朽ちた学校に安置は無い。
ワゴン車が砂を撒き散らしながら去っていった。
なんか分からないけど・・・すごい楽しみになってきた。
拳銃という武器を手に入れたことで気分は高揚し、Anomalyへの恐怖心は薄れつつあった。
「よし姉さん!はやく中入ろう!」
たまには俺が仕切ってもいいよね!
すぐに付いて来るものかと思ったが、姉さんは何やら言いたげな顔をしている。
「どうしたんすか・・・?」
「いやさ?もう少し車の中でさ?もう少し話し掛けてくれても良くない?」
「んなこと言われても・・・」
「話し相手いないと暇なんだからさー」
「とりあえず学校入らない?」
「ほらそうやってすぐ話逸らす!!!」
「ごめんって・・・」
口を動かしながらも昇降口に向かって足を進める。
姉さんもテクテクと後ろを付いてきているようだ。
玄関前の扉は朽ちて外れており、最早原型な残っていないように見える。
勿論鍵も掛かっていないため、その気になれば誰でも出入り出来るだろう。
「わお・・・思ったより廃校って感じだね」
「だね・・・てか中暗くない?」
玄関辺りは日光によって照らされてはいるがそれより少しでも奥に進むと、電気が通っていない関係上、薄暗くて不気味だった。
外からいくつか見えたが、恐らく全ての窓が板で塞がれており、中に日光が入ってこないのだろう。
「パイセンこういうの大丈夫そ?」
「いや絶対無理。」
ホラーゲームとかそういうのは無理な人間なんだよパイセンは。
「まぁそうだろうと思って・・・」
姉さんがリュックをごそごそと漁り始める。
そしてそこから、筒状の何かを取り出した。
「それって・・・!」
「じゃーん!懐中電灯!!!!!」
ナイス姉さん!!!ここまで懐中電灯で喜んだのは人生初かもしれない!!!!!!!
電源をつけると、薄暗い闇は消え、眩い光が辺りを照らした。
「どーするパイセン?一旦全体見て回る?」
「そうしよう。懐中電灯お願いね。」
「私が持つの???」
「おねがい。」
「やだ」
「(声にならない叫び)」
「結局俺が持つのかよ・・・」
「まず持ってきたことに感謝してほしいんだけどね?」
「それはその通りです・・・」
まずは1階から、くまなく教室を見て回る。
その教室も荒れ果ててるというか、朽ち果ててると言うか・・・
とにかく、ギリギリ部屋としての機能を果たせるかどうかというレベルの酷い有り様だった。
「どこ辺りで待機するとかも決めとかない?」
姉さんが提案する。
確かに、なるべく清潔な場所で待機したい。
「教室回りながら探そっか」
「一応候補はあるよ?」
「あるんだ」
「体育館とかその辺」
「見に行ってみようか?」
「いや!それは最後のお楽しみにしたい!」
なるほど。ショートケーキの苺みたいなものか。納得。
「これで、1階の教室は全部回ったかな?」
「もうひとつ校舎あるっぽいけどどうする?」
「面倒くさいな・・・」
「それならさパイセン、分かれて行動すればよくない?」
「最初からそれは考えてたんだけど・・・いつAnomalyが出てくるか分からないし怖いなーって」
「大丈夫大丈夫!なんかあったらお互いにに連絡しよ!スマホあるでしょ?」
「まぁあるけど・・・」
「懐中電灯もスマホのライトで代用出来るし!」
「確かに・・・!ってあれ?じゃあ姉さんの懐中電灯の意味無くない?」
「あっ・・・」
「・・・」
「そ、それじゃあ分かれよっか・・・懐中電灯は持っといて・・・」
ポンコツというべきか。まぁ懐中電灯の方が明るいし、持ってて損は無いんだけども。
姉さんがトボトボと玄関に向かって歩き出す。
補足すると、現在俺がいるのが南校舎だ。
玄関入ってから左に進むと北校舎に、逆に進むと南校舎に行けるらしい。
俺の地元はドが付く程の田舎だったので、校舎が2つあるという事実に驚いた。
「さてと・・・2階行くか・・・」
気を取り直して、2階への階段を登る。
踊場には誰かの肖像画のようなものが何枚も飾られているのだが、ロクに顔が見えなくなっていた。
肖像画って職員室とかに飾られてるものじゃないのか・・・?
