謎のバイトは人気が無い。
20XX年
日本に銃刀法の規制が無くなり、一般人の銃火器の使用が可能になった。
それによって貿易の内容が変わったりとか・・・したんだと思う。多分。
いやまずは犯罪とかその辺りか・・・?
あーーーーもう!!!!
びっしりとマーカーが引かれた歴史の教科書に突っ伏して、1人の青年が叫んでいた。
大体歴史ってなんだよ・・・やる必要ある?
やめだやめだ!!!やはりスマホこそが正義!!!!
机を離れ、布団にくるまる。
もう夕方だというのに起きてからずっとパジャマ姿であった。
スマホをぼーっと眺めながら、通知を確認したりしている。
・・・メッセージ来ないなー。こういうヒマな時に限って来ないんだよなー。
あ、もう夕方か。晩御飯の準備しなきゃ。
でもめんどくさいな。後でいいや。
あ?今俺のことめんどくさがりなヒキニートだって思ったでしょ?
・・・正解だよ。
いやでも学校はしっかり行ってるし!!!
今は夏休みだからいいけどね!?!?
・・・何してんだろ俺。一応アプリ開いてみるか・・・
俺がいつもやりとりで使うアプリ、「biscord」を開く。
数秒経ちアプリが起動されると、赤い丸に①のマークが現れた。
メッセージッッ!!!!!!!!
だああありゃあああああ!!!!!!
こういう時の反応スピードだけ異常に早い。
DMを開くと、いつも会話してる心友からのメッセージが届いていた。
『パイセンパイセン(·▷.)』
このメッセージを送ってくれた人物こそが、俺の唯一の友達である。
中学の頃は何人がいたんだけど・・・疎遠になってしまった・・・
でも大丈夫!!!!俺にはまだ心友がいる!!!!うん。大丈夫。大丈夫ってことにしよう。心が痛くなるから。
引きこもりで鍛えられたタイピングで、メッセージを返す。
『どしたー』
・・・大した文字数じゃないからタイピングもクソもない。
数秒程でメッセージが帰って来た。
『パイセンって今お金困ってる?(·▷.)』
随分とまぁ・・・なんか怖いことを。
実際困ってはいるんだけどね。
『急にどした()マルチとかはちょっと遠慮したいんだけども()』
『ただの高額バイトだよ(·▷.)』
『それはそれで闇がありそうだが』
『ダークなバイトでは無いから安心なさい。』
バイトか・・・一応今もやってはいるが、正直給料には恵まれていない。
変えてみるのもアリだな。
『まぁ大丈夫なやつだと信じるわ。』
『詳細聞く?(·▷.)』
『聞く。』
バイトの詳細を聞いてみることに。
『なんかね、すごく面白そうなんすよこれが。』
『というと?』
『未知の生物の監視と鎮静?とか。』
『なんそれこっわ。』
思いの外クレイジーなバイトだった。
ただ面白そうなのは事実なので、もう少し話を聞いてみる。
『具体的に何すればいいん?』
『説明めんどいからリンク送るわ(·▷.)』
『Oh...』
一度スマホを置き、リンクが送信されるのを待つ。
説明が遅れたが、この人が俺の心友、通称姉さんである。
別に姉では無い。ただ向こうがこれで呼んでほしいとのことなので。
中学の頃に知り合ってから、毎日のようにbiscordで会話している。
今は絵師をやっているらしい。すごいよマジで。
肝心の俺はというと、無理して大学を受けて現在浪人中。
それなのにロクに勉強していない。バカだよ本当に。
あ、リンク送られてきた。
青く光るリンクをタップすると、数秒足らずでサイトが開かれた。
なになに・・・?
"AnomalyExecute"・・・
え、かっこよ。
でかでかとその文字が表示され、下にスクロールしていくと様々な説明が書いてある。
こういうのは嫌いじゃない。なんなら大好きである。
ただ、実際にこういう組織があるという事実がなんだか怖い。
未知の生物の監視と鎮静・・・確かにそう書いてある。
採用情報と書かれた欄を開いてみる。
・・・どうやら今年は10名募集しているらしい。
0/10と書いてある・・・誰も申し込んでねぇ!!不安!!!
