圧死課の転生窓口
一
F市おれんち。上空、20000フィート。
A-22メスプレイは何らかの原因で、失速した。
金属と複合材からなる不燃ごみは、おれの6畳間のペンダントを目印に自由落下する。
パイロットはおれのマットレスに落下したため、まったく、傷ひとつなく生還した。
床で缶チューハイ飲んで、アニメを流しながら寝ていたおれは、圧死した。
気がつくこともなく。
二
立っている。おれの6畳間より狭い。
四方を白い壁で覆われている。安手のクロス。
ドアがない。どうやって入った?
上を見遣るが、シーリングがあるのみ。
1メートル前の折り畳み机。
白シャツに紺のパンツスーツの女が、肘をついてこちらの様子をうかがっている。
いつからそこに?
目が合う。
女の顔はたちまち明るくなり、両手を胸の前で組む。
「おはようございます!」
…おはようございます?
「井藤さん、こちらは圧死課の転生窓口になります。井藤さんは15トンと、記録的な重量による圧死ですので、圧死課としまして、かなり、融通することが可能ですよ。ご希望などありましたら、是非、おっしゃってください」
…希望? 金とか?
「金は、『行った先』の地域によって違いますし、そのものをお渡しすることができません。ゴールド、と言う意味でしたら融通することは可能ですが、地域によっては、庭の砂利がゴールドということもあります」
…じゃあ、年金は?
「それでしたら、可能ですよ。そうですね、2か月に一度、日本円にして21万円相当の貨幣が湧く、財布を融通できます」
…病気を治してほしいんだけど。
「圧死課は健康を融通しておりません」
…行った先の医療レベルが気になるんだけど。
「そうですね。『行った先』でいきなり亡くなってしまうのもなんですし。先ほど申し上げた財布に、1か月に1度、常備薬が湧く機能をお付けしましょう。薬代は、貨幣が湧くときにさっぴかせていただきますね」
……
金と健康は担保できた。あとは戦闘か? 正宗とかワードナの魔除けとか、チート武器もらっとけば。
「井藤さん? そんな体で戦うつもりなんです? 薬があっても怪我なんかしたら、治りませんよ。心配しないでください。安全な都市部、中世ヨーロッパ。王道を『行った先』に登録しておきましたから。サービスですよ!」
…どこから行けるのかな。
「下です」
四方をみた。上をみた。下は見なかった。おれは浮いていた。床は、1メートル四方切り取られている。その中にはクリーム色の……いやクリームそのものだな。
「また、圧死しましたら、こちらにいらっしゃいませ!」
…まった! dアニメストアは? DMM TVは? ネトフリは? 見放題の契約をくれ!
つま先から空間に落ちて、クリームに飲まれ、溺れていく。
次話は11月5日ごろ更新予定です