疑問を抱きながらも、先に進む。
階段を登り切った後、すぐ近くに教室の入り口があった。
表札を確認しようとしたが、字がとてもじゃないが読めない。
なんだこれ・・・取りあえず入ってみるか・・・
扉に手を掛ける。力を込めてスライドするが、ガタガタと音を立てるだけで上手く開かない。
「固った・・・!」
更に力を込める。
「んどりゃあああ!!!!!」
ガゴォンッッ!!!!!
大きな音を立てて、扉がようやく開いた。
その瞬間、異臭が鼻を突いた。
「うおっ・・・!?」
本能的に後ろに下がり、扉を閉める。
この教室・・・理科室だ・・・!
薬品のキツい臭いがした・・・
探索したいけど鼻がイカれるだろうし、呼吸するだけでも人体にも影響出そうだからやめとこう。
理科室の扉に背を向け、2階の探索を続ける。
1階の時と同じように教室を調べるが、特に何も無し。
廊下の突き当たりまで歩くと、理科室のような扉が現れた。
「こっちも変な教室だったらヤダな・・・」
そう思いながら扉を開ける。
今度はすんなり開いた。
辺りを照らすと、ずらりと本棚が並んでいるのが確認出来た。
図書室か・・・特に何も無さそうだな・・・
一応探索してみるが、本棚の中とその中にある表紙がボロボロになった本しか見つからなかった。
これで2階の探索は終わり・・・でいいのか?
スマホを取り出し、姉さんに電話を掛ける。
2コール程度で繋がった。
『もしもしー?』
『2階の探索終わったよ』
『ナイスー!こっちももうすぐ終わるー』
『何かめぼしいものあった?』
『全然!!!普通の学校って感じ?』
『Anomalyっぽいものも?』
『一切居ないね。そもそも私たち以外の生き物がいない。』
『だよな~・・・』
『よし!今探索終わった!3階向かうね。』
『オッケー。3階の探索終わったらまた連絡するよ』
『はーい!』
・・・よし。向こうも順調みたいで良かった。
仮に姉さんに何かあっても、ここから助けに行くにはどうしても時間が掛かるからな・・・
まぁ姉さんならなんとかなるでしょ!
ふとスマホの時計を見る。
14時27分・・・
思ったより時間が経ってるな・・・
自覚はあまり無いけど、バイトの集合場所からここまで車で移動する際に、2時間程掛かっているらしい。
出来れば早く切り上げたいな・・・
そんな気持ちを胸に抱いて、3階の階段を登る。
念のため、拳銃を取り出して利き手に持ちながら移動する。
階段を登り切って、すぐ隣にはやはり教室がある。
どうやらこの学校は、階段のすぐ隣に若干大きめの教室があるらしい。
この学校は外から見た感じ3階建てなので、向こう側の階段の隣は屋上への入り口だろう。
正直教室の探索は面倒くさいし・・・一旦屋上に行ってみようかな・・・
そう思い、教室をスルーしつつ屋上を目指した。
一方その頃・・・
「なんもないじゃーん!!!!!!」
つまらないなぁ・・・
1階に給食室と職員室があって、2階には家庭科室と美術室・・・
そして3階には授業準備室・・・
なんだか面白くない・・・
Anomalyに出会いたいのか、と言われればそうだと答えれる。
早くこの拳銃と手榴弾を試してみたい・・・!
・・・人間って、力を持つと変わるんだなぁ・・・とか考えたりもした。
とはいっても!私はパイセンよりも知識が豊富なのだよ!なぜなら・・・
集合場所にて、まだ私しか集まっていない時に聞いておいたのだ!