締め切りは・・・一週間後か。
一度biscordを開き直し、姉さんに尋ねる。
『ここから申し込めるんすか?』
『出来るっぽいよ(·▷.)』
『姉さんは申し込むん?』
『もうしてる!』
『え?』
慌ててサイトを開き直すと、募集人数が1/10になっていた。
流石姉さんだ。考えるより先に行動している。
見習いたいけど見習いたくないといったところか。
『パイセンもやるでしょ?やるよな?な?(·▷.)』
待てと姉さん。多分だけど相当リスクあるバイトだよこれ。
だってさ?未知の生物とか書いてあるよ?ワンチャン死ぬよ?
まぁ・・・折角だしやってみるか。死んだら死んだで・・・いやこええよ。
葛藤しながら、申し込みの決定ボタンを押した。
それにしても、フォームに入力する内容が少な過ぎるのが気になった。
電話番号とメールアドレス、それと志望動機?みたいなやつ。それだけ。
本格的に不安なんですが。
申し込みが完了すると、画面にでかでかと数字が表示された。
『265799』
数字の下には、『必ずどこかにメモを取るなどして、紛失を防いで下さい』
と書いてあった。
ソシャゲとかで良くあるやつだ。
スクリーンショットを撮って保存しておく。
色々と面倒くさそうだけど・・・まあ・・・いっか。
えっと・・・?初仕事が北海道の方であるらしい。二週間後に。
・・・飛行機で行くしかないか・・・
『姉さんも飛行機で行くん?』
『そだね(·▷.)』
『了解~』
バイトが始まる二週間後まで、若干期待して待つことにした。
一週間後。
一通の電子メールが届いた。
「誰だあぁ・・・?」
時刻は午前1時。今から寝ようかと思っていた所にメールが届いたので、気になって確認してみることにした。
そもそも、基本的に俺がやりとりで使うのはbiscordだけだ。電子メールで送ってくる人物なんて心当たりがないんだが・・・
寝ぼけ眼で画面を見るが、件名を見た瞬間、眠気が吹き飛んだ。
件名:申し込みありがとうございます。
!?
間違いない。あの謎バイトについてのメールだろう。
差出人を見ると、『AnomalyExecute』と記されている。
一度本文を読み進めてみることに。
先日は、AnomalyExecuteへ申し込み頂き、誠にありがとうございます。
今から一週間後に、北海道にてバイトがございます。
Anomalyの討伐を行ってもらうため、各自物資を準備してください。
集合時間は、午前10時に、メールの最後に住所が記されていますのでそちらをご覧下さい。
メールの一番下には、住所ではなくURLが記されていた。
ページを開くと、番号を入力する画面が出現する。
あぁ。ここに前スクショした数字を入力するのか。
そこそこ厳重らしい。
265799・・・っと。
数字を打つと、マップ表示サイトらしきものが表示される。
衛星写真が表示されると同時に、右上に住所が書かれているのが見えた。
映されているのは巨大な建物のようなものだった。
空港からの最寄りルートを表示する。便利な時代になったものだ。
・・・なんか疲れたな。今日はもう寝よう。
と思ったのだが、biscordから通知が来た・・・
『パイセン!!なんかバイト先からメール来た!?(·▷.)』
来たよ・・・来たんだけど・・・寝かせてくれ・・・
~なんやかんやで一週間後~
荷物をまとめて、アパートから出る。
バスに乗って空港に向かう。
『パイセンもう移動してる?』
『今バス乗ってるわよ』
『おっけー(·▷.)』
空港が家からそこそこ近くて良かった。
20分程バスに乗ればすぐだ。
そうして空港に辿り着き、飛行機に乗る。
・・・未知の生物・・・楽しみだな。
数時間のうたた寝の後、飛行機が着陸し、スマホが使えるようになった。
一週間前にメモした住所に向かって歩いて行く。
歩いて行くに連れて、周りの建物は廃墟に近付いていき、人気も無くなっていく。
「こっわ・・・」
biscordの通知が来た。
『こっちはもう着いたよ~』
姉さんも徒歩で移動してるのか?それにしては速い気もするが。
更に先に進むと、周りの建物すらも減っていき、奥に巨大な建物が見え始めた。
衛星写真で見た時もそうだが、巨大な建物の周りは何もない広大な土地になっており、異質というか・・・なんだか異様な雰囲気を醸し出している。
建物まで数百メートルというところまで近付いた、その時だった。
「・・・!?」
突然、辺り一体の景色が和やかな草原へと変化する。
さっきまでは無機質なコンクリートだったというのに。
「手の込んだ歓迎・・・とかじゃなさそうだな・・・」
ふと前を見ると、草原に佇む少女の姿が見えた。
その少女はこちらを向いて、含みのある笑顔でこちらを見つめている。
あの少女に何かあるのか・・・?
