましょう。ただのクラスメートという立場なのに、乳が触れるほど近寄ったらドン引きされますよ?
普段陸上部で鍛えているだけあって引き締まった手足は陽色に染まって健康的だ。県下でも一位二位を争うスプリントとしての才能と反比例した胸周りは残念だが、しなやかな野生の筋肉が腰周りにむけて描き出すラインは『女性』のそれだ。
いつものアザとーならこの辺で描写ストップ!なのですが、もうちょっと美少女要素を付け足しましょう。
全体を見れば美少女なのだが、いかんせん鼻が低い……だが実に摘みやすそうな愛くるしい鼻先はイタズラ心をくすぐる。
「うるせ~よ」
きゅっと軽く鼻先を摘み上げれば、血色の良い少し日焼けた両頬が見る見るうちに朱さした。
男友達のような気安さでそばにいてくれる、でもちょっと気になっちゃうクラスメートの出来上がりです。
次は見上げる目線で美少女を映してみましょう。
ただ見上げるだけでは、いくら主人公が大柄でないとはいえ女の子の身長設定が180センチとかになっちゃいますよね。そういう設定も悪くはないけど、もっと簡単なテクニックがあります。
被写体を高い場所に立たせるか、カメラマンが這い蹲ればいいのです。
そこで彼には『なぜか始まった女の子二人の喧嘩を止めようとして突き飛ばされた』という受難を与えてみました。
アクショおおおおおン!
アスファルトにだらしなく寝転んだ僕の顔に赤いランドセルが影を作った。
きたあああああああ! ロリっ子降誕!
って、興奮している場合じゃないじゃんね。解説解説……下からのアングルは被写体の目線が上にあるため、どうしても見下ろされる感じがします。逆を言えば『強気』や『高貴』なイメージを演出しやすいアングルともいえます。
ただし実際の写真では意外に難しいアングルでもあります。人間の顔を下から見上げると鼻の穴や光線の加減で出来る影など暗い部分が多くなり、どうしても悪人面に写りがちだから。
それを逆手にとって悪人を表現することもありますが、今回は美少女だから! 文章というレフ版で光を補ってやれば良いだけの話です。
「そんなところで寝てると轢かれるわよ」
C代が小さな鼻をふふんと鳴らす。
「それにしても毎朝……よく飽きないわよね、あの二人も」
切りっぱなしのセミロングを揺らしてつかみ合う二人の高校生女子を冷ややかに見つめている。柔らかな頬を少し膨らませて小さな口を尖らせた表情は小生意気だ。
なぜロリっ子に設定したか、視点の変化をお見せするためです。
ようように立ち上がれば、C代は遥か下から心配そうに僕を見上げている。
「ねえ、本当に大丈夫?」
「心配してくれるの?」
「違っ! 頭でも打ってそれ以上バカになったら困るでしょっ!」
ぷっくりとした頬が薔薇色に染まっている。精一杯に胸を張って真下から真っ直ぐに見上げている表情はまるっきり、きかん気の強い子猫……
どうです? ロリ最強じゃね?
例えとして一番簡単な視点変更をあげましたが、美少女を書くに当たってこの視点変更はカメラマンと美少女キャラの心の距離感を変化させる仕掛けに使うことも出来るのです。
そうですね……B美との心の距離を詰めてみましょうか。
さっきまでは同一目線で正対していたがゆえ、気さくな友達関係っぽかったのですが……
突き飛ばされたB美は僕の腕の中にすっぽりと収まった。
おおっと、近づきすぎ! 撮影者の五感を映す特殊なカメラにチェンジですっ!
シャンプーの匂いだろうか、爽やかなシトラスの香りが鼻腔に流れ込む。
僕の体に当たった小さな胸の感触は生意気にも、わずかばかり柔らかな感触で衝突のショックを和らげているようだった。
はい、今まで意識していなかった彼女の『オンナ』部分を意識しちゃいました~表現の出来上がりです。
時にはこんなテクニック、あなたの文章表現に取り入れてみてはいかがですか?
今回はさすがに笑い要素が少なかった?
そのときはおっしゃってください、アザとーが反省のために正座します。