「あの、今日討伐するAnomalyって、どのくらい危険なんですか?」
「そうだな・・・偵察部隊の情報によれば、危険度2って所だ。」
「あんま分かんないんですけど・・・」
「Anomalyの中では弱いが、一般人には勝ち目が無い。といった感じだ。」
「そのAnomalyについての詳細は伏せておこう。お前らには苦しんで貰いたいからな。」
というわけで、どうやらここのAnomalyはそこまで強くないらしい・・・!
てか苦しんで欲しいってヒドくない・・・?
期待の新人だっていうのに!!!少しくらい詳細教えてくれてもいいじゃん!!!!!
・・・まぁでも、私が手こずる相手では無いと思うけどね?
身体も心も厨二病の私に死角ナシ!!!
フハハハハハハ!!!!!
「あイテッ!?!?」
ようやく我に返る。
脳内で独り言を呟いている間に、屋上前の扉まで到達していたようだ。
前を見ていなかったため頭をぶつけているが。
「クッソ・・・ちゃんと前見て歩いてたのに・・・」
涙目になりながらドアノブに手を掛ける。
鍵等は掛かっていないようだ。
「そういえばパイセンに連絡しないと・・・!」
一方その頃・・・
よし!ここが突き当たりか・・・
電話電話っと・・・
あっ。掛かってきた。
『もしもーし』
『屋上前まで来ましたぞ~』
『こっちも着いたよ。屋上で合流しよ』
『了解~!』
電話を切り、扉を開ける。
開いた扉の隙間から日光が差し込んでくる。
「うわっ・・・!」
長い間暗所で活動していたためか、日光が目に刺さるように痛い。
久し振りに家出た時もこんな感じだったっけ・・・?
引きこもりの弊害が出てるな・・・
扉の先は螺旋階段になっていて、登ることで更に上に登ることが可能らしい。
取って付けたようなシンプルな階段で、イヤでも下が見えてしまう。
たっか・・・!こっわ!!!!!!
高所恐怖症なんだよ俺!!!!!
なるべく見ないようにしながら階段を登ると、今までにない開放的な空間に辿り着いた。
3階の天井の真上部分がそのまま屋上になっているようだ。
ふと辺りを見渡すと、向こうの校舎に姉さんがいるのが見えた。
「ねえさーーーーーーーん!!!!!!!」
声を張り上げると、姉さんはすぐにこちらに気付き、手を降ってくれた。
電話が掛かってくる。
『探索お疲れ様~』
『パイセンこそおつかれー!』
『ありがと~!これからどうする?』
現在の時刻は16時過ぎ。まだ日が沈むまでは時間がある。
『取りあえず体育館行こうぜ!』
そういえば体育館を残していたんだった。
『オッケー。じゃあ一度1階まで戻りますぜー』
『あいよー』
電話を切り、階段を降りる。
探索せずに降りるだけなら時間は掛からない。
2人共1、2分で玄関に着いた。
「久し振り~!」
「そこまで時間経ってないでしょ」
「せいぜい4時間くらいじゃない?」
「多分ね。それで、体育館ってどこにあるの?」
「南校舎の1階廊下の突き当たりに渡り廊下があるからそこからいけると思うよ」
「それじゃあ行くかー」
再び薄暗い廊下を歩く。
「それにしても、全然Anomaly居ないよねー」
「だね。こちとら張り切って片手に拳銃持ってるのに。」
「私はポケットからいつでも手榴弾出せるようにしてるよ!」
「物騒な会話だこと。」
そうこうしているうちに、突き当たりまで辿り着いた。
渡り廊下への入り口の扉はガラスで出来ており、そこから日光が入ってくるので若干周囲が明るくなっている。
扉を開けると、屋上と同じような開放的な空間が戻ってきた。
「待機するなら校舎内じゃなくてこの辺りにする?」
「そこ辺はパイセンが選んで貰って」
「じゃあ体育館とかにしようかな」
「体育館がまともな場所だったらの話だけどね」
体育館の入り口まで辿り着いた。
他の教室とは比べものにならない程大きな扉。
まるで、体育館の中にある秘密を守るかのように設置されていた。
姉さんが扉に力を入れるが、ビクともしない。
「ぐぬぬ・・・開かない・・・!」
「姉さんが非力なんじゃない?」
「パイセンもやってみる!?出来なかったら怒るよ!?」
「分かった分かった!よいしょっと・・・!!!!」
・・・ビクともしない。
「・・・姉さん、これ開かないわ。」
パァンッッ!!!!