そう思い足を動かそうとする。
・・・動かない。足が全く動かない。
「足が・・・!なんで・・・!?」
少女が近付いて来る。
よく見ると、少女は手に何かを握っていた。
・・・刃物だ。
ソシャゲのやり過ぎで分かってしまう。
「クッソ・・・!」
バッグから何か取り出そうとするが、手も動かしにくくなっていた。
足から頭にかけて、段々と身体が動かなくなっていく。
ダメだ・・・身体が・・・
少女が目前まで近づいたその時、
ゴオオオオオォォォォォッッ!!!!!
目の前の草が炎を上げて燃え始める。
「何が起こって・・・!」
前を向くと、炎の間から人影が現れた。
そして、聞き慣れた声が聞こえてくる。
「パイセン!さっさと逃げるよ!!」
「姉さん!?」
俺が質問する間もなく、姉さんは俺の腕を掴んで走り出す。
しばらく引っ張られていると、地面が再びコンクリートに戻っていた。
それを確認すると、姉さんは手を離し、こちらを向き喋り始めた。
「危なかったね~・・・」
「あのー・・・」
「どした?」
「何が起こったの?さっき・・・」
「いやね?パイセンが来るの遅いから迎えに行こう!って思ってたら、なんか草原が見えるものだから近付いたらパイセンだったんだよね。」
「どういうことなんだマジで・・・」
「こんなこともあろうかとマッチ持って来て正解だったよ」
「あれマッチの炎だったのね。」
「よし!それじゃあ気を取り直して行くよ!今9時50分だから早く行かないと!」
そう言うと、姉さんはもの凄い速さで走り出した。
「待って姉さん!?速い!速いから!!」
その時、一瞬だけなんとなく後ろを振り向いた。
・・・さっきの少女と、目が合ってしまった。
遠くからでも分かる。
こちらをギロリを見つめるその目からは、憎しみや妬み、恨みなどの感情が読み取れた。
怖くなって、脚により力を込めて姉さんを追いかけた。
数分後。
建物の前に辿り着くと、教官っぽい人が立っており、こちらを見つめていた。
手招きをされたので、その人の近くまで寄ってみる。
ガタイの良い男性だ。近くまで来た時、太い声で喋り始めた。
「お前達が試験に申し込んだ奴らか?」
「そ・・・そうです・・・」
「はい!」
鋭い眼光と気迫に圧倒されて、上手く声が出せない。
「よく来たな。ここまでの道のりもしんどかっただろうに。」
「それって・・・!」
さっきの少女を思い出し、若干食い気味に尋ねる。
すると、興味深そうな顔をしてこちらを見た。
「会ったのか?お前達も・・・」
「あぁ!あの女の子のことね!」
姉さんのおかげでギリギリ逃げ切ったあの謎の存在・・・
この人はアレを知ってるのか?
