イマジナリーマジックバンドの言う通り!
「あっ、おはようロイ君」
「おはようローズさん」
「………」
「………」
教室で挨拶を交わした2人は、そこで会話が途切れた。
昨日までは、その後自然とほかの話題に移れたのに、どうして今は話せないんだろう?マジバがいると自然と頼りたくなってしまう。
ローズは泣きそうになった。
(どうしよう…マジバ…)
思わずマジバに頼ってしまう。
また振り出しに戻り成長しない自分に嫌気がさすが、マジバが答える。
『ローズがロイ・ダグラスとの会話を上手く続けられないのは彼に好意を抱いているからです。いっそのこと彼に想いを伝えてみれば良いのでは?』
(そんな事…まだ早すぎるよ…)
『恋をして想いを伝える時間に早い遅いはありません。現に一目惚れした当日に告白する人の割合は全体の12%とのデータがあります』
それは、多くはないのでは…?と思いながらロイを見ると彼が顔を赤らめてこちらを見ている。
ローズが何故だろうと考えていると、ロイの手首からピピッっと小さな音がして
『さきほどローズ・ウィステリアがロイに好意を抱いているとの情報が上書きされました。よって、ロイとローズ・ウィステリアが両思いであると推測されます』
えっ、マジバ喋ってる…?とローズが驚くと、ローズのマジバが答えた。
『先ほどの発言から考えられるのは、ロイ・ダグラスがローズに思いを寄せているということです。間違いありませんか?』
えっ?……えっ!?
いつものように脳内に音声が響くわけではない。
「マジバ…喋ってる?」
ローズの呟きは
『はい。ロイはローズ・ウィステリアに思いを寄せています。ローズ・ウィステリアもロイに思いを寄せているとの発言により、2人は両思いであると推測しました』
というロイのマジバの発言にかき消された。
後ろの方で
『ロイ・ダグラスとローズ・ウィステリアはお互いに想い合っているのですね。とても素敵なことです。メグも早く恋人ができるといいですね。』
「ちょっ!余計なお世話よ!!」
と聞こえる。
横から近寄ってきたサイラスが
「お前ら…マジバの外部会話機能OFFにしてねーの…?」
と呆れた声で言った。
外部会話機能、それはマザーが再起動した際にアップデートされた新機能。
この機能は、今まで魔力を通して脳内で会話していた機能にプラスして魔力を通さずとも常時会話が出来る機能であり、魔力を通さない代わりに脳内ではなく直接発音するというものだ。
会議や議事録を取ることを想定した機能であり、社会人にはありがたいアップデートだと高評価だという。
デフォルトはONの状態であり、従来の使い方で充分の人は設定からOFFに変更する必要がある…。
「って、昨日マジバが言ってたけど」
サイラスはそう教えてくれた。
「マジか…今日の朝、バタバタしながら再起動したから説明とか聞いてなかったわ」
とロイは頭を抱え、
「そう言えば、昨日マジバとお喋りしてたけど、脳内じゃなくて普通に喋ってたかも…久しぶりのお喋りで全然気づかなかった…確かに外部会話云々言ってたような?」
と昨日マジバに一方的に話しまくっていたローズが続く。
「あなた達、本当に…ポンコ…じゃなくて、天然なのね…」
とメグが呆れたように言い
「いや、メグもOFFしてなかったじゃん」
とサイラスにツッコまれた。
そのまま授業開始のチャイムが鳴り、それぞれ席に着く。
(マジバ…設定変更。外部会話機能OFFにして。これで私にしか声は聞こえないよね?)
『はい、ローズ。外部会話機能をOFFにしました。今はあなたの脳内に直接語りかけています。』
(………ってか、ロイ君と両思い!?)
『はい。ロイ・ダグラスのイマジナリーマジックバンドの言う通りであれば、ロイ・ダグラスはローズに思いを寄せています。2人が両思いの可能性は99%です』
ドキドキドキドキ。
ローズの胸の高鳴りと脳内パニックは午前の授業中収まりそうになかった。
「ローズさん。ちょっといいかな…」
昼休みになりローズはロイに声をかけられる。
「うん、いいよ」
そう言ってロイの側に行くと
「お?告白か?」
「美男美女カップル誕生〜!」
「ちょっとアンタ達!黙りなさい!お二人ともごゆっくり〜!」
などなど。
クラスからの冷やかしを背に教室を後にする。
朝の教室で、マジバ同士の暴露があったのだ。
当然クラス中に2人の思いはバレている。
冷やかしは仕方ないのかも知れないが、ちょっと辞めて欲しい…恥ずかしいので。
「あの…朝の、僕のマジバが変な事言ってごめんね。」
そうロイに謝られて、もしかして告白かも?と浮き足立っていたローズも少し冷静になる。
「ううん、最初に話しだしたのは私のマジバだし…設定変更してなかった私が悪いんだよ」
そこまで話して2人の間に沈黙が走る。
ピピッと電子音。
『ローズ・ウィステリア。ロイは貴方のことが好きで、お付き合いしたいと思っています。』
「うわー!マジバ!今、僕が言おうと思ってたのに!!」
設定変更!とマジバに叫ぶロイを、ローズは目を丸くして見つめ…フフフッと笑い出してしまった。
「ごめん…格好悪いよね…」
ショボン、と効果音が付きそうな涙目で言うロイに、笑いながら自然と目尻に溜まった涙を拭いながらローズは首を横に振る。
「そうじゃないの…格好悪いなんて、思ってないよ。ただ…」
「ちょっと待って!僕に言わせて」
そして、深呼吸をしてから言った。
「マジバの言う通りなんだ!僕、ローズさんの事が好きで…お付き合いしてください!」
ガバっと勢いよく90度に腰を曲げてお辞儀をしているロイに
「私も、ロイ君が好き!私とお付き合いしてください!」
とローズもお辞儀する。
2人同時に顔を上げて目が合った時、2人は同時に笑った。
2人が教室に戻ると、クラスメイト達がニヤニヤとしながら迎え入れた。
「いや、一時はどうなるかと思ったけど収まる所に収まってよかったな」
2人を見つめてサイラスがメグに話しかける。
「本当にね。でもあの天然ポンコツカップル…大丈夫かしら。またマジバに変な事吹き込まれてやらかしたりして」
メグは心配そうだ。
『メグはローズとロイより自分の心配をするべきです。データによると、私がいない1週間ボディメイクをサボったことにより胸囲が1%サイズダウンしています。』
「うるさ〜い!」
「メグ…まだ外部会話機能OFFにしてねーの…?」
呆れたように言うサイラスの背中にメグはチョップしながら外部会話機能をOFFにして
(誰の為にボディメイク頑張ってると思ってるのよ!ねぇマジバ!)
と心の中で呟いた。
「メグとサイラスも上手くいくといいね」
ローズがロイに小さな声で言う
「え!メグとサイラスも、そーいう感じなの!?」
ロイが驚くと、ローズは頷いた。
「2人とも隠してるけど、見てたらわかるよ」
「そうなんだ。僕全然気づかなかったよ。ローズさんよく見てるね」
次は私たちが恋のサポーターになれるかな?
ねぇ、マジバ。
そう心の中で問いかけると
『いい考えですね、ローズ。放課後にメグにサポートが必要か確認してみましょう』
とマジバが答えた。
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