姉さんがすごい勢いで俺の頭を叩く。
手加減を知らないのか。もの凄く痛い。
その後は、2人でなんとかして扉を開けようとしたが上手く行かず、日が沈み始めるのだった。
「パイセン!!!もう夜になるよ!?」
「え!?なんか暗いなとは思ったけど・・・そんな時間が経ってたとは・・・」
時期的には今は冬。
日が沈むのが早いのは俺でも知っているが、ここまでだとは・・・
引きこもりの弊害再び。
「どうする?いっそのこと手榴弾で・・・!」
「手榴弾はとっておきたいんだよなー・・・」
「パイセン何個貰った?」
「4個。」
「じゃあ合計8個か!ひとつくらい使っても大丈夫でしょ!!!!」
そう言うと、姉さんは手榴弾のピンに指を掛けた。
「姉さん!?!?!?」
「ほらパイセン離れて!!!!」
そしてピンを引き抜くと、扉の前に優しく起き、素早く離れた。
「ちょっと待って!??!?!?」
2人共遠くまで離れる。
そして数秒が経つと・・・
バアアアアアァァァァァァァンッッッッッ!!!!!!!!!!!
手榴弾が扉の前で炸裂した。
扉が煙に包まれる。
「ど・・・どうなった・・・?」
「煙で全然見えないねこりゃ」
しばらくすると煙は晴れ、扉が姿を現した・・・!
「壊れて・・・ない・・・?」
確かに扉はさっきよりも破損しているが、そこまで壊れている感じでは無さそうだ。
一応目の前まで行って、自力で開けようとしてみる。
「・・・開かないね。」
「よしパイセン。もう一発行こう。」
「おけ。」
もうめんどくさいからさっさと開いてくれ・・・!
もう一度ピンを抜き、手榴弾を爆発させる。
ドゴオオオオオオオオォォォォォン!!!!!!!!!!
・・・バタンッ!!!!!
「パイセン・・・!!」
「今の音は・・・!」
煙が晴れた瞬間、すぐに扉の前まで駆け寄る。
扉は外れており、体育館の内側に倒れていた。
「やったー!!」
「良かったね姉さん。これで中に入れる・・・!」
姉さんが体育館に足を踏み入れた瞬間、
ズオォッッ!!!!
地面から突如して数多の手が現れる。
黒と赤で塗りたくられたような外見の手。
それらが姉さんの手足を掴んだ。
「わああぁぁっっ!!!!!!」
「姉さんッッ!!!!!」
バアァンッッ!!!!!
ズバアァンッッ!!
咄嗟に拳銃を取り出し、姉さんの両腕を掴む腕を撃ち抜いた。
撃たれた手は崩れ落ち、地面に沈んでいく。
両腕が使えるようになった姉さんも拳銃を発砲し、脚を掴む腕を撃ち抜いた。
ズドオォンッッッ!!!!
バァンッッッッッ!!!!!!
姉さんはすぐに後ろに下がり、他の「手」を警戒する。
「今のは・・・!」
「今のがAnomalyってやつみたいだね・・・」
「コイツらを倒せってことか・・・!」
「パイセン・・・!コイツら、地面から無限に湧いてくる・・・!」
「はぁ・・・!?」
体育館の中の床は紅く染まっており、肉のような物で構成されていた。
そこから大量の手が生え、こちらに向かって伸びてくる。
「取りあえず校舎内に・・・って・・・!?」
廊下も既に、紅い肉で埋め尽くされていた。
床、壁、天井、全てが肉で構成され、そこから赤黒い手が伸びている。
「パイセン!グレネード投げるから、後ろの手をお願い!!!」
「わ・・・分かった!!!」
姉さんが廊下に向かってグレネードを投げる。
そして俺は・・・!