「あれこそが、ホームページに書いてある『未知の生物』ってやつだ。」
「「・・・!?」」
姉さんと俺が同時に身構える。
続けて男が話し掛ける。
「我々はアレを『Anomaly』と呼ぶことにした。」
「アノマリー・・・」
なんとかっこいい響きだろうか。ゲームでしか聞いたことのない言葉に興奮を隠せない。
「それをを殺したり、捕獲したり、色々するのがこの組織だ。」
「はぁ・・・」
姉さんも興味津々のようだ。
勿論俺も。
「今日はバイトとして、とある『依頼』を受けて貰う。」
「付いて来い。」
そう言うと、男は建物の入り口に向かって歩き出した。
そして入り口の扉の前にあるケースを拾うと、そこから何かを取り出し、それを山なりにこちらに投げ渡した。
「おわぁ・・・!」
慌てて受け取ると、それは・・・
拳銃だった。
・・・けけけけけっ拳銃!?!?!?
拳銃!?!?!?!?えぇ!?
とんでもない物を握ってしまっている事実に動揺する。
震える手で銃を構えると、もの凄い満足感を得ることが出来た。
まさか、FPSゲームのように撃つ側の人間になれるなんて・・・!
嬉しいけど、普通に驚きのほうが勝つ。
姉さんの方はというと、拳銃を握ってポーズを取っている。
もうちょっと動揺しなよ。人間として。
男が再び話し掛けて来た。
「それと・・・これを渡しておく。」
今度は手渡しで球状の何かを渡して来た。
これは・・・手榴弾!!グレネード!!!
「おおーーーっ!!!!」
姉さんが歓声を上げた。
「ポケットにでも入れとけ。間違えて起爆したらシャレにならないからな」
「あっはい。」
急に冷静になった姉さんを横目に、俺もポケットに手榴弾を入れる。
「今から車を出して、依頼の場所に向かう。乗れ。」
「はーい!」
そう言うと、男と姉さんが付近に止めているワゴン車に乗り込む。
「パイセン早くー!!!」
「今行くって!!」
後部座席に座ると、男がエンジンを掛けながら話し始めた。
「今から行く場所はとある廃校だ。そこでAnomalyの目撃情報があった。お前達にはそれの討伐を頼みたい。」
「それがバイトってことですか?」
姉さんが尋ねる。
「そうだな。2日間そこで過ごして貰って、その後に俺が迎えに来る。まあ最悪討伐はしなくてもいい。生き残れただけでも十分凄い。」
え?普通に死ぬ可能性のが高いってこと?????
冷や汗が噴き出る。死のリスクを自分から侵しに行っているこの状況が恐ろしい。
しかし、それでもワクワクしている自分がいた。
数分の沈黙の後、気まずい空気を変えるためにも、俺も質問をしてみることに。
「あの~・・・」
「何だ?」
「なんですか!?」
姉さんには聞いてない。一旦無視して質問を続けることに。
「その、試験を受ける人って自分達だけなんですか?」
「あぁ。お前達だけだ。というか2人も来るのが珍しいくらいだ。0人だってザラにあるからな。」
「まぁ命賭ける仕事ですもんね・・・?」
「そうだな。だが、給料はうまいぞ。」
給料、という言葉に身体が反応する。
「聞きたいか?給料の額」
「・・・!」
言葉に詰まっていると、ワゴン車が止まった。
「残念だが、ここで話は終わりだ。着いたからな。続きは3日後、生きて帰ったらだ。降りろ。」
クッソ!良いところだったのに!
しかししょうがない。言われるがままに車を降りる。
「一応言っておくが、逃げ出すなんてバカなことはするなよ。」
「勿論です!」
ここまで来て投げ出す訳が無いだろ!と心に思いながら、校舎を眺める。
いかにも廃校。何が出てもおかしくない不気味な雰囲気を纏っている。
「それじゃあ俺は行く。健闘を祈る。」
そう言うと、ワゴン車は行き道と同じ道を走って帰っていった。
ここから本格的に、命を懸けたバイトが始まるのだった。
きなです。新作です。不定期更新になると思います。
完結までは時間が掛かりそうです。温かい目で見ていって下さい。