姉さんの背後に回り、俺達を狙う手を前に立ちはだかった。
「オラァッッ!!!!!」
ズバァンッッッッッ!!!!
ズドオォンッッッ!!
拳銃の弾をしっかりと当てる!!!!
幸い、拳銃一発でも当たれば手は崩れ落ちる!!!
つまり、撃ったもの勝ち!!!!!
バァンッッ!!!!!
ズガアァンッッッ!!!!!
ズドオォンッッッ!!!!!!
ひたすらに拳銃を撃ちまくる。
その時、後ろから巨大な爆発音が聞こえた。
「パイセン、道が出来た!行こう!!!」
「オッケー!!!!」
姉さんの合図を聞き、すぐに廊下に向かって走る。
手榴弾によって廊下の肉は抉れ、最初に探索したときのような姿に戻っていた。
しかし、奥からはじりじりと肉が迫ってきており、もたもたしているとすぐにやられてしまいそうだ。
「コイツらについて、心辺りがある!一度屋上まで行こう!!!」
「パイセンは後ろから援護をお願い!私はナイフでなんとかするから!」
相方が近距離武器を持っているのは心強い。
姉さんに近付く手を撃ち抜く。
俺に出来るのはそれだけだ。
ならば、俺はその責務を絶対に果たす!!!!
2人が階段を駆けあがる。
階段の途中からは肉が蔓延っており、2人に向かって手が向かってくる。
「うおおおぉりゃああ!!!!!」
ザシュッッ!!!!!
ズシャアッッッ!!!!
目の前の手をナイフで切り刻み、失速しないように階段を登る。
バァンッ!!!!!
ズゴオォンッッッ!!!!!
後ろからの銃弾のカバーもあり、かなりのスピードで階段を登り切った。
3階廊下。
深紅に染まる廊下から、異様な数の手が姿を現した。
さっきみたいにこれを使えば・・・!
「うおらぁぁッッッ!!!!!!」
ピンを引き抜いた手榴弾を投げ、それが空中で爆発した。
同時に周りの手を撃ち抜き、姉さんの援護をする。
「グレネード投げまくれば案外なんとかなる!頼んだよパイセン!!!」
「あいよ!!!」
再び、姉さんの前に手榴弾を投げ、それが炸裂する。
炸裂したことで肉が抉れ、道が出来る。
そこを姉さんが駆け抜ける。
完璧な作戦・・・!
走り続け、屋上への階段まで辿り着いた。
屋上も同じように血みどろのような赤色で染まっている。
「はぁっ!!!!!」
ズシャアァッッッッ!!!
グシャアッッッ!!!!
姉さんが辺りの手を切り刻みながら、南校舎側の屋上を指差した。
指の先には巨大な貯水槽がある。
「多分アレが本体だ!!」
「多分って・・・!なんでそんな事言い切れるの・・・!?」
「屋上に来た時、貯水槽に近付いたんだけど!何かが中で蠢くような音がした気がするんだよ!!」
「じゃああれを撃ち抜けばいいんだね!?」
「気のせいだったらゴメン!!!!そういうこと!!!ってマズい!!!!」
喋っている姉さんの隙を突き、幾つもの手が姉さんの脚を掴んだ。
「クッソ・・・!」
拳銃を構えるが、その手さえも掴まれてしまう。
「うわっ・・・!」
「姉さん!!!!!」
ガシィッッッ!!!!!!
「!?」
「パイセンッッ!!!!」
ヤバい・・・!頭を掴まれてる・・・!このままだと・・・!!
グシャアッッ!!!!!!
頭を掴んだ腕が、そのまま頭を地面に叩き付ける。
「ぐッ・・・!」
「パイセン!!!マズい・・・!!」
「クソッタレッッ!!!!」
ズバアァンッッッッッ!!!!
あとは姉さん!頼んだ・・・!
辺りから大量の手が出現し、完全に身体を拘束した。
弾丸が姉さんの右腕を掴んだ手を撃ち抜く。
これで銃が撃てる!!!貯水槽に向かってブッ放す!!!!!
「うおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!」
バアァンッッッッ!!!!!
夜の闇によって向こうの校舎の景色はかなり見えにくい。
しかし、姉さんの放った弾丸は正確に飛んでいき、
貯水槽に命中した!
貯水槽から赤い水が零れだし、中から巨大な肉塊が出現する。
あれが本体・・・!やっぱり私の予想は当たってた・・・!
しかし、姉さんの腕に何本もの手が伸びる。
パイセンは拘束されてて動けない・・・!ならこれで決める!!!!!
ズドオォンッッッッ!!!!!!
弾丸が肉塊に向かって飛んでいった。
そして、その弾丸が肉塊に触れる。
その瞬間、
ズバアアアァァァァァァァンッッッッッ!!!!!!!!!!!
巨大な肉塊が破裂し、2人に纏わり付く赤黒い腕は全て崩れ落ちた。
地面の肉も、だんだんと消えて行く。
十数秒経つ頃には、2人の周りは至って普通の寂れた学校に戻っていた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・終わった・・・?」
「よいしょっと・・・!やった・・・!勝った!!!!」
「いやったあああああ!!!!!!討伐成功!!!!」
「やった・・・バイト・・・しゅうりょ・・・」
バタッッ!!!!!
「え!?パイセン!?」
慌てて駆け寄る。
「良かった・・・ただ寝てるだけだ・・・!疲れてたんだろうね・・・」
私も寝よう・・・いつもだったら余裕で起きれる時間だけど・・・今日は疲れた・・・おやすみ・・・
それから2日間の時は流れ・・・
「見てパイセン!!!!あれ!!!」
「ん?何か面白い物でも・・・!あ、あれって!?」
「「ワゴン車!!!!!」」
階段を駆け降り、玄関から勢い良く外に出る。
「たっだいまー!!!!!」
「帰ってきましたよー!!!」
手を振りながらワゴン車に近付く。
運転席の窓が開き、久し振りに見る顔が現れた。
「生還おめでとう。まさか生きているとは思わなかったぞ」
初対面の時には見られなかった、若干の驚きの混じった表情でこちらを見つめる。
「あったりまえですよ!私達のコンビを舐めないで貰いたい!!!」
「今回ばかりは褒めさせてくれ。本当に良くやったな。」
「それほどでも・・・」
「さて、折角なので名乗らせて貰おう。依剣だ。」
「お前達も名乗って貰えると助かるんだが、どうだ?本名じゃなくても問題無い。」
「空って言います。」
「私は咲橘って名前だけど・・・姉さんって呼んでくれると嬉しいです!」
「空と咲橘か、宜しく頼むぞ。」
「「よろしくお願いします!」」
「さて、じゃあバイトの報酬だ。受け取れ。」
封筒を手渡される。
それからはずっしりとした重みを感じる。
これが札の重みなのか・・・!?
そう思い、2人同時に封筒を開け、中身を見る。
そこには、大量の万札が入っていた。
「えぇ!?」
「めちゃくちゃ入ってるよこれ!?」
驚いてる2人を横目に、依剣は呟いた。
「60万程入っているからな。」
「「ろくじゅうまん!?!?」」
その言葉に思わず叫んでしまう2人。
そして、封筒を握り締めたまま硬直する。
それを待っていたかのように、依剣は言った。
「さて、これでバイトは終わりだが、このままここで働いてくれるならもっと給料を・・・」
「「やります!!!やらせて下さい!!!!!!」」
「・・・想像以上に食いつくなコイツら」
初めての依頼を成功させた。しかし、2人のバイトはまだまだ続く・・・
きなです。2話です。今までにない文量で自分でも驚いています。




